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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
四章「曰く、色事は銘々稼ぎ」
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忙しい時期 3

 カウンターの前にはちょっとした列が出来ており、せっせと会計をこなしているのに全然列は短くならない。

 泣き言を言いたいけど、他に店員が居るならともかく私以外は皆お客さんなんだよね。

 流石に客に聞かせていいもんじゃないしなぁと我慢してとても頑張っているところです。私とても頑張ってる。マージでもう一人くらい臨時従業員欲しい。


「ありがとうございました~」


 脳内でやいのやいの言いつつ、顔には出さずに営業スマイルで今日何回言ったかも分からない台詞を声に出す。

 アムとか来てくれてたら手伝ってもらえるんだけど、騎士演舞は絶対来る祭りじゃないからなぁ。

 このグリヴィア王国で使われている言葉はリウメル語というのだけれど、これが通じる範囲は大体同じような季節の巡りをするから大陸内はどこも秋で収穫祭してるのよね。


 なのでアムはこの時期あらゆる国の収穫祭に紛れ込んでいるのだ。

 タイミングが合えば騎士演舞を見に来るけれど、合わなければ別の国で収穫祭を楽しんでる。

 ちなみにだけど兄さんは季節感とか基本ないので、私が今はこの時期だよーって手紙に書いたのを通して季節を感じているらしい。もうちょっと外出て。


「お会計が五百六十コルメになります」


 兄さんには多分近々会うことあるだろうから、その時に詳しく話を聞きたいなぁ。

 会うの数年ぶりだし多分見た目からしてすっごい変わってるんだろうな。こんだけ会ってないわけだからワンチャン見ても分からない可能性すらある。

 まあ、親戚で同年代はほとんど居ないから最悪消去法で認識出来るか。


 面影くらいは残しててほしいなぁ。……というか、ちょっと待て。私も兄さんから認識されない可能性があるのか……!?

 嫌だぁ……私の事をでっろでろに甘やかして私の自己肯定感の強さを作り上げた兄さんに認識されない可能性とか考えただけで悲しい~……

 兄さんならきっと気付いてくれるよね。最後に会ったのは家を出た時で、私が十四の時だから……何年前だ?


「ありがとうございました~」


 ……あれ、もう八年も経ってるの!?うっそぉ。

 兄さんとは四歳差だから十八で家出てて、今は二十六?はわ……うそだ……

 時間の流れ早すぎじゃないちょっと。やば……やば……これは本格的に会っても分からない疑惑が出て来てしまったぞ……


 てか兄さん、二十六になったけど恋人とか居ないのか。居たら居たで複雑だけど、居ないのはなんかこうちょっと、ね。

 出会いが無いんだよって手紙でよく言ってるけど、多分恋人欲しいわけでもないんだろうな。

 私も別にいいやって思考だし。そのあたりはよく似ている。もう八年会ってないけど。

 ……はわわ……八年……


「お会計が千二百六十三コルメになります」


 内心は全く関係ないことで荒れまくっているけれど、手と口はせっせとお会計を進行している。

 凄いなぁ私。こんなにも綺麗な行動と思考の不一致中々見れないよ。

 とはいえ、アンシーク店主は代々皆出来てる節があるっぽいので多分この店継ぐ人間の必須スキルなんだろうな。


 何故って、基本的に次に店を継ぐ予定の子が居ない限り一人で切り盛りする店だからだよ!

 ワンオペで全てを進めるのがアンシークの基本です。

 休みもあるし個人営業だから結構自由に出来るので、兄さんが何かの節に言っていた「ブラック企業」なるものではない。


 ちなみに歴代アンシーク店主に血の繋がりはない。

 全員が一人で店まわして次代育てて引退している時点でお察しだが、全員独り身である。

 先代であるおじいが私をここに置いてくれたのは家からの手紙とか色々もあるんだろうけど、何よりも次代育てないと店がここで終わっちゃうって焦りからだったらしいしね。


 最終的には本当の孫娘のように可愛がってくれたので、最初の理由なんざ何でもいいのだ。

 おじい大好き。兄さんも大好き。親の顔は正直はっきりと覚えてないので、一旦思考の外に放り出しておく。


「ありがとうございました~」


 ここで一旦列が切れたので、店内を見渡して無くなっていそうなものを裏に取りに行ってササッと棚に並べる。

 売れ行きの良いものが分かりやすくて助かる~。

 ちなみにだけどアンシークには盗難防止用の魔法がかかっているのでそのあたりは一人でも安心だ。


 盗難防止魔法に物理防御魔法によく分からん魔法陣に設置式の魔道具。あらゆるものがアンシークにはあって、この店と当代の店主を守っている。

 お世話にならないのが一番だけど、どうしたって数回はお世話になる防衛設備達である。

 騎士団の人は詳細は知らないまでもどんな魔法がかかっているのかは知っているらしい。


 なんで知ってんだろうね。三代目あたりが教えたのかな?

 まあ、誰かしらが教えたんだろうなぁ。先代ではないはず。おじいは騎士団とめちゃめちゃ仲いいって感じじゃなかったからね。

 友好な関係って感じではあったけど、それは四代目から引き継いだかららしいし。


「いらっしゃいませ~」


 そのうち騎士団の人に聞いてみよ~なんて現実逃避をしながら新たに入ってきたお客さんに営業スマイルを向け、カウンターに戻ってお会計作業を再開した。

 さあ、時計を確認すると心が折れそうになるから、確認せずに仕事に集中しようか!

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