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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
四章「曰く、色事は銘々稼ぎ」
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謎の視線 3

 なんだか大事になってしまった視線だの気配だのは一旦置いておいて、私は今日も忙しいアンシークの業務を一人でせっせとこなしていた。

 もうほんとさ、そんなん考えてらんないくらい忙しいのよ。

 お昼ご飯食べてる余裕なんてないからね。ついでに言うと、いつも来てくれてるパン屋のスクレ君にはアンシークの中がお客さんでいっぱいだったら素通りしていいよと言ってあるのでまず昼食が来ないのだ。


 あの人混みの中にスクレ君を来させてしまうのはあまりにも心苦しいし、何より買っても食べる時間が無いからね。

 この時期のアンシークは本当に馬鹿みたいに忙しい。

 どのくらいかって?遠い目に営業スマイルを張り付けすぎてシュッツにもそれを向けてしまってビクゥッてされるくらい。


「いらっしゃいませ~。お会計ですね、は~い」


 ニッコリ。この時期は最早これが真顔まである営業スマイルで商品を受け取って会計をして、またのご来店をお待ちしてお会計をして……

 その合間に棚の隙間に減ってきた商品をねじ込んで補充して、そして会計に戻る。

 これを開店数分後から閉店まで続ける。……脳がおかしくなりそうだよ全く。


 この状態で私がどうにか理性と自己を保っていられるのは、これが「騎士に贈り物をする」というイベントだからである。

 とりあえず送っとけ的なミーハーなあれもあるけど、好きな相手に贈り物をする唯一の手段、として全力でプレゼントを選んでラッピングを選んで、これでいいかなぁ?大丈夫かなぁ?と不安げに会計している子を見てる瞬間が何よりも生を実感する。フッハハハハハ。


 ちなみにだが絶対大丈夫!これをもって話しかけるのだ!!と自信満々な子も大好きです。

 仲の良い子は結果も教えてくれるからお姉さんは大満足だよ。

 なんて考えつつ今日もせっせと会計を捌き、どうにか閉店時間まで大きなミスはなく仕事を終えた。


「あー……おわたぁー……」


 騎士演舞まであと何日だっけ。

 もうそんなに日数ないはずなので、この忙しさもそこまでだ。

 頑張れ私。もうちょっとで終わりだぞ。頑張れー。


「……ん?なんだろ」


 えっちらおっちら片付けをしていたら、何やら店の外に人影が通り過ぎた。

 それだけなら別にいいんだけど、なんか明らかに店の中を窺うような通り方だったんだよなぁ。

 なのに窓の外で止まったりしないで私に気付かれないように通り過ぎてるってのはちょっとね。店に興味がある人なら止まるし私が居てもあんまり気にしないからね。


 知り合いはこの時期皆裏から来るので、どこをとっても怪しさしかないなぁ。

 まあ、一回通り過ぎただけなら別に無視するんだけど……なんか、行ったり来たりしてるんだよなぁ。これ同じ人だよね?

 シュッツが来るまでまだ時間があるし、その間ずっと店の前をウロチョロされるのは気が散って仕方ない。


 もしかしたらなんか店に用事がある人かもしれないので、ちょっと声でもかけてみるか。

 疲れでテンションがバグった雑貨屋の店主に絡まれるようなことをしてるそっちが悪いよね!

 さあそんなわけで行ってみよう!普段はやられて怒っている勢いで扉を開けて、勢いよく人影の方を見る。


「こんばんは!アンシークに何か御用ですか!?」


 我ながら、馬鹿みたいに通るいい声だった。それはそれは腹の底から出てた。

 突然そんな声をかけられた相手は当然とても驚いたようで、何度か目をぱちくりさせた後に震える手で何かを取り出した。

 ……お嬢さん?なんで急に刃物なんて取り出したんです?


「あ、あんたばっかり、なんで、あんたみたいなのが……」

「主語が無いですよお嬢さん。なんのこっちゃ」

「うるさい!あんたさえ、あんたさえいなければ!」


 おっとこれは不味い予感。というか、マジで疲労で頭回ってないな私。

 刃物とか取り出された時点で得なことないから、さっさと店の中に引っ込むべきだった。

 ……でもなぁ、私なんかしたっけ?このお嬢さん見るの初めてだと思うんだけどなー。


 なんて、のんきに考えている間にお嬢さんは両手で刃物を握りしめてフラフラとこっちに歩いて来ている。

 うーん、逃げれるっちゃ逃げれるけど……一旦様子見かなぁ。

 あの速度じゃ何されても避けれるだろうし、とかぼんやり考えていたらお嬢さんが速度を上げた。


 わあ、急にはやーい。

 これじゃあ店の中に入れるかどうか微妙な速度だ。

 まぁ、はなから入るつもりもないんだけどね。お嬢さんの後ろに、全力で走ってきてるシュッツが見えているからね。


「ちょ、何この状況!?」

「なによあんた!放してよ!」

「いや刃物持った人を野放しにはしないでしょ」


 後ろからお嬢さんの手首をつかんで動きを止めたシュッツが、説明を求める目でこっちを見てきている。

 やっほーお疲れシュッツ。状況は私も正直よく分かってないんだわ。

 とりあえず騎士団とか呼んどいたほうがいいかなぁ?


「エスティ、この状況なに?」

「あ。フィンさーん。私もよく分かんないです。なんか、あのお嬢さん私に恨みがある?みたい?」

「ふわふわだねぇ。さては疲れてるな?」

「はい」

「んじゃ、とりあえずお話伺いましょうかね。ご同行いただきますよ」


 見回りに来ていたのか、シュッツが呼んだのか。

 ちょうどいいところにフィンさんが現れてお嬢さんを連行していった。

 ……誰も状況が理解出来てないまま事が片付いたな……とりあえず、中入ってご飯食べる?

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