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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
九章「曰く、背に腹は代えられない」
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出発間際 2

 荷物を抱えて大通りをのんびり歩く。

 今日はいよいよ実家に向かう日で、行き方とかはぜーんぶシュッツに任せてるからどっからどうすんのかも知らないんだけど……どっち?こっち?


「てかなんか、騒がしくない?」

「そうだね……見てこようか?」

「ついてく。結局向かう先でしょ?」


 なんか大通りの先が賑やかだ。

 賑やかなのはいつも通りではあるんだけど、いつもの穏やかな賑わいとは違って、なんか事件って感じ。

 なんかあったのかな、なんて思いつつシュッツについて行き、人が逃げてくる方へ進む。


 すっごい逃げてる人がいる。ちょっとしたパニックだ。

 普通に嫌な予感がするけど、でもここを避けて通るってのも難しいんだよね。

 何せ王都の出入り口はこの先だ。ということは、騒ぎの原因は門から入って来た可能性が高い。


「おぉっとぉ?」

「エス様、出国ルートの変更を要請します」

「却下します。違法出国する気かぁ?」

「だってあれの相手は流石に……!」


 大真面目な顔で面倒事を後回しにしようとするシュッツの背中を叩く。

 まぁ、そうしたい気持ちが分からないわけではないけど、王都に入った記録はあるのに出た記録は無いのとか後から絶対面倒臭くなるし、それをどうにかしようとしたら今の数倍面倒臭くなるからちょっとだけ頑張ろ?


 違法なことは出来るだけしない、面倒になるから。ってのがうちの教えでしょう?

 そんなわけでどうにかこうにか出発したいんだけど、大通りの先にはなにやらでっっっっかいモンスターが居る。

 あれを避けて横をすり抜けて……は、ちょっと面倒そう。というか、門が機能してるかも分かんないし。


「さてどうしたもんか」

「ちなみに、中位騎士が二人。他の騎士団は市民の避難誘導してて、上位騎士が向かってきてる感じがする」

「なるほど、時間稼ぎで行けると思う?」

「……多分、難しい」


 ってことは、騎士団が相手をしても無傷ってのは難しい相手か。

 まぁ、何となく分かる。相性が悪いのだ。あれの相手は、魔法部隊とかがする方がいい。

 でも魔法部隊って人数少ないし、戦えるタイプかどうかも人によるし……手が足りないよなぁ、グリヴィア魔法使い少ないから……


 フィンさんが居れば解決するんだけど、見送りにいけないって言われてるから近くにはいなさそうなんだよなぁ……

 なんて悩んでいる間に、ドデカモンスターは大きく吠えて相手をしている中位騎士二人に腕を振るう。

 ジャックさんとグレンさんだ。よく会いますねぇ本当に。


 あれ相手に抵抗出来てるのは本当にすごいと思うんだけど、本当に抵抗だけだ。

 怪我をしないように、防いで逃げて、周りの一般人が逃げる時間を稼ぐ。そんな感じの動きで、とても攻撃に転じられる感じではない。

 あれは多分、長くはもたない。今でも手一杯って感じだし。


「エスティ、あ」

「ん?」


 シュッツが不自然に言葉を切ったので、どうしたのかと思って目を向けたら別の方向を見ていたので、その視線を追っていく。

 そして、同じように「あ、」と声を漏らした。


「ヴァフル爺」

「お嬢様、ご決断を」


 静かに言われて、ぐっと言葉を飲み込んだ。

 多分、こんな騒ぎになったからとかじゃなくて、私がアンシークに来てから初めて実家に帰るから、念のためにと様子を見に来てくれていたんだろう。

 他にも何人かいるんだろうなぁと考えて、背負っていた荷物を地面に降ろした。


 横でシュッツが息をのんで、ちょっと慌てて荷物を下ろしている。

 荷物の方は、多分ヴァフル爺がどうにかしてくれるでしょ。

 そんなちょっとだけ投げやりなことを考えつつ、地面を蹴って走る。向かう先はドデカモンスターの方。今まさにグレンさんに爪を振り上げてるそいつの視界に入ったことを確認して、足を止めた。


「エスティアちゃん!?」


 驚きの声が聞こえるけど、ごめんなさいね、一旦無視します。

 モンスターの方は、予想通りこっちを見た。

 そらそうだろう。私の魔力の方が美味しそうに見えるから、モンスターはこっちに来る。分かってて出て来てんだよこっちは。


 なんて、ちょっと荒れる内心を押しとどめて、声に魔力を乗せる。

 普段はシュッツを呼び付けるのにちょっと使うくらいだけど、今は最大出力だ。

 魔法使いはほとんどやらない魔力の使い方を見せてやる。


「我がエステルノの名において命ず。 排除せよ」


 真っすぐ、こっちに向かってくるモンスターを指さす。

 途端指先に溜まった魔力が放たれて、それがモンスターに当たるのと同時に別方向からの特大援護が三個くらい飛んできた。

 一個はシュッツだから、ヴァフル爺の他に来てるのは少なくとも二人か。


 当たったのを確認して腕を下ろし、横に来たシュッツに軽く合図を出す。

 核は砕いたし、上位騎士が来てるみたいだし、後は任せて大丈夫そうだ。

 さ、実家行くよ~!マジで申し訳ないけど、説明とかしてる時間ねぇんだ!


「エスティア、ちゃん?」

「あ、グレンさん、一個伝言お願いします!」

「え、あ、うん」

「地図、地図の~、よし、この場所!ここ調べてください!」


 驚きを隠せずこっちを見ているグレンさんに、印をつけた地図を押し付ける。

 核を砕くついでに、魔力の流れが変な場所も見つけておいたのだ。

 地図をくれたのはシュッツだった。流石こういう時優秀だよねお前本当にね。


 ほんだばよろしくお願いします!と半ば言い逃げだったが、とにかく言うだけ言って門へ向かう。

 荷物は回収してもらったようで、門の前で手渡されたので背負い直して、どさくさに紛れて正式に王都の外に出た。

 もー、なんでこんなバッタバタになるかなぁ。

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