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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
一章「曰く、悪事千里を走る」
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夏の知らせ 3

 賑やかな大通りを眺め、ぼーっとしつつ水を一口。

 今日は日永の祭り。一年で一番日が長い日にあるこの国の夏を象徴するお祭りだ。

 国の外からも観光客が来るのでアンシークは通常営業するが、夜には私も会場に行くので祭りは楽しめる。


 祭りのメインは夜なのにもうかなり人が居るなぁ。

 なんてぼんやりしていられるのも今のうちだ。夜に近付くにつれ人が増え、来客も増え、最後にはもう本当にてんやわんやになる。

 今こうしてぼんやり水を飲んでいるのも小休憩みたいなものだ。


 さっきまでお客が居たし、お昼ご飯食べてる余裕もあるかどうか……

 なんて、考えている間にカランコロンと扉の鈴が鳴った。

 水を置いて顔に営業スマイルを張り付けて、明るく声を出した。


「いらっしゃいませー」


 入ってきたのは若い男女二人組。

 仲睦まじい様子や話している内容から隣国から遊びに来たカップルだろうと予想が出来る。

 いいですねぇ~~。日永の祭りのいい所はこうやって恋人と一緒に来る人が多い所だね。ぐへへ。


「あ、すごーい」

「あんまり見ない飾りだね。似合うよ?」

「お祭りだし、せっかくだしね」


 あーこれはいけない駄目ですお客様にやけてしまいます。

 顔に力を入れるとむしろ変な顔になりそうだからニコニコしてる分にはいいかなってことにしておこう。しといてください抑えるのは無理です。


「これください」

「はーい。すぐ付けられますか?」

「あ、はい」

「じゃあタグ取っちゃいますね」

「ありがとうございます」


 いえいえこちらこそありがとうごさいます。

 代金を受け取ってタグを外した髪飾りを渡す。

 そのまま店を出た二人組は店の外で髪飾りを付けて大通りの方に歩いて行った。


「ごちそうさまでした」


 思わず声に出てたし拝んでしまった。

 うっへっへっへ……おっとよだれが……

 見られてないからセーフセーフ。この時期は暑い以外は最高だぜ。


 大通りにもどんどん人が増えていき、続けざまに来客があったので人の恋路を覗き見るのはやめてちゃんと店主の顔を張り付ける。

 女の子も多いなぁ。まあ私がウキウキで花飾ったのも影響はあるんだろうけども。

 準備楽しかった……ニレさんに頼んで大き目の籠を花でいっぱいにしてもらったからかなり豪華だ。


 接客に追われている間にいつのまにやら時間が経っていて、祭り会場の方に人が流れていくので閉店時間には店の中に人は居なくなっていた。

 はー、忙しかったけど楽しかった。私はあれですね、とても初々しいカップルが二組ほど来たのが非常に素晴らしかったなと。

 あれは絶対一緒にお祭り行こ?で初デートしてる。天才。最高。


「エスティーお疲れー」

「お疲れ、いらっしゃいアム」


 閉店作業をしていたらアムが顔を出した。

 どの国でやっている祭りにも大体遊びに行っているアムは日永の祭りにもしっかり顔を出しており、昨日からうちに泊まっている。

 アンシークが営業中は一人で街をフラフラしていたアムがやってきたのでさっさと閉店作業を終えて、エプロンを外してカバンを取りに行く。


 荷物は先に纏めてあるから持って出るだけでいい。

 事前準備は大事だね。うんうん。

 そんなわけで荷物だけ掴んで外に出て、扉に鍵を閉めてアムの横に並んでお祭りの会場を目指す。


「今日はどうだった?」

「最高の一日だった」

「相変わらず楽しそうだねぇ……」

「アムは?見て回ってたんでしょ?」

「超楽しかった」

「そっちも楽しそうで何よりだよ」


 話しながらテクテク歩いて会場に向かい、屋台なんかを見て回る。

 逸れない様にアムのカバンの紐を握ってるからちょっと動きにくいけど、こうでもしないと人混みに飲まれてはぐれちゃうんだよね。

 もーほんと人多いんだから……せっかくだから楽しむけど、ずーっと居るとものすごく疲れる。


「あ、なんかある!あれなんだろう」

「何だろ……食べ物みたいだけど」

「買ってみよう」

「勇気の塊かよ」


 よく分からない物に手を出す速度が尋常じゃなく早いのよ。

 好奇心だけで突き進んでるのはどうかと思うぞ。好奇心猫を殺すんだぞ。

 まあ毒とか効かないから警戒する必要もないんだろうけどさ。


「おじちゃんこれなにー!?」

「何だお嬢ちゃんたち見たことねえのか」

「うん!美味しい?」

「美味いぞ」

「じゃあ一個ください」

「おう。これはバンゼの料理でな」

「バンゼ皇国ですか。はぇー遠く」


 ノリノリで屋台のおじちゃんに突撃したアムについて行き、おじちゃんが用意してくれている間にちょっとお話をする。

 おじちゃんは色んな祭りでこの屋台を出しているらしい。

 旅商人とは違うんだろうけど、いろんなところに行く屋台のおじちゃんの呼称が分からねえな。


「ほい、お待ちどう」

「ありがとう!……うめぇ!」

「元気いっぱいかよ」

「いい事じゃねえか」


 一口分けてもらったけど本当に美味しかったので私も自分の分を買って適当に座れる場所を探すことにした。

 これ本当に美味しいな。スパイスが効いてて異国の味って感じ。

 アムの好奇心も偶には役立つ……って否定しきれない感じがあるから毎度突っ切っていくのを止められないんだよなぁ。


「次どこ行くー?」

「待て待て待て食べんの早すぎるでしょ」

「じゃあちょっと待ってるー」

「そうしてくれー」


 私はまだ半分くらいしか食べてないのに、アムはもう食べ終わっていた。

 どうしてこんなにも差が出来るのか。

 普段の食事速度の差かなぁ。アムは旅とかしてるから、移動のためにさっさと食べるとかあるのかもしれない。


 なんて考えている間に食べ終わったので、ゴミ箱に包みを捨てて再び祭り会場を回る。

 知り合いに会ったりもしながら祭りを楽しみ、疲れてきたので家に帰ってシャワーを浴びてさっさと寝ることにした。

 なんだかんだ、明日も店開けるからね。あんまり夜更かしは出来ないのだ。

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