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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
二章「曰く、林中の蛇影」
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避暑地を求めて

 あっつ。

 ここ数日の感想はこの一言で全て片付く。

 あっっっっつ。


 はぁ?なんかもう腹立ってきたんだけど。

 そんなことを思いつつ、今日はアンシークの定休日なので自分の意思で外に出ているという現実にため息を吐く。

 それでもこの時期に重い腰を上げて出かけるだけの用事があるのだ。


「……ッチ」

「こらこらエスティ、舌打ちしないの」

「あ、フィンさん。お迎え来てくださったんです?」

「うん。暑さで溶けてそうだったからね」


 今回私が暑さに舌打ちしながらお外に出てきた理由であるフィンリーおに……おね…………

 フィンさんが迎えに来てくれて横に並ぶ。

 今日は休みのはずだけど、いつも通り騎士団魔法部隊の制服を着ているフィンさんはシュッツ以上に性別が分からない。


 いやまあ、シュッツの性別も実はちゃんと知らないんだけどさ。

 騎士団魔法部隊の制服はゆったりとしたローブ調のもので、下に着ている物もゆとりがあるので体型が分からず。魔法使いにとって髪は切って色々使えるものなので男女問わず髪は長く。

 ついでにフィンさんは声も中性的だし少年のようにはしゃぐこともあれば乙女のように他人の恋愛話に喰いつくところもあるので本当に分からない。


 気にしてもどうにもならないところなので気にしなくなって久しいが、そう言うと周りからは「いや一番気にするべきところじゃない!?」と言われたりする。

 そうかなぁ?そうなのかもしれないけれど、別に気になんないしなぁ?と流してしまうのが常だ。

 何せ幼少期から性別不詳なシュッツが横に居たわけだしね。つまりあいつのせい。


「そういえばフィンさん、お仕事落ち着いたんですね」

「まあねぇ~。全く、下っ端は忙しいぜ」

「フィンさん下っ端じゃないでしょ」

「永遠の下っ端だよ自分は」


 何を言っているんだ。もうたくさん後輩いるでしょ。

 そうやって自称下っ端で居るのもそのうち許してもらえなくなりますよーと声に出せば嫌だーと緩い言葉が返ってきた。

 普通は出世したがるものじゃないの?知らないけど。


「そういえばエスティと仲のいい中位騎士が居るじゃん?」

「ジャックさんです?グレンさんです?」

「どっちもどっちも。こないだ廊下で声かけられたんだよねぇ……はい、どうぞ」

「お邪魔しまーす。声かけられるような何かをしたんですかフィンさん」

「何もしてないよ。お仕事の話だった」


 話しながら歩き続け、フィンさんのお家にお邪魔する。

 魔法部隊の宿舎もあるはずだけど、フィンさんはずっとこの家に住んでいる。

 いい家だ。屋上にプランターが置かれていて色々育てられてるところも好みです。


 家の中に入った瞬間、ふわりと心地のいい風が吹いて来た。

 フィンさんが何年も住んで魔力を蓄えているこの家は、一年を通して室温が一定に保たれている。

 この時期は非常に涼しい極楽の避暑地になっているわけだ。


「エスティ何飲む?」

「レモネードがいいです」


 お邪魔した時にいつも座っている位置に腰を下ろし、遠慮なくクッションを抱え込む。

 あぁー……ひんやりクッション気持ちいいー……

 ソファに座ってほへぇーと緩い声を出している間にフィンさんは二人分の飲み物を持ってきていた。


「はいどうぞ」

「ありがとうございます」

「そういえばシュッツから聞いたんだけどさ、アンシークとギルドの取引が止まったんだって?」

「そうなんですよ。盗人関連が終わるまで一時中断です」


 受け取ったレモネードを飲み、ストローを弄りながらゆったりと答える。

 こっちに非がない取引中断だし、フィンさんは知ったところでアンシークの不利益になることしないだろうから普通に話してしまう。

 というかシュッツと会ってたんだ。性別不詳コンビは意外と仲がいいらしい。


「じゃあそろそろ再開するのかぁ」

「え、盗人捕まったんです?」

「うん。そろそろ公式発表されると思うよ」


 流石騎士団魔法部隊、耳が早い。

 でもそっかぁ、再開するのは嬉しいなぁ。

 夏の間に面倒事は粗方片付きそうでなによりだ。


「そんなわけで暗い話は終わりにして……エスティ、中位騎士様方とはどんな関係?」

「いいお客さんですよ」

「えー、前に一緒にご飯食べてなかった?」

「誰から聞いたんですかそれ。他の人もいっぱいいるバーベキューでしたよ」

「つまんなーい。エスティもっと浮ついた話ないのー?ちなみにバーベキューのことはシュッツから聞いた」

「あいつ何でもかんでも話しやがって」


 毛先を弄りながらストローをクルクル回す様子はお姉さんにしか見えない。

 あと、私は自分の恋だのなんだのに興味ないのフィンさんは知ってると思うんだけどな。それとは別にして面白そうだからって首突っ込んでるでしょ。

 私もよくやるから文句言えないけどさ。


「向こうは絶対エスティの事好きだよ?」

「だとしたら余計になんもしないですよ。いつまでも二人で掛け合いしててほしい」

「まあ、見てて面白いのは分かる」

「フィンさんもお二人と仲良いんです?」

「いや?向こうは今回のお仕事の件で初めて自分の事認識したと思うよ?自分はエスティの事でちょっと観察したりしたけど」


 フィンさんが隠れて観察してたらもう誰も気付けないよね。

 そういう所で無駄に魔法使うのどうかと思いますよ。

 なんてダラダラ話している間に時間はどんどん過ぎていくのだった。

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