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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
二章「曰く、林中の蛇影」
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夏の盛り 2

 お客が多くて忙しい日は、会計と包装だけでどんどん時間が流れていく。

 普段は割と暇なので棚の整理とか、売り上げ計算とか、そういう事をのんびりやっているのだけれどたまーにこうして不思議なくらい忙しい日がある。

 頼むから分散して毎日同じくらい程よく忙しくあってほしい、なんて叶いもしないことを願ったりしつつ営業スマイルを張り付けて会計を終える。


「店長さーん」

「はーい。どうしましたー?」


 会計の列が途切れたところで、お店にいた常連の女の子が声をかけてきた。

 さては見計らってたな。ごめんね今日はやけに忙しくてね。

 普段ならあれこれ話しながら一緒に物を選んだりするので、今日も手が空くまで待っていてくれたみたいだ。可愛い子め。飴ちゃんをあげよう。


「これって色違いあるかな?」

「あー……多分それだけだと思いますよ」

「そっかぁ。……実はね、収穫祭の前に友達の誕生日が来るんだ」

「なるほど。何色がいいんです?」

「私的には、青かなぁって思うんだ。普段は赤系をよく身に付けてる子なんだけど」


 この子がこうして相談してくる「友達」は一人しかない。

 なんていうか、毎度ご馳走様です、って気分である。忙しい日の癒しの時間だ。ふへへ。

 本当に好きだねぇその子の事。この前も何か理由着けて小物をプレゼント用に買って行っていた気がするよ?


「そういえば、前に買って行ったペンとインクは紫でしたね?」

「そう!丁度間だしいいかなーって」

「どうでした?」

「気に入ってくれたー。似た色探してインク買い足してたくらい」

「なるほどなるほど。ちょっと待ってくださいねー」


 ペンはとかインクとかを気に入ってくれた、っていうのは、色がと言うより君からの贈り物からだと思うけど、それは言わない方がいいのかな。

 言わない方がいいんだろうなぁ~~!自分で気付くことはないだろうからお友達から直接聞きな~!

 そして聞いた時の話だけお姉さんにも教えてくれェ~!!


 内心クッソうるさく騒ぎ立てながら、裏に物を取りに行く。

 彼女が今日見ていたのは髪飾りなので、青系の髪飾りが入った箱をそのまま持っていくことにした。

 そんなに値の張らない物を入れている箱なので、どれを選んでもさっき手に取って見ていた物以上の値にはならない。


 収穫祭にも行くんだろうから、ここで使いすぎるのは良くないよねぇ。

 それにあの子貢ぎ癖があるのか何かにつけ贈り物買って行くから、一つ一つは値が張らないようにした方がいいだろう。

 ……この辺の事って、私が考えることでもない気がしなくもないけどね。気になっちゃうからね、仕方ないね。


「はい、とりあえず青系の髪飾りはこんなところですかね」

「わー!ありがとう店長さん!」


 箱を渡してとりあえずカウンターの内側に戻る。

 すぐに人が来て会計になったので、今日は本当に忙しい日だ。

 暇は日は本当に誰も客が来ないってのに。この差は一体何なんだろうね全く。


「店長さん、これってどうやって使うの?」

「ここが開くんですよ。んで、こう」

「ああ、なるほど」

「ある程度絞れました?」

「うん。これか、これ。あとはこれも候補かなぁ」

「ゆっくり選んでください」

「ありがとう!」


 ある程度欲しいものは決まっているけれどまだまだ絞り切れては居ない感じ。

 見てる限り、こっちも似合いそうだけどこっちも似合うだろうなぁ……っていう悩み方なのでこれはもうのんびり眺めさせてもらうしかない。

 その苦悩だけでこっちはただの水がなによりも美味しくなるのでね……ゆっくりお悩み……


 ちょうどお客も途切れてのんびり出来るタイミングだし、私も一旦座って息を吐く。

 やっと落ち着いた。今日は忙しかったから、実はお昼ご飯食べ損ねてるんだよね。

 普通にお腹空いたなぁ。この後落ち着くといいけど。

 なんて考えながら眺めていた彼女は贈り物を選び終わったようで、目が合うと笑って寄ってきた。


「決まりました?」

「うん!これにする」

「はーい、ラッピングは?」

「お願いします!」

「じゃあ包みとリボン選んでくださいねー」


 見本を渡して選んでもらっている間に値段を出しておく。

 疲れたところに良いものを見せて貰ったお礼ってことで、ラッピングの料金は入れないでおこう。

 いいんだよ、私が店主だから。アンシークでは私が正義だ。


「これと、これで!」

「はーい。じゃあお値段が、六百八十コルメになります」


 代金を確かに受け取って、ラッピング作業をしつつお喋りをする。

 既に収穫祭には一緒に行こうと誘ってあるらしい。……早くない?早い者勝ちだから?……まあ、それは確かにそうかもしれないけど。

 絶対に一緒に行きたいという意思がひしひしと伝わってくるね。


「好きですねぇ」

「大好きだよ」

「はい、こんな感じになりましたよ」

「綺麗!流石店長さん」


 袋に入れた商品を渡して、手を振って去って行く彼女に手を振り返す。

 ……収穫祭の話も終わったら是非聞かせてほしい。もう本当に、聞いてるだけで寿命伸びてる気がするんだよね。

 なんて考えながら人の居なくなった店内でぐっと伸びをした。

 はぁ~~疲れた。とりあえずご飯食べよ。

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