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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
二章「曰く、林中の蛇影」
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ギルドからの呼び出し 3

 今日も今日とて空は晴天で、眩しすぎる太陽が暑すぎる外気を作り出していた。

 わたしくエスティア・アンシーク。暑いのが苦手です。

 寒いのは割と大丈夫なんだけど、暑いのはもう駄目。早く秋よこいと思って日々を過ごしている。


 太陽の下にはあんまり出ないで快適な影に暮らす一族の宿命ですね。うん。

 兄さんも結局は洞穴の中に居るわけだしもうこれはそういうものなのだ。

 なんてダラダラ考えながらカウンターの内側で水を飲む。


 一応店の中はそれなりに涼しいんだけど、今日は外が暑すぎるせいで私からすると快適と言い切れない微妙な温度になっている。

 もうちょっと下がってくれれば快適なんだけどなぁ。


 だらり、だらり。

 猫ならとっくに液体化しているだろう蕩け具合だけど、私は人間なので固体を保っている。

 お客が居ないのをいい事にダラダラしていたらポストに何かが投函される音がした。


「あー……なんだろ……」


 ポスト投函ってことは国の中からのお手紙なんだけど、わざわざ送ってくるような知り合いはほとんど居ない。

 まあ暇なのでさっさと確認してしまいましょう。


 立ち上がってポストまで行くと、入っていたのは上等な封筒。

 裏を見るとギルドの封蝋がされていた。

 ギルドからのお知らせなら昨日も来たのに。何か急用だろうか。


「ペーパーナイフ……ああ、あった」


 引き出しの中からペーパーナイフを取り出して封筒を開け、中の紙を取り出す。

 書かれていた内容はいつものダンジョンアイテムの取引……の、中止の連絡だった。

 昨日来た手紙はいつもと同じ内容で一週間以内で良きタイミングに来てくださいと書かれていたのでそれが中止になったという事だろう。


 事態が収束しないから一旦全部止めるのかな。

 多少の問題はなくもないけど、まあ仕方ないので大人しく再開を待っていよう。

 今度外で普段やり取りしてるお兄さんを見つけたら話を聞いてみることにして、とりあえず便箋は封筒に戻してそのまま引き出しに入れる。


「……シュッツ」


 声に魔力を滲ませて、そっと呟く。

 魔力は魔法を扱うための物、だけど魔法以外にも使い道はいっぱいある。

 この国には魔法使いが少ないから他の使い道を知っている人も少ないけどね。


 名前を呟いてしばらく待つと、店の扉がカランコロンと音を立てて開いた。

 そこからひょっこり顔を出したシュッツに片手を上げる。

 少しだけ息が切れているから割と急いで来たみたいだ。まあ普段そんなに呼ばないもんね。


「どしたのエスティ」

「ギルドとの取引が中止になったー」

「あらー」

「犯人捜索がどうなってるか、分かる?」


 帽子を取ってパタパタと動かしていたシュッツに奥から水を持ってくる。

 それを一口飲んでからシュッツは喋り出す。


「現状そんなに進んでないかな。時間が経って痕跡がより一層見つけ辛くなってる感じ」

「あらあら。駄目そう?」

「いや、ギルドの魔法部隊が動くみたいだからそのうち見つかると思うよ」

「なるほど。じゃあもうちょっとか」

「そうなるねぇ。……エスティ、大丈夫?」

「ん、とりあえず平気」


 空になったコップを受け取ってとりあえずカウンターの内側に置いて、ついでだからと送られてきた手紙を見せておく。

 シュッツは読むのが早いのですぐに手紙は戻ってきて、そのまま手を振って去って行った。

 なんであれ収まる兆しがあるならよかったかな。


 地下世界ダンジョンに逃げ込まれて追跡不可能、とかが一番嫌な終わり方だけど、魔法である程度追いかけられるならそれもどうにかなるだろうか。

 地下はどこがどう繋がっているのか把握するだけでも大変だし、時々新しい地上への出入り口が出来ていて中の壁が変動するとかあるらしいから捜索も一筋縄ではいかない。


「兄さんに手紙でも書こうかなー」


 ダンジョンについては兄さんが詳しいので、手紙にでも今回の件の事を書いてみようか。

 それとも、解決にしろ犯人の逃亡成功にしろ結論が出た後の方がいいか。

 考えて考えて、面倒になったのでとりあえずコップを片付けに行く。


 今日はもう何をするのも駄目な感じだなぁ。

 残りの時間でお客が来てくれればいいけど、今日の感じだと駄目そうな気がする。

 まあ、こういう日はのんびり考えを纏めるのがいいんですよ。


「というか半分くらいは暑さのせいなんだよなぁ」


 ぼんやりと独り言を呟きながら椅子に溶けるように沈み込む。

 夏は駄目だよ、頭が回らないよ。

 この事件も秋くらいに起こったらもうちょっと解決に協力しようかなぁって気も起こりそうなのに夏だから何もする気が起きない。


 兄さんなら夏でも暑い暑い言いながら活発に活動するんだけど、私はもう駄目。

 助けて兄さん。いや別に助けなくていいけど。

 だらり、だらり。まとまりのない思考でぼんやりしていたら扉がカランコロンと音を立てた。


「いらっしゃいませー」

「店長さんっ!」

「おお、いらっしゃいませ」


 勢いよく入ってきたのは割とよく来る女の子。

 会計の時にお喋りしたりしてるからそれなりに仲良しだ。

 あまりの勢いに二回もいらっしゃいしちゃったよ。


「聞いてください」

「はい」

「前に話した人とデートすることになりました……!」

「もっと詳しく聞かせて!!」


 夏の暑さにだらける時間は終わりだ。

 そんなことしてる場合じゃねぇ!!こういう話題の時は別エンジンがかかるんだよぉ!!

 一気にテンションが上がり、彼女の話を聞いて付けて行く髪飾りなんかを一緒に選んでいるあいだに夕方になっていた。

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