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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
三章「曰く、禍福は糾える縄の如し」
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回り道の仕入れ道

「おはようございまーす」

「おはようございます、エスティアさん」


 いつものカウンターのお兄さんに近付き、世間話に興じながら必要な手続きを終わらせる。

 やっている間にジャンさんの準備は終わっているので後は合流して外に出て、端に避けてから今日向かう場所を通る道を確認だ。

 歩きながらでもいいんだけどね、今回は先にやってしまおう。


「そんなわけでジャンさん」

「おう、どうしたエスティ」

「危険には近寄らないを合言葉に、迂回ルートを使ってレッツゴーです」

「ダンジョンの入り口なぁ……絶妙な位置に出たんだよなぁ」


 今日行きたい場所がまた絶妙で、自分で考えてみたけど「危険を避けよう」という思考より「めんどくせぇわ」という思考の比率が大きくなってしまったので諦めたのだ。

 ジャンさんならいい感じに迂回出来ないかなぁと思ったのだけれど、ジャンさんも面倒になったのか影響ない所から回るかーと言って手押し車を動かし始めた。


「んじゃ、とりあえずラング爺さんの所ですかね」

「了解」


 地図とメモを持ってのんびりと歩き出す。

 ラング爺さんは収穫祭に向けてなんちゃら~とかもそんなに無いから仕入れの頻度は変わらない。

 屋台出店とかする気が全然ないんだよねぇラング爺さん。いつも通りが一番、ってよく言ってる。


 私としては文句も無いし、無理は良くないですよねぇ~とのんびり呟いて出してもらったお茶を啜るのがいつもの流れだ。

 そして、そんな私たちを見たアルノートさんがせっかくの祭りなのに……とぼやく。

 収穫祭に向けて果実などを模したランプを作る職人さんも居たりするから、もしかしたらアルノートさんが独り立ちしたら収穫祭に出店出したりするかもなぁ。


「ジャンさんは収穫祭、何かするんですか?」

「俺はなんも……する気はなかったんだがなぁ。家を飾るぞ街を飾るぞ、って嫁さんが張り切ってるからそれを手伝うことになるだろうなぁ」

「仲がよろしくて何よりですね。娘さんお元気です?」

「おう。元気だが、反抗期でな。俺とは口もききやしねぇ」

「健やかに育っていらっしゃる」


 全くあいつは、と言いつつジャンさんはどこか嬉しそうだ。

 本当に家族仲がよろしくて何よりですねぇ~。話聞いてて楽しいから、移動中の雑談として奥さんや娘さんの話はよく聞いている。

 でもそっかぁ、反抗期かぁ。私は特になかったからなぁ。というか、反抗するほど親と一緒に居なかったからなぁ。


「お、エスティ。いらっしゃーい」

「あらアルノートさん。どうしたんですか?締め出されました?」

「いや違うよ。掃除してるだけだよ」


 ラング爺さんの工房が見えてきたところで、珍しく外に居たアルノートさんが駆け寄ってくる。

 なんだ、大失敗して怒られたわけじゃないんですね。ちょっと前まで結構あったのになぁ。

 ちなみに、何をどう間違ってもラング爺さんは外に締めだしたりはしない。アルノートさんが頭を冷やす(物理)のために外で一人反省会してることは結構あった。


「師匠、エスティが来ましたよー」

「おお、来たか。元気そうじゃの、エスティ」

「まあ真夏に比べれば涼しくなりましたからね」


 言いながら上がらせてもらい、ラング爺さんが手元に引き寄せている今回の品物を確認する。

 ほー……またとんでもなく綺麗なランプだこと……

 それで、お爺ちゃん?金額の計算はまたやってないのね?全くもう。


 アルノートさん、材料の一覧ください。

 ……うわぁ……えぐぅ……お爺ちゃんったらまたこんな凄いもの使って……せめて使う物の価値を認識して使ったことを覚えていてほしいものだ。

 仕入れるだけ仕入れてアンシークの「貴重すぎて売れない物」一覧に突っ込むべきかもしれない。


「……んー……よし、とりあえずこんなんでしょう。アルノートさんの方は何個ですか?」

「今回は三個。よろしくお願いします」

「はーい、失礼します」


 ラング爺さんの方の検品と値段決めを終わらせて、アルノートさんの方の品物を確認する。

 わあ綺麗。今回は三つとも手持ちランプですか。いいですねぇ。

 よく見たら綺麗に左右対称に作られているみたいだし、細かい装飾が多いのにそれが出来るのは流石ラング爺さんのお弟子さんって感じだ。


 こっちの材料は……安心感があるけど、マヒしてるだけでこれも結構値が張るものですからね?

 というかそもそもで言ったらなんで私が値段決めてるんだ。買取側に任せるだなんて、買い叩かれても知りませんよ?全くもう。

 ラング爺さんはもうどうにもならないとしてアルノートさんは独立したり工房継いだりするならちゃんと自分で決めるようにしてくださいね。


「エスティが決めた方が確実じゃない?」

「じゃあ今度から事前に値段の予測しといてください。私が来た時に答え合わせしましょう」

「……どうしても?」

「どうしてもです」


 技術継承も大事だけれど、それをするための資金繰りがどうにもならないじゃあ話にならないでしょうが。

 なんならもっと早くからやっておくべきだったかもしれない。

 そんなわけで私はこの件引き下がらないので、アルノートさんは覚悟しておいてくださいね!

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