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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
四章「曰く、色事は銘々稼ぎ」
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騎士演舞 2

 賑やかな大通りの様子を眺めつつ、椅子に深く腰掛けてちまちまと書類の整理をする。

 今日は騎士演舞当日だ。既に祭りは始まっていて、贈り物を用意するくらい熱心な子達は皆会場に居るのでアンシークは久々に暇な営業日になっている。いいねぇ、平和で。

 隠す気もなく欠伸を零して、ボーっと大通りを眺めたりもしながら必要事項を書き込んだ紙を積み上げていると、扉が開いて鈴がカランコロンと音を立てた。


「いらっしゃいませー」

「お疲れエスティ」

「おー。お疲れシュッツ。騎士演舞行くの?」

「うん。あ、これ良かったら食べて」

「やったー」


 書類を隠そうかとも思ったけど、入ってきたのがシュッツだったのでそのまま対応することにした。

 シュッツはこの後騎士演舞を見に行くらしく、今日私が書類を整理しているのは知っているのでお菓子を差し入れに来てくれたみたいだ。

 わーい、フィナンシェだ。食べながら書類作業しよ。


「あ、そうだシュッツ。お前何でもかんでもフィンさんに話すなよー」

「あっ……ごめんなさい……」

「もー。なんでそんなすぐに話すのかな」

「フィンリーには話しといたほうが安全かなって……思って……」


 実際助けられたけど、でも話しすぎなんだよなぁ。

 ちょっと反省しといてください。はい。


「……じゃあ、僕はこれで」

「はいはい。いってらっしゃーい」

「何か気になる人とか居たら見て来るけど、誰かいる?」

「んー?……特にはないけど……あれかな、ルーカスさんかな。周りの反応が気になる」

「なるほど。うん、分かった」


 手を振って去って行くシュッツを見送って、さっそくフィナンシェの袋を開けた。

 わぁ、バターのいい香り。これ食べてもうちょっと作業したらお昼になるだろうから、それまではとりあえず頑張ろう。

 ……あ、そういえば、アムが来てるかどうか確認するの忘れてたな。


 まぁ見つければ教えてくれるだろうし、アムも来てたら騎士演舞が終わった頃に顔を出すだろうからどっちにしろ待ってればいいか。

 なんにしろ私は会場には行けないからねぇ。

 どうせお客は来ないから見たければ店を閉めて見に行ってもいいんだけど、そこまでの興味はないんだよね。


 それに、忙しくて完全には作れていない売り上げ表とかを作らないといけないから、毎年騎士演舞の日は眠気と戦いながら書類を整理する日になっているのだ。

 ちなみに一日では終わらないので、明日以降も暇を見つけてはちまちまと整理していくことになる。

 ……あー、やる気でないわぁ……でも月末までにはやらないと終わらせないといけないから、ダラダラしても居られないんだよなぁ。


「んあぁ~……終わる気がしねぇ~……」


 毎年毎年、よくもまぁここまで客が集中するよなぁ。

 この十日くらいでとんでもない売り上げが出てるので、ちょっと笑えてくるくらい。

 私そんなに書類整理得意じゃないから、一気に量が来るとまずやる気がなくなるのだ。


「やる気でなーい」

「頑張れー」

「うわぁ!?フィンさん!?」

「あっはは。やっほー」

「鐘鳴りました!?え、流石に気が付きますよ!?」

「ちょーっと開ける時だけ鳴らないようにね。進んでるー?」

「進んでないです。……はぁ、びっくりしたぁ」

「ごめんごめん」


 一人でぼやいていたはずなのに急に返事が返ってきて、思わず椅子の上で飛び上がってしまった。

 フィンさん、それ本当にやめてくださいビビるんで。

 なんでそんな、えぇ……急にいたずら心を出してくれるんだからこの人は本当にもう……


「騎士演舞の最中じゃないんですか」

「魔法部隊は今暇なんだよ。エスティは会場に来ないだろうから、会いに行こうと思ってね」

「会場に居てくださいよー。フィンさんにプレゼント渡したい子が探してるかもしれないですよ?」

「いやいや、自分はもうここ数年何も貰ってないから。ナイナイ」

「ほーん。あ、じゃあちょっと待ってくださいね」


 贈り物を貰ってないってのは、渡そうとしてもフィンさんが見つからないからだと思うんだよねぇ。

 何せ会場じゃなくてこんなところに居るんだから。さて、そんなフィンさんをちょっと待たせて、奥に引っ込む。

 どうせ来たんなら数年ぶりの贈り物でも貰っていってもらおう。


 物自体はすぐに決まったので、それを引っ張り出してきてラッピングする。

 ラッピング用紙とリボンは白と黒で。ドシンプルだけど、まあこれでいいだろう。フィンさんにはこんくらいシンプルな方が似合うからね。

 そんなわけで我ながら手際よく準備されたプレゼントをもって店に戻る。


「はい、どうぞ」

「えっくれるの?やったぜ。せっかくだからそれっぽい雰囲気で渡して」

「フィンリーさん……あの、これ、よかったら……」

「よく見るやつー!ありがとうエスティ。そういうの本当に上手だよね」

「家で兄さんと散々やったものでね」


 プレゼントとラッピング用紙とリボンの代金は給料天引きってことで、売り上げを書き込んでメモを作っておく。

 そのまましばらくフィンさんと話していたのだけれど、そろそろ戻らないといけない時間になったらしいので見送って、真面目に書類整理を始めた。

 お昼まで、お昼までは頑張ろう。

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