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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
三章「曰く、禍福は糾える縄の如し」
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回り道の仕入れ道 2

 ラング爺さんの工房を後にして、次に向かうのはタスヴェルというガラス細工のお店。

 うちにはグラスやお皿や、あとはガラスペンなんかも卸している。

 ベテランから新人まで幅広く、多くの職人さんが居るので一回の仕入れ個数もそれなりに多い。


 アンシークに置かれているガラス系の物で常に並んでいるのは、基本的にタスヴェルから仕入れている物だ。

 アルトの作る物は人気はものすごいけど数が少ないし月に一度しか持ってこないし、常に並べては置けないので商品棚のガラスの位置は基本ここの物で埋まっている。

 他の店とも取引があったり、時々貴族などからの注文があったりでアンシークに卸す分が少ない、なんてこともあるけど、そこはまあ仕方ないので特に文句もない。


 タスヴェルとアンシークの取引はこっちの店主が三代目の時から行われており、今の親方さんは私が店主になった時に子供扱いしたり格下扱いしたりしないでちゃんと取引してくれた人なので、もう多少の増減だったりは気にならないレベルでやらせてもらっている。

 職人さんも好きだし商品も好きなら贔屓もするってもんだよなぁ。


「こーんにっちはー」

「お、エスティ。いらっしゃい」

「あら、なんか忙しげですね」

「ちょっとな。まあ、アンシークとの取引分はしっかり用意してあるから安心していいぞ」

「ここ数日で一気に忙しく……大口取引でも入りました?くそデカステンドグラス?」

「お前ほんと勘がいいな……大きかないが、量がな」

「なるほどなるほど」


 とりあえず、忙しくはあるみたいだ。

 前に教会か何かのステンドグラスを作っていた時もものすごく忙しそうだった。

 見てるの好きだから、私もいつか頼みたいなぁと思ってるんだけど中々機会が無いんだよね。

 店の窓、一か所くらいステンドグラスにしてもいいと思うんだよなぁ。


「そういや、ダンジョンの入り口が出ただろ」

「出ましたねぇ。あれのせいで仕入れルート変更ですよ」

「その程度で済んでんならいいが……お前さんの調子悪くなってそうだと若いのが何人か心配してたぞ」

「実際酔いかけてたから何にも言えない……とりあえず無事ですよ」


 知り合いたちにこぞって心配されるんだよなぁ。

 皆私の体調……というか、体質?のこと把握しすぎじゃない?

 有難いことですけどね。でも私自分からそういう話した記憶全然ないんだよ。なのにこんなに把握されているのは、ちょっとした恐怖くらいのものなんだよ。


「……よし。じゃあ、とりあえず今日はこれで」

「おう。気を付けて行けよ」

「はーい。では失礼しましたー」


 話しながら取引を終わらせて、次の場所に向かう。

 向かう先はちょっと遠いのでジャンさんとのお喋りタイムだ。

 ……その前にご飯かなぁ。でもそれにはちょっと早いんだよね。ま、移動して道中でなんか食べればいいか。


「ジャンさん何食べたいです?」

「あー……魚だなぁ」

「お、じゃあ向こうの出店通り行きましょうよ」

「この押し車持ってか?」

「いけますいけます」


 大通りの傍にある出店通りと呼ばれる場所は、期間限定で許可を取っている出店が道の両側に並ぶ通りである。

 祭事の時はいつも以上に盛り上がるし、収穫祭前のこの時期は店も増えている頃だろう。

 ちなみに冬はほとんど出店が並ばない。雪降るからね、しかたないね。


 食べ物を売っている店も多いので、店には行って食事をって感じではない仕入れ中とかには嬉しい場所だ。普段はあんまり来ないけど。

 他の場所でも出店は出ているし、何より荷物がでっかいから邪魔にならないようにしてるとどうしても寄っていけないんだよね。

 まあ、今日は行きたいので行きますけど。


 なんだかんだ言いつつジャンさんもついて来ているし、端っこ歩いてれば意外と邪魔にもならないのではないだろうか。

 そう思っていたのだが、出店通りに向かう道が幾つか通行止めになっていた。

 これじゃあ別を探した方が早そうだなぁ……


「ダンジョンの入口からはそれなりに離れてるよな?」

「離れてはいるけど……魔力の何かしらで繋がってたんですかねぇ?」

「そもそもなんで通行止めなんだ」

「さあ。今度誰かに聞いてみます」


 シュッツが知ってるかなぁ。知らないようならフィンさんとかに聞くんだけど……

 なんて噂をしていたら空から声がして、フィンさんが現れた。

 騎士団の魔法部隊には移動用の魔導具が支給されていて、フィンさんの使っている物は小さな空飛ぶ円盤なのだ。片足しか乗らない大きさなのにものすごい安定感で飛んでいるのは流石だなぁ。


「あれぇ、エスティ。何してんの」

「仕入れですよ。フィンさんこそ何してるんです?」

「見回り。まだまだ魔力が不安定だからねぇ」


 ストンッと身軽に地面に降りてきたフィンさんがローブの内側に移動用円盤をしまい込むのを眺めつつ、目の前の通行止めな道を指さす。

 それだけで察してくれたのか、フィンさんはため息を吐いて髪を弄っている。


「急に強い魔力が地面の下を通ったせいで、一部の地面が陥没してさ。被害が出る前に魔力の通りがいい所だけ探して規制してんの。地盤確認終わったら解けるから……順番に回って一週間とかかな」

「なるほど。お疲れ様です」

「ま、これもお仕事だからね。下っ端は忙しいぜ」


 下っ端ではないですよね、といういつもの台詞も言いつつちょっとだけおしゃべりして、フィンさんが覚えている限りで規制された道を教えて貰った。

 それを地図に書き込んでお互い仕事が残っているので今日はさよならだ。

 再び取り出した円盤で飛んでいくフィンさんを見送ってから、とりあえずご飯を食べようと移動を再開するのだった。

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