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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
一章「曰く、悪事千里を走る」
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状況整理 3

 コップを持って中の水を飲みつつ目の前の通りを歩いて行った下位騎士二人組を目で追う。

 男の子二人。非常に仲睦まじいご様子。

 なんて良い光景。片方が絡んで片方がうざそうに腕を払う。でも本当に嫌な訳じゃなさそう。


 あ~~ただの水が何よりうめぇ~~~

 良いものが見れた……これで一週間頑張れる。ごちそうさまでしたありがとう。

 ……ん?窓からなんか入ってきた。あぁ、シュッツからの手紙か。


「……あ、終わったのね。そろそろこっち来る……って、それを先に言えよあいつ」


 そっちに向かったみたい~と緩々書かれた文章に軽く舌打ちをして、紙をしまってコップを置いた。

 そして何にもなかったかのように窓の外に目を向け直し、ちょっとした後にカランコロンと音を立てた扉に顔を向けた。

 顔にはしっかり営業スマイル。割と完璧と好評だったりする。


「いらっしゃいませー」

「やあ、こんにちはエスティアちゃん」

「すまないな、営業中に」

「あらジャックさんグレンさん。いらっしゃいませ。物をお探しではなさそうですね」


 内容は割と知ってるんだけど、まあそれは言わない約束だ。

 時間かかるならお店閉めますよぉーと言いつつ断られたので上げかけた腰は下ろす。

 私が座ってて二人が立ってると見上げる角度がえぐいんだよな。


「アイラック商会の件と、先日君を追いかけていた者の詳細が分かったので報告だ」

「わあ。わざわざすみませんね」

「まずアイラック商会の件だね。これはまあ、端的に言えば冤罪だったみたい」


 この二人、たまにバチバチやってるけど付き合いが長いからなのかよく一緒にいるからなのか流れるように説明が分担されて交互に来るんだよなぁ。

 聞いてて面白いからこのままでいてほしい。

 真面目に聞きますからね、聞いてるからそのままでね。


「そもそもの報告から虚偽。ぜーんぶ嘘」

「はえぇ……暇人がいるもんですねぇ」

「虚偽報告をした者と町で噂を流した者、そして、先日君の事を追いかけていた者が同一だ」

「ルツィオ商会って聞いたことある?」

「……ああ、なんか前に粗悪品販売して怒られてたところですね?」

「そうそう。そこ」


 他にも色々やってるらしいけど、どこまでバレてんだろ。

 あんまり余計なこと言わないようにしないとなぁ。

 これでうっかり他のこと漏らしたらまた面倒事になりそうだからね、お口チャック。


「今回の件、動機もくだらないんだよね……」

「そうなんです?」

「ジェンズビー子爵のお抱え商会の地位が欲しかったらしい」

「……え、馬鹿なんです?」

「馬鹿だな」

「馬鹿だねぇ……」


 そんなやり方で成れるわけないだろうが……なんて頭の悪い……

 思わず素で頭抱えちゃったよ。

 馬鹿すぎてその行動も疑問に思われなかったのが唯一の救いだね。ルツィオ商会は救いようのない馬鹿だけど。


「はぁ~~……くだらな」

「いや本当にね」

「広まった噂も事実に上書きされるだろう。アイラック商会からは何一つとして違法品は出てこなかったからな」

「そうでしょうそうでしょう!」

「エスティアちゃん嬉しそうだね?」

「アンシークは先代の頃からアイラック商会贔屓ですよ」


 とりあえず話はこれで全部で、私を追っかけてた人を含めルツィオ商会の面々は捕まって取り調べ中だから心配しなくていいとの事だ。

 去って行く二人を見送って、フッと息を吐く。

 そのまま入口に目を向けていると、シュッツが中に入ってきた。


「やっほーエスティ」

「ん、おつかれ」

「話聞けた?」

「まあ大体。とりあえず今回はこれでおしまい、ってことで」


 おつかれぇ!!と大声を出してみたら思ったよりびっくりしたらしいシュッツが後ろに飛び退いた。

 ははは、ウケる。期待して急に大声出したわけだけど、期待以上の反応で私は嬉しいです。

 ごめんて、どんなに睨んでも怖くないって。


「すぐそういうことする……」

「楽しい」

「そうですか!もー……」


 ため息を吐きつつ帰って行くシュッツを見送って、グーッと伸びをした。

 日永の祭り前に終わってよかったよかった。

 噂好きな人々が一夜で内容が変わった今回の話を一気に広めるだろうし、こういうのは後に回るものが強い。


 悪いことはするもんじゃないんだよ。良い事より悪い事の方が広まるのは早いんだから。

 そんなことを考えつつ窓から大通りの方を眺めると、今日も大勢の人が何やら楽しそうに歩いているのが見えた。

 うん、今日も平和だ。忙しすぎないほどにお客も来るしいい日だなぁ。


 なんてのんびり背もたれに体重を預けていたら、カランコロンと扉の鈴が鳴った。

 営業スマイルを顔に張り付けて扉の方を向き、いらっしゃいませーと声を出すと見知った顔が現れた。

 常連、ではなく私の友人……知り合い?まあ、友人の一人だ。


「や、久しぶり」

「ああ、久しぶりだな」

「今日はどうしたんです?」

「贈り物を買いに」

「……珍しいですね、うちに来るの」

「花はもう要らんと言われてしまった」

「あっはっは!なるほどぉ。いいものがありますよ、ちょっと待っててください」


 送る相手は聞くまでもないので椅子から立ち上がって奥に物を取りに行く。

 何年経ってもラブラブだなぁ、素晴らしい。

 送る相手も男の人なので華美な装飾はない方がいいだろうけど……ま、そこは送り主に任せますか。

 ウキウキで箱を抱えて戻り、カウンターに広げてどれにするか話し合う。


 あれこれ話しているうちに大分時間が経ってしまったが、楽しかったのでまあいいだろう。他にお客さんも来なかったしね。

 ラッピングしたそれを渡して代金を受け取り、去って行く後姿を見送って満足の息を吐いた。

 そろそろ店仕舞いの時間だし、あとの時間は今日の夕飯でも考えて過ごそうかな。

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