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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
一章「曰く、悪事千里を走る」
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真意の見定め 2

 グリヴィア王国の王都、その大通りをのんびり歩いて進む。

 本日晴天。現在時刻は午前十時。

 休みをわざわざ使ってルツィオ商会に行ってみようと言い出した私を止めきれなかったシュッツは見えないだけでどこか近くに居るんだろう。


 まあ、私もね、週に一度の貴重な休みを調査だけに使うなんてつもりはサラサラないわけですよ。

 そもそも向かっているルツィオ商会のある一角はいろんな店の集まる区画で、買い物もしないといけないからついでみたいなもんなのだ。

 アンシークはその一角とは違う場所にあるから先代までに作られた縁を切らないためにちょくちょく足を伸ばしている……というそれは今は置いておいて。


「おはようエスティ」

「おはようございまーす」

「今日は休みかい」

「はい。なので買い物です」

「そうかいそうかい……ああ、エスティ、アイラック商会にはいかん方がいいぞ」

「はぁーい」


 先代と仲の良かった町のお爺ちゃんお婆ちゃんに可愛がられている私だが、面倒なことからは適当に逃げるのが基本形だ。

 なのでこのお爺ちゃんにも気楽な返事を返してスキップでもしそうな足取りで通りを進んでいく。

 上着のポケットに片手を突っ込んだままだったのでちょっと印象悪すぎた気もするけど別にいいや。


 もうそろそろ、アイラック商会へのそれは聞き飽きたんだよ。

 舌打ちとかしそうになるから気を付けないと。

 私個人への評価ならどうでもいいんだけど、それすなわちアンシークの評価になるからあんまり悪態もつけないね。


「あ、こーんにーちはー」

「ん?ああ、アンシークさん。こんにちは」


 余計なことを言わないようにテッテケテッテケ小走りに進んでいたら、今日の目的その一に繋がる人を見つけた。

 声をかけて傍に走っていき、にぱっと笑顔を向けておく。

 この人はアイラック商会に勤めている人で、ラング爺さんのランプの取引なんかで関わりがあり、他より声をかけやすいのでここに居てくれてよかった。


 手には箒を持っているので道の掃除をしていたんだろう。

 なんだかちょっとやつれた気がするのは例の噂のせいなのかな。

 あのおじいとかもだけど、それを信じて酷い態度を取る人もいるんだろう。だからなのか私がいつも通り寄って行っただけでものすごく安心したような顔をする。


「今日はどうされたんですか?」

「前に買ったバスケットってまだありますかね?使いすぎて壊れちゃったんですよ」

「確認してきますよ。ここでお待ちになりますか?」

「いえ、ついて行きますよー、お邪魔にならないなら」

「なら一緒に行きましょうか」


 ふわりと笑って歩き始めたお兄さんの後ろを付いて行きながら、背中に刺さる視線に意識を向ける。

 悪意、悪意、悪意、好奇、嘲笑、殺意。

 うーん、穏やかじゃないねぇ全く。

 私に向けられたもの、というよりかは私の態度が変わらないことに対する苛立ちって感じだ。


 ま、何かあればシュッツがどうにかしてくれるだろうから何でもいいや。

 私は今それよりもお気に入りでずっと使っていたバスケットが壊れてしまったことの方が大事なのだ。

 四角くて蓋と取手が付いていて非常に可愛いそれを持ち歩ける小物入れとして愛用していたのだけれど、この前取手がブチィッと逝った。


 あまりの悲しみに思わずお店で声上げちゃったからね。いたの常連さんだけで良かったよ本当に。

 それでも使えるかなぁと思っていたんだけど落ちた衝撃で蓋が変形したし側面がもう切れかけだったしで新しくすることにしたのだ。

 アイラック商会で買ったものだし、ちょうどいいからと探しに来た。なかったら似たようなものを他で探すことになるけど……おんなじのが良いんだよなぁ。


「バスケット、でしたね。蓋と取手のついたこのくらいのものでしたか」

「それですそれです!よく覚えてましたね」

「たまたまですよ。おかけになってお待ちください」

「はぁーい」


 アイラック商会の建物の中に入り、案内された質のいいソファに腰を下ろす。

 相変わらず上品で高級な感じの内装で非常に落ち着きますね。うん。

 なんならお茶まで出してもらっちゃって、うっかりくつろぎ過ぎる感じになりそうだ。

 あのお兄さん、覚えていたのはたまたまだなんていうけれど、自分で対応した客の前回の来店時期とか買っていったものとか大体覚えてるんだよね。


 それもまた商人の素質なのかなぁ。覚えていてくれるだけでちょっとこっちも意識しちゃうよね。

 お茶うめぇー。出してくれたお姉さんもなんかいい香りした。

 でもやっぱりみんなちょっと元気がないというか、疲れてる感じがする。目に見えてってわけじゃないあたりが流石だ。


 こうして実際見ちゃうと腹立ってくるよね。

 私は結構アイラック商会贔屓なんだよ。みんな優しいし、先代もラング爺さんもお気に入りの相手なんだから贔屓もしちゃうよ。

 そう長引かせるつもりもなかったけど、ちょっと急ぎ気味でもいいかなぁ。


「お待たせしました。こちらで合っていますか?」

「あ!それです!あってよかったぁ」

「別の色もありましたので、こちらもご覧になって下さい」

「ありがとうございます」


 お気に入りのバスケット(新品の姿)と対面したことでさっさと終わらせようという意識がちょっと強くなった。

 色は前と同じでいいかな、やっぱりこれが可愛いや。

 そう伝えて代金を払って、綺麗に包んでもらったそれを持って商会を出る。

 さあて次、どこを通って行くのがいいだろう。

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