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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
四章「曰く、色事は銘々稼ぎ」
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小さな事件

 収穫祭が終わり、季節はすっかり秋になった。

 ちなみにグリヴィアの収穫祭は「こんなに取れたよ!感謝!」って祭りではなく「これから収穫だよ!頑張ろ!」ってな祭りである。

 作物の収穫が大体終わる秋の末には別の祭りがあるよ。グリヴィア王国は平和で祭り好きな国なのだ。


 もうほんと、大きな祭りから小さな祭りまで全部予定に書きこんだら隙間ほとんどなくなるからね。私も便乗して色々楽しんでるから別にいいけどさ。

 ちなみに秋はその時に収穫を迎える作物ごとに「なんちゃら収穫祭」をやってる農家さんとか料理屋さんとかがいっぱいある。

 ビヤンネトルも今は果実祭と称して色んな果実入りのパン売ってるしね。


「ふんふふんふふーん。リンゴのバッグは可愛いねー……っと」


 アンシークもしばらくは果実を模した小物やなんかをいっぱい並べようと思っているので、収穫祭の時に持っていたリンゴバッグを店に並べたりなんかしている。

 これね、可愛すぎて仕入れと同時に一個自分用にしたんだよね。

 ちなみにリンゴ以外には梨とカボチャがある。全部可愛い。


 パッチワークの小物も結構あるから一気に秋冬の気配がしてくるね。他にも秋色の物をいっぱい出して夏の気配を追い出そうねぇ。

 なんて、鼻歌交じりにルンルンでお客のいない店内を弄って回る。

 今日はやたら暇なんだよねぇ。多分別の通りでちょっとした祭りをしているからそっちに人が流れているんだろう。


「……んぁ?なーんか、穏やかじゃない気配がすんねぇ」


 別に暇でもいいけどねぇー。なんてのんびり考えていたら、建物の横に知らない人の気配がした。

 三人くらいかな?なんか荒れてる感じの気配なので、一応確認しておこうかな。

 横の扉とは逆側だけど、そっちには小窓があるからね。高い位置にあるのでこっちから覗かないと見えないのも都合がいいねぇ。


 念のため魔道具を一個用意して、箱を積んで小窓を覗く。

 何やら言い争っているようで私が窓を開けた音には気付いていないみたいだ。

 店の横でわちゃわちゃすんのやめてよ。なんて思いつつ覗いた先では、男二人が一人のお姉さんを囲んでいた。わお、思ったより穏やかじゃない。


「おねーさん」

「えっ、誰!?」

「なんだこのガキ」

「これあげます。しっかり握って」


 手に持っていた魔道具を起動させて小窓から落とし、お姉さんがしっかり掴んだことを確認する。

 直後に男の汚い悲鳴が響いたのでうまく行ったことを察知し、急いで小窓を閉めて鍵をかけ、店の方に回って店の扉にも鍵をかけた。

 カーテンも閉めとこ。わあ、扉叩かれてる。怖い怖い。


 全く本当に怖いなぁ。……反撃しないだけ有難く思えよくそが。私をガキ呼びしたのを全力で後悔させてやってもいいんだぞこら。

 とりあえずお姉さんの様子確認にいこうかな、と裏に回ろうとしたら、扉の前が一瞬騒がしくなってから静かになった。

 そっと響いたノックの音は先ほどのクソじじ……おじさ……男たちとは別の人が居ることを如実に表している。


「……あ、お疲れ様でーす」

「何があったんだ?」

「私も今首突っ込んだとこでして……おねーさーん、騎士団の人が来てくれましたよー」


 見知った顔に安堵の息を吐き、店の横に回って座り込んでいたお姉さんに手を差し出す。

 掴んでくれたのでそのまま手を引いて店の中に入り、椅子を引っ張ってきてお姉さんには座っていてもらうことにした。

 どうしようかな、お茶でも淹れて来た方が落ち着けるかな?


「さて……事情を窺っても?」


 考えている間に話を振られてしまったので、大人しく応じることにした。

 まあ、私が居た方がお姉さん落ち着くみたいだしこのまま横に陣取ってればいいか。

 話がひと段落してまだ時間がかかるならお茶を淹れてくることにしよう。


「私はなーんか店の横が騒がしいなぁって思って小窓から外を覗いたらお姉さんがくそじ……男二人に絡まれてたので、魔道具投げてカギ閉めて籠城してました。騎士団到着早かったですね。びっくり」

「路地で女性が絡まれている、と通報が来てな。その確認に来たらアンシークの扉を割ろうとしている不届き者がいたので拘束したんだ」


 普通に言っているけれど、この人上位騎士なんだよなぁ。権力って強い。

 先代がまだまだ現役だったころから通ってくれている常連さんなので、アンシークの扉を割ろうとしているって時点で捕らえてくれたんだろう。

 運が良かった。これで扉割られてたら臨時休業で直してもらわないといけなくなってた。そしたら扉のガラスをステンドグラスに差し替えてるところだった。……そのうちやろうかな。


「あ、あの……」

「どうしましたかお姉さん」

「これ、ありがとうございました。防御の魔道具、よね?」

「ええ。ちゃんと機能してよかったです。あ、それはまだ持っててください。後日落ち着いたら返しに来てもらえればいいので」


 手が微かに震えているお姉さんから魔道具を受け取る事はせず、手の中に収めておいてもらう。

 そんなに強い道具じゃないけど、ないよりは安心できるだろうからね。

 とりあえず落ち着いてきたようなのでお姉さんからも事の詳細を聞き、別の騎士さんが来てくれてお姉さんを家まで送ってくれることになった。


 アンシークは普通にこのまま開けて営業しますよ。

 あのくそじじい共は即日開放はされないだろうし、あの程度で恐怖に震えるほど乙女じゃないんでね。

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