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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
二章「曰く、林中の蛇影」
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避暑地を求めて 3

 まだ太陽が沈み切っていない時間帯に閉店準備するのってなんか違和感あるね。

 ちょっと非日常感があってテンション上がる。

 意味もなくルンルンだ。早く終わるから、ってだけではないと思う。多分。


 本日所用により営業時間を短くさせていただいております、という先々代くらいから使われている札をひっかけて閉店作業は終了だ。

 中に入って鍵を閉めたら、エプロンを外して脇道の方から外に出る。


 正直暑いから日が沈んでからの方が動きやすくはあるんだけど、ギルドに行くのに日暮れ後はちょっとどうかと思うよね。ね~。

 そんなわけで暑い暑い言いながらギルドまで歩く。

 ギルドの中は涼しいからそこまでの辛抱だ。行ったら多分お兄さんが冷たいお茶くれるし。


「おおうぁ~……」

「あら、エスティ。こんな時間にどうしたの?」

「こんにちはニレさん……ギルドに行くのです……」

「そうなのね。はい、これあげるわ」

「わーい」


 ニレさんに冷たいお茶を貰って、それを飲みつつギルドに向かってフラフラ進む。

 暑いよぉー。暑いよぉー。

 やはり夏はクソだ。早く秋になって欲しいー。


 脳内で文句を垂れ流しながら歩いて途中のごみ箱に飲み終わったお茶の入れ物を捨て、ようやく見えてきたギルドの建物にちょっとだけ歩く速度を上げる。

 裏口のノッカーを叩くとすぐに人が出て来た。

 取引に使っている部屋に通されてお兄さんを待っている間に出してもらったお茶を飲む。


「お待たせしました」

「いえいえ、頂いてます」


 コップを持ち上げてへらりと笑う。

 お兄さんはまだいつもの笑顔だ。この後怖い方の笑顔になるのかな。

 それはそれでちょっと見たいけど、普通に怖いんだよなぁ。私に向けられてるわけじゃないからまだマシってくらいで。


「まず一つ、よろしいですか?」

「よろしいですよー。なんですか?」


 お茶を置いてちゃんと向かい合ったところで、お兄さんは笑顔を怖い方にした。

 なんでこんなに威圧感がある笑顔が作れるのだろう。仕事に必要なのかなぁ。

 ギルドの事務員は実はめちゃくちゃ強いとか言われても私は普通に信じるぞ。


「入って下さい」

「はい……」

「この者は、アンシークとギルドの取引を無断で中止させた者です。直接の謝罪をと言ってきましたので、少々お時間を頂きたく」


 断っていただいても構いません、と笑顔で言い放ったお兄さんに入ってきた職員さんがビクリと肩を揺らした。

 あー。あんまり虐めちゃ可哀そうですよ全く。

 別に庇う気もないけど、対応が早かったこともありそんなに恨みもないのでここで区切りをつけておくのが良さそうかな。


 構いませんよーと緩く声を出せば、職員さんは分かりやすく胸を撫でおろした。

 その横でお兄さんがずっと同じ笑顔なのが凄く怖い。

 早く終わらせていつもの優しい笑みに戻ってもらおう。


「この度は、私の勝手な想像でアンシークさんに多大なご迷惑をおかけし、大変申し訳ございませんでした……心よりお詫び申し上げます」

「いえいえ。とりあえずどうにかなりましたし」


 にこーっと笑えばお兄さんが笑顔で手を挙げた。

 それに反応して職員さんは部屋を出ていき、お兄さんの笑顔が怖くない笑顔になった。

 今度は私が胸を撫でおろす番だ。


「はへぇ……」

「おや、どうしました?」

「お兄さんずっと怖い顔してるんですもん」

「それは失礼を。では、取引を始めましょうか」

「はーい」


 取引が止まっていた間もダンジョンアイテムは変わらず持ち込まれているので、少しの間頻度を上げておくことになった。

 一度に取引するアイテム数は変更しちゃうと戻す時にも手続きが必要になるらしい。

 今回の件でちょっと厳しくなる可能性もあるのかなぁ。ギルドも色々大変だ。


「こちらが今回の取引分ですね。ご確認ください」

「……また珍しいのが出ましたねぇ。ギルドに置いておいても欲しがる人が居そうですけど」

「そういった品まで置くとなると隣に道具屋を作らないと行けなくなりますね」

「それは確かに。……作ってもいいんじゃないです?」

「ギルドマスターにでも進言してみましょうか」


 話しながら確認を終えて、差し出された書類も確認してサインを済ませる。

 その他諸々の手続きも全部終わらせて時計を見ると、いつのまにやら二時間ほどが経っていた。

 早めに店閉めて来て正解だったなぁ。


 書類の確認とアイテムの受け渡しが全て終わって外に出ると、日が暮れて随分涼しくなっていた。

 これくらいがいいよねぇ。昼間は太陽が強すぎるのだ。

 なんて、私は涼しくてご機嫌だけどお兄さんからしたら女の子が一人で歩くには遅い時間だと思ったらしい。


 送ってくれると言うのでお言葉に甘え、のんびり喋りながらアンシークに向かう。

 お兄さんも今回の件が終わったからやっとゆっくり休めるらしい。

 大変ですねぇ。ギルド職員はいつも忙しそうだ。個人でのんびりやってるアンシークに慣れてる私からしたら意味の分からない忙しさ。


「遅くまでありがとうごさいました」

「いえいえ。こちらこそ送っていただいてありがとうございます」

「では、おやすみなさい」

「おやすみなさい、いい夢を~」


 扉の鍵を開けて中に入り、荷物を置いて息を吐く。

 整理とかあれこれは明日でいいや。

 今日は疲れたからご飯食べてシャワー浴びてさっさと寝てしまおう。

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