油断の行く末 3
噛まれた足の手当てをして貰いながら、いかにも仕事中です!って感じのフィンさんとイヴィさんをぼんやり眺める。
二人とは仕事以外の時に会うことが多いから、こうして真面目に騎士団魔法部隊している姿を見るのはちょっと新鮮だ。
イヴィさん、ちゃんと偉い人なんだなぁ。普段の飲んだくれた姿からは想像も出来ない。
なんて考えていたらイヴィさんがこっちを向いた。
もしや私が失礼な事を考えているのがバレたんだろうか。いかに魔法部隊の隊長と言っても、心を読むなんてことは出来ないと思うんだ。というかそうじゃないと困るんだ。
「さて、エスティ。連れ去られた時の詳しいことを教えてくれるか?」
「あ、はーい。私が歩いてた道は、シュッツから聞いてるんですかね?」
「いや。エスティアがモンスターに連れ去られた、とだけ。緊急だったからな」
いつの間にか戻ってきていたジャックさんが後ろから教えてくれた。
なるほど、確かに来るの早かったしなぁ。緊急で近くにいた騎士団に知らせてくれたんだとしたら、全員知り合いだったのはかなり低い確率だったんじゃなかろうか。
まぁ、あの辺りの警備だった、とかそういう事なのかな。フィンさん今ジャックさんたちと仕事してるって言ってたし、一人いたなら皆いるのかもしれない。
「えーっとですね。歩いてたのは、アンシークから商店街の方に向かう道です。ダンジョンの入口からは何本か離れた場所で、街灯壊れてました」
「地図、あるか?」
「どうぞ」
「ありがとう。ここがダンジョンの入口、ここがアンシークだ。詳しい位置は分かるか?」
「……あ、ここです、この道。んで、多分ここら辺で出くわしました」
地図を差し出されて、私の脳内マップと照らし合わせて場所を報告する。
あれかな、モンスターの活動範囲とか絞り込む感じなのかな。
本当、次が無いようにお願いします……私だからまだ最悪大丈夫だったけど、普通の町娘はあれ発狂してもおかしくないで。
「何か狙われるような行動等に思い当たる節は?」
「まーったく?むしろ教えてほしいです。どうにか対策するんで」
「無理だろうなぁ。エスティの魔力が面白可笑しいせいだろ、多分」
「酔っ払いの戯言だと思ってたのにシラフでも言われた……!?」
というか聞いて来たくせに検討付いてたんですか。なんですか、仕事だから聞いただけですか。
……魔力の見え方、次に兄さんに会ったら詳しく見てもらおうかな。そんなに変な風になってるのかな。
「一旦失礼。一度、立てるかどうか試してくれるかな?」
「……はぁい」
「もしかして立てないくらい痛い?」
「いえ、あの、そうじゃないんですけど……」
会話を一度遮って、手当てをしてくれていた騎士団の人から声をかけられる。
返事をちょっと躊躇ったら心配されてしまったけれど、本当にそんなに痛いわけでもないのだ。
多分まだ体重掛けたら痛いけど、今はそんなじゃないし。
とはいえ、ちょっとだけ、くだらない事なんだけど、躊躇うことはあると言えばあるので……なんて内心で言い訳を連ねていたらイヴィさんが呆れたような声を出す。
「おまえが身長盛ってるのを知ったからってなんか言うやつらはいねぇよ」
「なんっで言うんですか!!」
「……ふふっ」
「笑うなシュッツゥ!」
「わー!ごめんエスティー!」
そう。私が躊躇ったクソくだらない理由。それは、私のブーツがインヒールだという事である。
詳しく言うと六センチ。知ってるのはこの中ではイヴィさんとシュッツくらいだ。
そんなわけでシュッツの笑い声に過剰に反応して振り返った結果、騎士団三人がちょっと驚いた顔をしているのが見えて勢いよく顔を戻して手で覆った。
「えーん、今日まで隠し通してきたのにー!」
「エスティ、身長とか気にするんだね」
「だってただでさえ子供に見られるんですもん。私アンシークの店主なのにー」
六センチも盛れば、女性陣の中で小さく見られることはない。
そして身長を盛っていることは出来れば隠しておきたい。
それ故のインヒール。それ故の愛用デザインのブーツであったというのに。
「嘆く理由が一番ガキくせぇわ」
「うるさいですよ酒乱が!」
「当たんなって。反対も脱がせて立たせていいぞー」
「わーん!鬼ぃ!」
騒ぎ立てつつ、手当てしてくれた医務の人には逆らえないので靴を脱がされて手を引かれてそっと立たされる。
やっぱり体重をかけると痛いので半分片足立ちの状態で後ろを振り返ると、にこやかなフィンさんとグレンさん、そして何かを堪えるような顔をしているジャックさんが居た。
表情は違えど、皆おんなじことを考えているんだろう。
すなわち、思ったより小さいな。である。
「やっぱりそういう顔するじゃないですか!」
「足、やっぱり痛いかな?」
「あ、はい。体重はかけられないです」
「分かった、一旦座って待っててね」
「はーい」
素直に返事をしてストンと座り、とりあえず手で顔を覆っておく。
しばらく全力で拗ねてやる。このポーズはその象徴である。
付き合いの長い、というか幼少期の私を知っているシュッツがちょっと焦り始めているけれど、しばらくは突き通してやるからな!




