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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
三章「曰く、禍福は糾える縄の如し」
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回り道の仕入れ道 3

 全ての仕入れ先を回り終わって、荷物をアンシークの中に入れつつ軽くため息を吐く。

 いつもと違う道を通ったり遠回りしたりでちょっと疲れてしまった。

 けどまあ、この後ジャンさんの方の終了手続きもしないといけない。そこまでが今日のお仕事だからね。


「よーし、忘れ物無し」

「隙間も何も落ちてねえな」

「じゃあ行きましょう!今日は普通に疲れた!」

「そうだなぁ。ちゃんと飯食えよエスティ」

「食べますよ。もうなんなら食べて帰りますよ」


 アンシークの前での最終確認を終えて、のんびりと歩き出す。

 この道はとりあえず規制とかされてないから楽でいいね。

 今日国の中をそれなりに歩き回って分かったことだけれど、意外と規制されているところが多い。


 話しながら歩いてさくっとジャンさんの方の手続きを終わらせて、どこでご飯食べようかなーとのんびり考える。

 あの店今日やってるかなー。ま、やってなかったら別の所に行けばいいかな。

 適当に目的地を決めたてとりあえず足を向けた。


「お、やってた。こーんばーんはー」

「あらあらエスティ!いらっしゃい」

「席空いてます?」

「空いてるわよ。奥へどうぞ?」


 示された方向へ進み、最奥のカウンター席に腰を下ろす。

 すぐにお水を出してくれたここの店主とはそれなりに長い付き合いだ。

 メニューもほとんど覚えてるんだよね、実は。ま、期間限定とか本日のおすすめとかあるから見はするんだけども。


「んー……とりあえず夏野菜の冷製スープと鶏団子ください」

「はーい。新作のゼリーもあるからよければデザートまで食べて行って頂戴ね」

「お、じゃあそれは最後のお楽しみってことで」


 注文を聞いて去って行く後姿を見送って、とりあえず水をもう一口。

 他の客の喧騒でも聞きながら待っていようかと思ったら、隣の椅子がズレた音がした。

 何となく目を向けると、そこには別の知り合いの姿がある。……いつ来たのかな?少なくとも入った時には居なかったと思うんだけど。


「エ~スティ~」

「ご機嫌ですねぇ。どんくらい飲んだんです?」

「まだ一瓶も空いてねぇよぉ」

「絶対嘘だ。忘れてるだけでその瓶多分三本目くらいですよ」

「えぇ~?」


 酔っ払いめ。自分が飲んだ酒の量くらいちゃんと把握してくださいな。

 あなた一本じゃそこまで酔わないでしょう酒強いんだから、と絡んでくる酔っ払いを押し返していたら夏野菜の冷製スープが運ばれてきた。


「あぁ、もう!エスティに絡まないの!」

「だぁってリリ構ってくんねぇじゃんか~」

「当たり前でしょう仕事中なんだから!」


 怒られてーら。知り合いだし女の人だし、絡まれて困っていたわけではないけれど庇う必要性も感じないのでとりあえずスープを一口。

 やっぱり期間限定系は美味しいねぇ。旬の野菜ってそれだけで美味しいからね。


「な~。エスティ~」

「え、なんです?欠片も聞いてなかったんですけど」

「ここ座ってていいだろ?」

「いいですよー」

「ごめんなさいね、酔っ払いの相手をさせて」

「いえいえ。話し相手になってもらいますよ」


 どうせ一人だったし、と独り言の音量で呟いて、ご機嫌な絡み酒お姉さんにもう一度目を向ける。

 瓶から直接酒を呷っているその姿はまさしく酔っ払い。

 私は基本的にここに来ている時に会うから印象はこの「絡み酒の飲んだくれ」で固まっているのだけれど、実は結構凄い人だったりする。


「うはっはっは!エスティ、あいからわず魔力ぐにゃんぐにゃんだなぁ~」

「酔っぱらってそう見えるだけですよ。フィンさんには言われたことないですもん」

「フィンリー?フィンリーは見えても言わんよぉ」

「それはそうかもしれない」


 というか人の魔力眺めて大笑いするのは普通に腹立つな。慣れたけど。

 私の魔力はそんな変な風には見えないはずなので、本当にこの人が酔っ払っているだけなのだ。

 毎回言われるし毎回同じような返事をするけれど、酔っ払い故覚えていない。ただそれだけ。


「はい、鶏団子と、こっちはおまけ」

「いいんですか?やったー」


 おまけでサラダが付いてきた。これはあれかな、横に居る酔っ払いの迷惑料なのかな。

 気を遣わせちゃった気もするけど、まあ貰えるものは貰っておこう。

 これ好きなんだよね。よく食べているのを覚えていておまけしてくれたのかもしれない。


「やっぱリリさんは素敵な人ですねー」

「やらんぞ」

「別に取りませんよ」


 この店の店主であるリリさんことリリアーナさんと、この飲んだくれ。名をエイヴィリーというこの人は、かなり昔から一緒に居る非常に見てて美味しい関係性をしている。

 ちなみにエイヴィリー、私は略してイヴィさんと呼んでいるのだけれど、この人実はフィンさんの上司である。

 騎士団魔法部隊隊長。そんな立派な肩書の人なのだけれど、酔っ払いの印象しかない残念な美人だ。


「……エッスティ~」

「なんですか~」

「しばらく気を付けてな。魔力、まだ乱れそうなんだわ」

「あら、そうなんです?まだ地面落ちるんですか?」

「んー……もっと違う感じなんだよなぁ……ま、気を付けてりゃぁ問題ないだろ」


 だらり、と机に溶け始めた酔っ払いを横目に鶏団子を食べきり、追加で何か注文しようとメニューを眺める。

 わざわざ忠告してもらったし、ちゃんと気を付けておいた方がいいんだろうな。

 なにに気を付けるのかは……ちょっと分かんないけど。なんだろう、魔力の動きとかかな?

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