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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
二章「曰く、林中の蛇影」
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避暑地を求めて 2

 ギルドから手紙が来たのは、フィンさんのお家に遊びに行った翌日のことだった。

 本当に来た。流石フィンさんだなぁ。

 なんて考えながらペーパーナイフで封筒を開けて中身を確かめる。


「……ほほう」


 楽し気な声が零れたのをそのままに、笑いながら便箋を封筒の中に戻す。

 いつも通り綺麗な字と丁寧な言葉で書かれているのに、どこからか柄の悪さが滲み出ているという非常に愉快なお手紙だった。

 ギルドのお兄さんブチ切れてんのが文面で分かる。笑いが止まらん。


「やっほーエスティ……え、どうしたのエスティ」

「あはっははは!」

「壊れた……!?」


 扉の鐘がカランコロンと音を立てて、シュッツが現れた。

 とりあえず笑いを収めようと思ったんだけど……思えば思うほど笑えてくる。

 まあ、他の人ならともかくシュッツだしいいか。


「あはァ!」

「本当にどうしたのエスティ!?」

「いや……んふふふ……ちょっ……ぐふぅ……」


 どうしても笑いが収まらなかったので、仕舞ったばかりの手紙を取り出してシュッツに渡す。

 口外すんなって言えば誰にも言わないだろうという信頼はあるので見せてしまっていいだろう。

 手紙を読んだシュッツは、ようやく私が壊れたかのように笑っている理由を悟ってほへぇ……と息を吐いた。


「はぁ……びっくりした」

「はぁ……笑った笑った」

「収まった?」

「とりあえずは。で?なに?買い物?」

「ああ、うん。ペンとメモ帳買いに来たんだ」


 ようやく笑いが収まったので、シュッツがいつも買っていくペンとメモ帳を取り出してカウンターに乗せる。

 メモ帳は二つ要るらしい。今度は何を調べているのか、また随分書き留めるものが多そうだ。

 まあ、言わないってことは知らなくてもいい事だろうから聞かないけど。


「とりあえず、取引再開おめでとう、でいいのかな?」

「うん。ありがとー」

「いつ行くの?」

「明日早めにお店閉めて行ってくるよ。早い方がいいだろうし」

「そっか、じゃあ今日来てよかったな」


 話しながら会計を済ませて、ポーチにメモ帳を仕舞うシュッツを眺める。

 ……こうして見てる分には顔がいいなぁと思うんだけどなぁ……

 なんて、ぼんやり考える私の内心を知らないシュッツは一人勝手に慌て始めた。……バレると困る何かをしたのかな君は。


「そういえばシュッツ、フィンさんに色々話したでしょ」

「えっ、あっ。うん……」


 ごめんなさい……と素直に謝ってくる姿はなんだか子供のようだ。

 年上だろうお前。何を前髪弄りながら目を逸らしてんだそれが許されるのは可愛い子だけだぞお前の身長を言ってみろおいこら。

 おん?と眉根を寄せて見上げていたらシュッツが滑らかな動きで後ろに下がって行った。


「じゃ、僕はこれで」

「あ、逃げた」

「おつかれエスティ!またね!」


 カランコロンと音を立てて扉が閉まり、店内が一気に静かになる。

 それにしても滑らかな後ろ歩きだったな、実家ではよく見てた気もするけどこっちに来てからは滅多に見なくなったものだ。

 冷や汗かきながらするもんじゃないけどね、怒られると思うんならまず言うんじゃないよ。


「……別に話したことは怒ってないって言いそびれたな。まあ、いっか」


 私悪くなーいしっと軽く手を振り、カウンターの上に放置されている手紙を今度こそ仕舞う。

 今日はフィンさんから借りた本があるから暇な時間も苦ではない。

 フィンさんに感謝。これ返す時になんかお礼持っていこう。


 本を読み進めている間にいつの間にかお昼になっていたらしく、扉が開いてスクレ君がやってきた。

 今日も今日とていい香りを纏っている。

 認識したら一気にお腹空いてきたな……


「こんにちはー」

「こんにちはスクレ君。今日は何ですか?」

「今日は卵サンドとベーコンチーズサンドがあるよ」

「うわ、どっちも美味しそう」


 私の胃の容量的にどっちもは食べられないから片方なんだけど、どっちにしようかな。

 ……でも、昨日ベーコンでっかいの買ったんだよなぁ……チーズもあるし、ベーコンチーズは最悪自分で作れるか。

 そうなれば答えは一つ。今日は卵サンドです。


「卵サンドにします。お菓子は?」

「マフィン」

「お、いいねぇ」

「どっちも一つでいい?」

「うん。おいくら?」

「五百コルメでーす」


 代金を払って商品を受け取り、去って行くスクレ君に手を振って見送る。

 早速包みを開けつつ、最近口いっぱいに頬張ったところで誰かが来ることが多いから今日はちょっとずつ齧ろう、なんて割とくだらないことを決意した。

 まあなんで口いっぱいに頬張ってしまうかって、美味しいからなんだよね。


 理性をしっかり保たないと、気付いたら口いっぱいに頬張って幸せを噛みしめている。

 恐ろしい店だぜビヤンネトル。今日の卵サンドもめちゃくちゃ美味しい。しあわせ。

 なんて、のんびりちまちま食べ進めて、サンドイッチの痕はマフィンもちまちま齧って、ほへぇと満足の息を漏らす。


 結局今日は食べてる間に誰か来たりしなかったな。

 その方がいいっちゃいいんだけどさ。

 とりあえず、食べ終わって暇なうちに明日お店を閉めるの早いよ、的な掛札を作っておこう。

 読書してた時は思いつかなかったんだよね。やっぱりのんびりご飯を食べるって大事よ。

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