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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
四章「曰く、色事は銘々稼ぎ」
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秋の終わり 2

 カランコロンと音を立てて開いた扉に目を向け、顔にそっと営業スマイルを張り付ける。

 いらっしゃいませーといつものように声を出して、入ってきた人物を見て張り付けた営業スマイルを崩した。


「こんにちはーグレンさん。今日は何をお求めです?」

「インクとペン先かな。あとはここに書いてある物を」

「はーい、少々お待ちくださいねー」


 渡された紙には何人かの筆跡でそれぞれ別の物が書いてあった。

 グレンさんがアンシークに行くって言ったから、ついでに頼まれたんだろうなぁ。

 中にはジャックさんの字もあった。今日は一緒じゃないのか~とか思っていたわけだけど、もしかして忙しいんだろうか。


 まぁ騎士演舞も終わってそろそろ冬になるわけだし、何かとやる事はありそうだ。

 雪が降る前に終わらせないといけない仕事もあるんだろう。私もいくつか心当たりがある。

 なんて考えながら紙に書かれていたものを全て集め終わった。あとはインクとペン先だっけ。


「……よし、お待たせしましたー。確認お願いしますね」

「うん。……大丈夫、会計お願い」


 確認が済んだので会計をして、商品をせっせと袋に詰めていく。

 その手元をグレンさんがジーッと眺めてるのはいつも通りちゃぁいつも通りなんだけど、なんかいつもと違う感じがするなぁ。

 この後に別の話でも振られるのかな。私のこういう勘は当たるんだ。兄さんもビックリの正答率なんだから。


「エスティアちゃん」

「はぁい」


 ほらね、と内心で呟きながら、手を止めてグレンさんを見上げる。

 うーん、顔がいい。私は幼少期からシュッツを見て慣れているからいいけど、これはうっかり勘違いする女の子が居るわけですわ。


「騎士演舞の前に色々迷惑かけちゃったし、お詫びも兼ねて食事でもどうかな?」

「……他に誘う予定の人は居ますか?」

「二人きりでは行ってくれないんだね……」

「やっぱり刺されるの怖いですからね」

「それは……うん。そうだね」


 というか私は基本的に男性と二人での食事は断ってるんだよね。

 シュッツとはあんまり外で会わないし、あいつ性別不詳だからね。フィンさんとはよく遊ぶしご飯も行くけどフィンさんも性別不詳。

 性別が分からないのはシュッツで慣れてるから、気にせず一緒に遊んでいる。


 あと私が二人で遊ぶ相手はアムくらいだしなぁ。

 あ、でも最近ライナちゃんって女の子とご飯行った。というか、たまたま会って買い物に付き合ったらお礼ってことでご飯奢ってくれた。

 前にお店に来てくれた子だなーって声かけただけだったんだけど、有難くご馳走になった。


「はい、お待たせしましたー」

「いえいえ。……今度、ジャックとフィンリー誘った後ならご飯行ってくれる?」

「いいですよー。あ、この後フィンさんに会う予定あります?」

「うん。仕事で一緒になるよ」

「じゃあちょっと、伝言頼んでもいいですか?やっぱ赤でしたって言っといて貰えると」

「赤?」

「はい。前に買った小物の色なんですけどね、こないだ話題に出た時に赤だったか青だったか忘れて結論出なかったんですよ」

「なるほどね、伝えとくよ」

「ありがとうございます」


 世間話をしつつ残りの商品も袋に詰めて、それをグレンさんに渡す。

 去って行くグレンさんを見送って、窓からもその姿が見えなくなったところで椅子に腰を下ろした。

 扉から入ってきた風が随分と冷たくなっていたから、そろそろ置いている小物も秋から冬の色に変えていくべきだろうか。


 暑さに弱くて寒さに強い身体をしているので、気温的なことで言えば私は冬が一番元気だ。

 けれど冬はちょっと別の問題が発生しがちになるので事前の準備が必要になる。

 ぼんやりと、壁に掛けたカレンダーを眺める。今月はもう終わる。来月は茶の月なので、今年もあともう二か月で終わりだ。


「……はぁ、新年は祝いで良いんだけど、その後がなぁ」


 一年の始まり、白の月は年の始まりという事でお祝いムードになる一方で、一年で最も日が短い日があるので私としてはちょっとばかし気が重い。

 まあ、祭りは好きなんだけどね。日永の祭りと対を成す月宵の祭りは光る飾りで会場が明るく照らされて、それはそれは綺麗になる。

 アムも来るだろうし、兄さんに何かお土産とか買って送ってもいいかもしれない。


 なんてちょっと気の早いことを考えていたら、扉の鐘がカランコロンと音を立てた。

 営業スマイルを顔に張り付けて扉の方を見ると、シュッツが荷物を抱えて扉を潜ってきている。

 お、早かったな。秋が終わる前にやっておきたい作業のために、シュッツに頼んでおいたものがもう来たみたいだ。


「お疲れシュッツ、ありがとー」

「いえいえ。とりあえず、去年と同じだけ用意したよ」

「おっけー、足りなそうならまた言うね」

「うん。……あ、そうだエスティ、これ」

「なに?私今何も調べもの頼んでなかったと思うけど」

「一応、念のためにね」

「ふーん……まぁ、貰っとくよ」

「そうして」


 頼んでいた荷物を受け取って奥に置きに行こうとしたら、シュッツが箱の上にメモを乗せてきた。

 わざわざ渡してくるってことは見といた方がいい事だろうから素直に受け取り、去って行く背中にもう一度お礼を言っておく。

 今日は暇そうだし、メモの確認しながらのんびり店番かな。

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