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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
一章「曰く、悪事千里を走る」
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夏の知らせ

 大通りをテクテク進み、大分強くなってきた日差しを避けて建物の影に入る。

 今日あっついなぁ……帽子被ってきて正解だった。

 途中で飲み物も買った方がいいかもしれないなぁなんて考えながら歩き、花屋の前でのんびりと声を出す。


「ニーレさーん。こんにちはー」

「あらエスティ、こんにちは。今日は何をお求め?」

「先代の所に行くんです。なのでまあ、適当に」

「分かったわ」


 伝えればニレさんはすぐに花束を用意してくれた。

 それを受け取って代金を払い、またのんびりと歩く。

 ちょっと遠いんだよね、普段は気にならないんだけど、今日はちょっと暑くて辛い。


 途中で冷えた飲み物を売っている屋台を見つけて思わず立ち寄ったりしながら歩いて来た場所は、町の少し外れた位置にある墓地だ。

 高い柵で囲まれたそこに入るには入口の門を通るしかない。

 ま、元々不法侵入なんてする気はさらさらないので門に向かって一直線に進めばいいだけだ。


「こんにちはー」

「こんにちは。今日は暑いですね」

「そうですねぇ……今日は早めに切り上げます」

「そうしてください」


 入口で墓守さんに挨拶をして中に入り、迷うことなく先代の墓がある場所を目指す。

 どの墓も荒れた様子が全くないのは墓守さんが手入れをしてくれているからだ。

 私は結構頻繁に来るので顔見知りであり、結構気にかけてもらっている。理由は色々あるけど今は省略。


 たどり着いた墓の前に、とりあえず花を乗せてしゃがみ込む。

 前来た時と変わらず佇むこれの下にアンシーク先代店主が眠っているわけだけど、ここで喋りかけたからと言って今もここに居るとは限らないよねぇ。

 そんなわけでここでの独り言は私がしゃべりたいだけのものだ。返事ははなから求めていない。


「おじぃ……今日暑いです、ものすごく。流石に日永の祭りが近くなってくるともう駄目ですね、道中溶けるかと思いましたよ。

 あ、今回はですねぇ、アイラック商会の事報告に来たんですよ、おじいはアイラック商会贔屓ですからねぇ、今回の件私より怒ってそうです。

 とりあえず、誤解も全部解けてわりかしいつも通りになりましたよ。手のひらの返しようにちょっとイラつきましたけど何にもしてない私はいい子ですね。へへ。

 ルツィオ商会の方はもうすでに余罪も全部バレて解体されてるみたいです。中々の手際の良さですよね、騎士団がやってるのか警備がやってるのか知りませんけど。


 はぁ……それとそう!聞いてくださいおじい!

 まーた面倒ごとの予感です、というかすでに面倒です。

 私またデートのお誘い貰いましたよ、三人くらいに。まあ、うち一人は別にそういう意味じゃないんでいいんですけども。

 見てるのが好きなんだから他の人を誘っている様子が見たいです……自分に来られちゃ見れないし面倒です……

 おじい、血の繋がりがないとはいえ数年間二人暮らしした可愛い孫娘に悪い虫がつかないようになんかどうにかしといてください……っと。


 あんまり長く居ると心配されちゃいますね、今日は普通に暑さ的な意味でも。

 そんなわけで今日はこれで帰ります。また来まーす。

 ……あ、おじい、寂しくてもラング爺さん連れて行っちゃだめですよ、まだアルノートさんに技術継承が終わってないので。

 では、ばいばいおじい。また来ます」


 立ち上がり、お墓の前から移動する。

 返事を求めてはいないけれど、おじい……ではなく、先代に近況報告に来ているんだから話しかけてしまうし適当にお願いもしてしまう。

 ま、なんかあったとして先代なら悪いようにはならないだろう。


 お墓の前でピーチクパーチク好き勝手話して満足したら帰る。これは結構前からの習慣だ。

 今回みたいに何か大きめな事柄があると大体来ている気がする。

 行かないよりいいでしょ、と気軽に思っているけれど、こういうところが私の先代好きすぎ疑惑に拍車をかけているんだろうな。


 まあ何を言われようが改める気なんてないので気にしない気にしない。

 門のところで墓守さんに声をかけてから墓地を後にし、飲み終わった飲み物のカップをゴミ箱に投げ入れる。

 ナイッシュ。イエイ。


「あれ、エスティアちゃん?」

「おやグレンさん。こんにちはー」

「こんにちは。お出かけ?」

「行ってきた帰りです。グレンさんは今日お休みですか?」

「まあね。あ、そうだ。アイラック商会の件とかで色々あったしご飯とか行かない?奢るよ」

「何人まで誘っていいですか?」

「あ、大人数会食になるやつだねこれ……バーベキューでもしようか」

「わーい。とりあえずシュッツ誘お」


 色々押し付けたしなぁと思いつつそんなことを言えば、グレンさんは何か悩むように腕を組んだ。

 どうしたんだろう。普段は他に人誘ってもこんな反応しないのになぁ。

 それにしても整った顔立ち。前髪が左目にかかってるけど、それがまた魅力になるんだろうなぁこの人は。女の人にキャーキャー言われる理由も分かるってもんだ。


「シュッツってこの前も一緒にいた子だよね?」

「そうですよー」

「仲良いの?俺エスティアちゃんが敬語で話さない相手ってそんなに居ないもんだと思ってたんだけど」

「……ああ、なるほど。シュッツは昔からの知り合いです」

「へぇ」


 シュッツの事が気になっているらしい。

 まあ確かに私は基本的に敬語で話すし、シュッツにやるみたいなくだらない悪戯は他の人にはあんまりやらない。

 私への評価がアンシークへの評価になるっていうのが一個大きいわけだけど、それ以外にも色々あるから。


 そのあたりは別にいう必要がない事なのでグレンさんが奢ってくれるらしいバーベキューの話を進めよう。

 ニレさんとか誘ったら来るかな。誘うだけ誘ってみるか。

 日程の話をしている辺りちゃんと開催してくれるみたいだ。

 やったぜ。他人の金でお肉が食えるぞぉ。

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