ギルドからの呼び出し
日陰から出ると日差しが強くて帰りたい気持ちがふつふつと湧いてくる。
それをどうにか抑えてとことこ歩いて大通りにあるギルドの建物に向かう。
あっついよぉー。日永の祭りからまだそんなに経ってないから夏の盛りと言ってもいい時期で、まだまだ私は日向に出たくない季節なのだ。
でも呼ばれたからには仕方ない。
ギルドからの呼び出しなんてそんなにないからね、暑いから嫌ですーとは言えないよね。
魔道具とかやり取りさせてもらってるし素直に出向きますよー。
「あっづ」
思わず声に出てたけど気にせずそのまま歩いて行き、ギルドの裏口をノックする。
表は冒険者のための入口だからね、私はそっちは用事ないし行ったら浮く。
なんて下らないことを考えている間に扉が開いていつも手続きとかをやってくれている職員さんが出迎えてくれた。
「すみません、わざわざお越しいただいて」
「いえいえ。なんかありました?」
「詳しい話は中で」
「はーい」
ギルドの中は涼しいのでとりあえず一息つける。
……まあ、そんなにのんびりする感じでもないみたいだけどね。
出迎えてくれた職員さんや顔見知りの職員さんたちからは感じないけれど、それ以外の大勢からは何か疑うような目線を向けられている感じがする。
なんかあったんだろうなぁ。呼ばれてる時点で察しては居たけどさ。
なんもなければわざわざ呼ばれないからね。
さーて今回はどんな面倒事が起こったのか。あんまり聞きたくないなぁ。
「どうぞ」
「わーい、ありがとうございます」
通された部屋で出されたお茶にとりあえず手を付ける。
美味しー。ギルドで出される物は大体全部美味しいから嬉しいね。
これで面倒な話が無かったら何より嬉しかったんだけどね。
「さて……今日お越しいただいた理由なのですが、実はギルド内で少々問題が起こっておりまして」
「ギルド内で、ですか?」
「はい。それが、ダンジョンアイテムの盗難なのです」
「ほー……なるほど、それで出入りのある外部者も捜査対象になったんですね、なーるほど」
「アンシークさんを疑うわけではないのですが、呼ばないという選択も出来ず。申し訳ありません」
「いえいえ。このくらいなら全然。解決しそうです?」
「今のところは何とも」
さっきの疑いの目はまさしくそれが原因だったのだろう。
ギルド内で盗難騒ぎとあればピリピリするのも仕方のない事。
しかも盗まれたのはダンジョンアイテムだっていうんだから警戒も強くなる。
ダンジョンとは、地下に広がる空間の総称だ。
そもそもギルドという組織がその地下ダンジョンを安全に、効率的に把握して巡るために作られたものなのだけど、現在はどの国でもダンジョン探索の他に住人の困りごとをクエストと呼ばれる形で解決する便利屋的なものにもなっている。
ギルドはほぼすべての国にあり、大きな街には一つ以上ギルドの建物が建っている。
世界のどこにでもあるけれどどの国にも属さない。
それが冒険者ギルドと呼ばれる組織だ。
「呼ばれた理由は分かったんですけど……私何かすることあります?」
「すること……は、ないかもしれませんが、解決するまでギルド内がせわしなくなりますので取引に時間がかかることがあるかもしれません」
「まあ、じゃあこっちは問題なしですかね」
その後、盗難が起こったと思われている日時に何をしていたかなどの質問に答えてギルドでの用事は終わりになった。
帰る時も疑うような睨むような目線を感じつつ、気付かないふりをして笑顔で手を振ってギルドを後にする。
直接関わるようなことにはならないだろうからそんなに気にしなくていいだろうけど、ダンジョンアイテムの盗難となると多少の警戒は必要かな。
ダンジョンアイテムとは名の通りダンジョンの中でのみ発見される品々で、基本的にはダンジョン内の探索をしやすくする道具だったり戦闘に役立つ道具だったりする。
時々ただの便利アイテム、探索や戦闘では使わないようなものが出たりもするのでそういうものをギルドから買い取ってアンシークに並べているのだ。
そういう、ただ便利な物とか珍しい物が盗まれただけならまだいいんだけど……
ダンジョンアイテムの中には呪いが込められていたり強力すぎたり、厄介な物もある。
盗まれたのがそういう品なら自体はちょっと深刻だ。
そうなると流石に騎士団も動くだろうけど……さてどうなるか。
「なるべく早く平和に終わってくれー」
ぼんやり呟きながら日陰を進み、道中見つけた出店に寄って飲み物を買う。
流石に暑くてやってられないから早く帰ろう。
こんな暑い日に外に居たら干からびちゃうよ。
ギルドのことは私が考えてもどうにもならないことだし、進展があったら教えて貰えそうだからそれを待っていればいいだろう。
それよりも今日は帰って棚の移動をしないといけない。
盗まれたダンジョンアイテムに思考を巡らせるのはそれが全部終わってからだ。
早く帰らないとシュッツが入口で待ちぼうけ食らって干物になっちゃうからと小走りに進もうと思ったのだけれど、暑かったから普通に歩くことにした。




