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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
二章「曰く、林中の蛇影」
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知り合いの来店

 目の前には知り合いの男。

 すーっごい睨んでくるじゃん。怖くないけど。


「……あは」

「笑うな!」

「あははっ」

「……ああもう!お前が入れ知恵をしたんだろう!」


 ずいっと目の前に突き出されたのは以前他の人が買っていったループタイ。さっきまで付けていたのにわざわざ外して目の前に突き出してくるのが性格出てるよねぇ。

 この人の所に贈られるのは分かっていたから目の色に合わせてあるし、とっても似合ってると思いますわよ??


「はぁー……なんで私だって思うんですかぁ」

「あいつが花以外と言われて頼るのなんてお前くらいだ」

「まあ確かに選んだのは私ですけど、どのタイプにするかとか先端の飾りとか選んだのはあの人ですよ」

「……そう、なのか」

「そんなに気に食いませんでした?」

「そうじゃない、そうじゃないが……何を返そうかと……」


 ループタイを付け直しつつそんなことを言うもんだから、こっちもニヤニヤが止まらない。

 笑うなって、そりゃ無理な話ですわ。

 お返しに迷って私のところで買ったんだろうと予測立てて来たんでしょ?はーかわいいー。そこらの女の子より可愛いの何なの。腹立ってきた。


「ま、言うと思って用意はしてあるんですけどねー」

「なんだ、そうなのか」

「最初に用意した時から同じサイズ感でいい感じの色味が揃ってるやつを出したんですよ」


 言いつつ裏に別で保存しておいた箱を持ってくる。

 さて、飾りと台座はどれにするかな?使いそうなところは大体持ってきたけどどうだろうか。

 見せた瞬間に表情が明るくなったから、物自体は気に入って貰えたみたいだ。


「本当、何年経ってもラブラブですねぇ」

「そんなんじゃない!」

「はいはい。どれにします?」


 用意したパーツを並べつつ反応を見ていたのだけれど、真剣に悩み過ぎてて私のウキウキの目線にすら気付いていないみたいだ。

 からかうのも申し訳なくなるほどの真剣さだ。

 まあ、からかうけど。


「合わせるならこっちの色ですよ」

「この色でこの材質はないの?」

「似たようなのなら」


 どうです?と見せてみればまた考え始める。

 声に出して相談するタイプでもないから観察が捗る。

 こういう時に普段と逆の行動するから見てて飽きないんだよねぇ、この二人。ここには一人しかいないけど。


「ちなみにですけど、金と銀どっちがいいです?」

「銀」

「わあ即答」


 そこだけは確定事項なのか。

 じゃあ金細工は片付けていいかな。

 えーっと後は……これも片すか。よしよし、カウンターが随分すっきりした。


「あ、ちなみにその台座が同じ奴ですよ」

「そうなのか」

「これが同じ職人の作ったやつです」

「……むん」


 あ、また悩みを増やしてしまった。

 まあ満足するまで悩んでくれたまえ。今日はそんなにお客さんは来ないだろうしゆっくりしてくれ。

 私ものんびり眺めて過ごすことにするのでね。はー今日も水がうめぇ。


 色々見比べて選んでいる様子を眺めつつぼんやり水を飲んでいたら、決まったのか突然勢いよく顔を上げた。

 わあびっくりした、水零さなくてよかった。


「決まりました?」

「うん。これにする」

「あら綺麗。じゃあちょっと待ってくださいねー」


 選ばれたパーツをトレイに乗せて奥に持っていく。

 他のパーツは後で片付けるとしよう。他にお客さんいないし、彼は何か悪戯するタイプじゃないから大丈夫なはずだ。

 とりあえず組み立て優先ってことでね。


 カウンター奥の扉の先には、店頭に並んでいない商品が大量に収められている棚の他に作業机なんかも置かれている。

 実はアンシークってただの雑貨屋のはずなのに修理とかも請け負ってるんだよね。

 なんかできちゃうからやってる。その流れでこんなふうに好きなパーツを選んで組み立てられるアクセサリーなんかもある。


 手間がかかるから他よりちょっと高いんだけど、それでも人気だ。

 全く同じではないけれど似たような飾りを二人で着ける女の子とか結構いる。

 大変可愛い。見るたびにニコニコしちゃう。


 なので同じ台座で先端の飾りが違うこのセレクトを見ていてもニヤニヤが止まらない。

 笑いながら作業してるのすごい不気味だろうけどちゃんと傷もなく完成させたから文句は言われないはずだ。

 よしよし、これで完成。多分包装もするだろうから箱もって行こ。


「はい、出来ましたよー。ご確認を」

「…………うん、問題ない」

「プレゼント包装します?」

「する」

「じゃあ紙とリボン、お好きなの選んでください」


 完成したループタイを確認してもらって、それを箱に収めて包装用の用紙とリボンを見せて選んでおいてもらう。

 その間に広げたパーツを片付けて、裏に持って行っている間に選び終わっていたので包んで代金の計算をして会計を終わらせる。

 袋に入れるか聞いたら要らないと言われたのでそのまま渡し、去って行く後姿に手を振って見送った。


 はー楽しかった。こういう仕事はとても楽しくて好きです。

 ちょうど暇な日だったし、相変わらずタイミング良いよなぁあの人。

 出来れば貰った側の反応まで見たいけれどそこまで覗き見るとただのやべぇ奴なので私が関われるのはここまでだ。


「ま、そのうち何か聞けるでしょう」


 呟きつつ窓の外を眺めて、背もたれに体重を預ける。

 唯一の客が帰ってしまったのでやる事が無くなったけれど、まあ偶にはのんびりした午後もいいよね。

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