表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
二章「曰く、林中の蛇影」
24/124

認識の誤差

 夏の仕入れは地獄って、知ってた?

 私は知ってた。知ってたけど逃げらんないからダメージが大きいね。

 太陽が……太陽が強い……


「大丈夫かエスティ」

「大丈夫に見えますか」

「見えねぇなぁ」

「お察しの通り駄目です。水分補給タイムを所望します」

「そりゃあお前の好きにしていいがよぉ。ま、どっか日陰で休むか」


 仕入れということで当然のように一緒に来ているジャンさんに泣きつき、よく冷えた果実水を買って日陰に置かれたベンチに腰を下ろす。

 太陽への憎しみで曇りの日を作れそうな気すらするけど、そんな元気ないからやる日は来ないな。

 毎年のことながら夏の盛りは仕入れの進行速度が遅い。


「お前さん、本当に暑さに弱いのな」

「寒さには強いです……」

「知ってるよ。冬にあの薄着はやめた方がいいぞ」

「でも平気ですもん」

「極端だなぁ」


 話しながら飲み物を飲んで、半分くらいは道中飲むことにして立ち上がる。

 直射日光の方が辛いから薄手の上着を着ているのでそれがまた暑くて暑くて。

 風でも吹いてればだいぶマシなんだけどよりにもよって今日はほぼ無風だ。


「太陽が憎い……」

「おう、恨んでもしゃぁねぇんだから次行くぞ」


 慣れた様子で受け流されながらトロトロ歩いて仕入れ先を回る。

 今日はラング爺さんの所には行かないからここの細道は通らなくてもいいんだけど、この道は影になっているのと空気が通るのとでちょっと涼しいのでわざわざ細道を進む。

 ジャンさんも何も言わずについて来てくれるのは分かっているからだろう。


 途中で飲み切った果実水の入れ物を捨てたり新しく買ったりしながらどうにか日暮れまでにすべての取引先を巡り終わった。

 アンシークの中に荷物を運び込みつつどれをどう店に並べるか考えて、結局暑さで頭が回らないので後で考えることにする。

 そのままジャンさんのお仕事終了の手続きをしに行って今日のやる事は終了だ。


「はぁー……ご飯作るのも面倒だなぁ」


 普段は割とちゃんと作っているのだけれど、今日はもう何をするのも面倒だ。

 何か適当に買っていこう、と歩き出すと、道の先にギルド職員のお兄さんが居るのが見えた。

 向こうも気付いたのか何故か目を丸くしてこっちを見ている。なんですか、そんなに死にそうな顔してますか。


「アンシークさん。お疲れ様です」

「お疲れ様ですー」

「今日はお忙しかったんですか?」

「いや、回る件数自体はそんなにですよ。死ぬほど暑かったですけど。……なにかありました?」

「いえ、今日いらっしゃるものだと勝手に思っていたので」

「……ん?ギルドとの取引は中止の連絡いただきましたよ?」

「え?」


 思わずお互いの顔を見て停止する。

 普段アンシークとギルドのやり取りは私とお兄さんの間で完結しているからあの手紙もお兄さんが出したもんだと思ってたけど、もしかして違うのだろうか。

 思い返せばお兄さんとはちょっと違う筆跡だったか……?


「……こちらで確認しておきます。手紙はまだお持ちですか」

「はい。持ってるし封蝋確認できると思いますよー」

「分かりました、では確認出来次第そちらに伺いますね」

「私から行かなくて大丈夫ですか?」

「今回はギルド外の方が都合が良さそうなので。それでは私はこのあたりで」

「はーい、お疲れさまでーす」


 お兄さんの笑顔が怖いなぁ。

 私に向けられているのは営業スマイルだけだろうからまだいいけど、あんなに怒っているお兄さんは初めて見たのでちょっと逃げ腰になる。

 それにしても、まさか他の人から取引中断させられていたとは。


 ぜーんぜん気付かなかったよ。ギルドとの取引ってことで信頼故に確認が甘かったりしたのかもしれない。

 今後はちゃんと筆跡まで確認しよ……いやめんど……やめよ……

 そんな普段から事件が起こるわけでもないんだし、気にし過ぎも良くないよね。うん。


 とりあえず今は夕飯の事だけ考えよう。

 正直もう食べなくてもいいかなぁとまで思い始めているけど、一応まだ食べるつもりはあるのでやる気がギリギリ保たれている間に何か探そう。


「お?死にかけだなぁエスティ」

「こんばんはー。暑くて仕方ないですね」

「ちゃんと飯食えよー」

「はぁーい」


 ダラダラ歩きながら知り合いとちょっと話したりして、会った人全員からちゃんと飯を食えと言われた。そんなに食べてないように見えるだろうか。

 とはいえ暑さで全てが面倒になっているのも確かなので、さてどうしたものか。

 なんなら買って帰るんじゃなくてもう外で食べて行こうかな。


 最近行っていなかったしいいかもしれない。

 ちょうどこのあたりに知り合いがやってるご飯屋さんあるからね、そこに行こう。

 食べている間に日も沈み切ってちょっとは涼しくなるかもしれないし。


 そうと決まれば話は早い。

 さっさと移動して店の扉を開き、まだ空席があることを確かめる。


「あら、エスティ!久しぶりじゃないの」

「こんばんはー。入れます?」

「ええ、ええ!好きなとこお座りなさい」


 ニコニコと笑顔で迎え入れて貰えたので店内を進んで奥の席に座る。

 店内はちょっと涼しいのでそれだけでも救われた気分になるね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ