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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
序章「曰く、千里の道も一歩から」
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アンシーク 2

 目覚まし時計が鳴り響いている。

 カーテンの隙間から朝日が顔を照らして目覚めろと騒ぎ、サイドテーブルに伸ばした手はギリギリ目覚まし時計に届かない。

 ぐぅ……とうめき声を出しつつ起き上がり時計を止めると、針は六時半を指していた。


 頭はまだ眠いと駄々を捏ねるせいで全然回らないけれど、とりあえずベッドから降りて顔を洗いに行き、冷たい水で目を覚ましたら戻ってきて服を着替える。

 服は大体全部同じようなものだし、別に選ぶも何もないから適当だ。

 着替えて靴も履き替えたらピアスを着けて、寝癖を直しがてら耳が見えないように調整する。


「おはようアム」

「おはよ、エスティ!」


 泊まったついでに我が物顔でコーヒーを淹れているアムがリビングの椅子でくつろいでおり、その頭をわしゃしゃっと撫でて朝食を作るためにキッチンに立つ。

 食べるかと聞いたら元気よく食べるー!とお返事が来たので二人分。

 アムは好き嫌いとかないから私の朝食をそのまま二人分にしてしまえばそれでいいのが楽な所だ。


「アムは今日どうするの?」

「どうしよっかなー。とりあえず道具の補充はしないとなんだけど、そんなに時間かかんないかも」

「まあ、暇になったら好きに過ごしてていいよ」

「わーい。エスティ大好き」


 アンシークに来るのは馴染みの客が多いし、店にいても邪魔にはならない。

 人の居ない時間帯も多いので私の暇つぶしに話し相手になってくれるなら有難いくらいだ。

 旅の話も聞きたいし、もしアムがこの後兄さんの所に行く予定があるなら手紙を書いて届けてもらいたいし。


 そんなことを話しながら朝食を食べ終えて食器を洗い、アムが優雅にコーヒーを飲んでいるのを急かしてカップを空けさせる。

 片付けるのは私なんだし何ならここの家主私だからね?文句言っても意味はないんだよはようせい。


「そんじゃ、私は店の開店準備しに行くから」

「はーい。すぐ追っかけるよー」

「はいはい」


 声をかけて階段を降り、店へ続く扉の横に引っ掛けてあるエプロンを着けて店に入った。

 アンシークの制服という役割があるこのエプロンは左の胸のあたりにアンシークのマークが刺繍されている。

 ハンマーとペンとインク瓶とかいうよく分からない組み合わせの上にアンシークの崩した文字が乗るこれは一代目の店主が作ったらしい。


 店の看板もこれだし、シーリングスタンプもこのマークのがカウンターの引き出しに入っている。

 なんだかんだ歴代店主全員このマーク気に入ってる感じあるんだよね。

 かくいう私もわりかし気に入っているのでちょっと主張してみることもあったりする。店継いでから作ったこのエプロン、前よりちょっとマーク大きいし。


「えーっと、補充は大丈夫だから……」

「エッスティ!行ってきまーす」

「はーい。鍵開けてそのまま行きなー」

「はいはーい!」


 出発したアムを見送って店の清掃を済ませ、外の明かりを点灯させて出窓のカーテンを開ける。

 そこに置かれた鉢植えに水をやり、コップと水差しを持ってきて最後にレジの鍵を開けて椅子に腰を下ろした。

 今の時間は午前九時。いつもの開店時間なのは流石私。


 さて、この後はお客が来るまで暇を持て余しつつ大通りを眺めて過ごす時間だ。

 今日は何かいい感じの二人組が見れるかなーっと。

 まあもう少し時間経ってからの方が多いんだけど、九時に大通りの噴水前に集合ね!なんて約束をしている女の子たちは結構いるからじっと見てると意外と見えるんだよね。


 外を見ていたらカランコロンと音を立てて扉が開いた。

 お?開店してすぐにお客が来るとは珍しい。

 とりあえず接客スマイルを張り付けて扉の方に目を向ける。


「いらっしゃいませー」

「やっほー、エスティアちゃん」

「おやグレンさん。お早い来店ですねぇ」


 現れたのは昨日来店したジャックさんの同期でライバル的ポジションの中位騎士、グレンさんだ。

 サラサラの長い銀髪を一つに纏めて、騎士の制服である鎧をどこか若干着崩した色男。女性人気がやたら高いのもまあ頷ける感じの人。

 彼もまた常連さんだけど、この時間に来るのは中々珍しい。しかも鎧着てるし。


「仕事の使いっ走り。もー上司も俺使いが荒いんだから」

「あらお疲れ様です。忙しいんですか?」

「ギルドとの提携うんぬんで書類仕事が多くてね。はい、これリスト」

「はーい。少々お待ちを」


 渡された紙を見ながらどこにあったかなぁ、と脳内で回収の順番を考える。

 騎士団の人とかギルドの人が買いに来るものって大体奥の倉庫にあるから取りに行かないといけないんだよね。

 というかギルドと騎士団、またなんか共同でやってるのか。


 ギルドは世界中の各国にあるどの国にも属さない組織で、この世界の地下を構成しているダンジョンを探索したり地図を作ったり、そこで見つかる道具を収集したりと色々やっている。

 騎士団はその国で作られた国を守るための組織なので、地下ダンジョンの探索は基本やらない。

 ただ、町の中に急にダンジョンの入口が出来ることとかがあるからそれの対処とかで共同の何かしらをしている事は結構あるみたいだ。


「……裏から物取ってくるので、くつろいでてください」

「はーい」


 声をかけてから裏に渡されたリストの物を取りに行く。

 紙袋を用意してご所望の品を用意し、全て揃ったのを確認して店に戻る。

 渡して確認してもらって、その間に合計の金額を出しておく。


「うん、揃ってる。ありがとねーエスティアちゃん」

「いえいえ。こちら金額です。騎士団付けにしますか?」

「いや、渡されてるから払っていくよ。……これ関連が終わったら暇になると思うんだけどさ、そしたらエスティアちゃんどこか遊び行かない?」

「えー。他に誰が来るのか決まってからもう一回誘ってください」

「二人では行ってくれないんだね」


 にこっと笑って代金を受け取り額を確認する。

 うん、ピッタリなのでお釣りも出ない。

 騎士団のこういう細かい対応好きなんだよねぇ、仕事相手としては最高。

 そんなわけで今後もご贔屓にーと笑顔で見送り、再び椅子に腰を下ろすのだった。

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