不穏な噂 3
騎士団が注意喚起に来てから一週間とちょっとが経ち、噂はどんどん広がって、目撃情報の頻度も段々上がってきていた。
シュッツがまだ見れてないって言ってたけど、それでも色んな人の目撃情報によって何となくモンスターの姿は想像できるくらいになっている。
「ん~……だとしても、やっぱり理由は分からないんだよねぇ~」
ぼやきながら目撃された場所に印をつけ終えた地図を眺めて、首を傾げてのんびり考える。
場所は最初に発見されたところから徐々に広がっていて、順調に行動範囲が広がっている感じだ。
どの方向にも同じくらい広がっているから、目的地があるのかどうかは分からない。
「フィンさんはしっかり忙しそうだし、イヴィさんもリリさんの所に居ないくらいには忙しそうだし……」
騎士団魔法部隊が総動員って感じなのにまだ見つかってないのは、相当うまく隠れているのか場所が面倒で進展に時間が掛かるのか。
のんびり考えながら地図を畳んで引き出しの中にしまい、水を一口飲んでカウンターに肘をつく。
私が何かすることはないけど、気にはなるよねぇ。
なんか王都の外壁を全部点検して回るなんて話もあるらしいし、騎士団とか警備の人とかは本当に大変だろう。
モンスターの侵入なんて本当に早々ない事だから、過去の何かしらに従って~とかも無いんだろう。
この間のダンジョンのは、ちょっと特殊だからね。あれは別枠。
さてどうしたもんか、と何をするわけでもないのに考えながら時計を確認して、閉店時間になったので閉店作業に取り掛かる。
今日は最後一時間くらいお客さん来なくて暇だったなぁ。
まぁおかげで作業は進んだから良いけどね。
「さて、と」
店を閉め終わったら、荷物を持って裏の作業台に向かう。
ここからはアンシークとは関係ない作業の時間だ。夕飯はちょっとくらい遅れてもいい。
準備だけはしてあるから、今日はそもそも夕飯に時間かからないし。
作業台の横に建物内での道具の持ち歩きに使っている籠を置いて、台の上に置いておいた箱を開ける。
なーんか兄さんから荷物が届いたんだよね。普段は手紙だけだから、物まで送ってくるのはちょっと珍しい。
それに近々実家で会う予定もあるのに送って来たってことは、何か急ぎの可能性がありそうなのだ。
「なーにかなぁー」
箱の横部分も外れるようになっているようなので丁寧に開けて、中に入っている物を確認する。
……なんだろう、お守り?
でもお守りなら実家から色々来てるし、そっちは実家に任せるって兄さんも言ってたのにな。
手に取ってみても分からなかったので箱の中を再度確認すると、一緒に手紙が入っていた。
流石兄さん抜かりない。物だけ送ってくるどっかの誰かとは大違いだぜ。
なんて、実家から来る荷物への文句をぼやきながら手紙を開いて内容を確認する。
内容は、グリヴィアの王都内でモンスターが出現したことへの心配と、実家に帰るまでの道中の心配と、兄さんが実家に帰る期間の兄さんの仕事場の心配だった。
なるほど、兄さんは心配事がいっぱいなんだね、大変だ。
いつもの手紙が荷物の中に入っているだけ……?と訝しんだところで紙が二重になっていることに気付いたので、二枚目に目を通す。
箱に入れたのは、兄さんが私を心配し過ぎた結果作った、次に会うまで私が無事なことを把握するための道具らしい。
私のためと言うより兄さんの為の道具なので、嫌なら持ち歩かなくてもいいけど出来れば持ち歩いて欲しい、みたいなことが書いてある。
なるほど、兄さんは心配が過ぎてちょっと暴走気味なんだね、大変だ。
「ま、それなら持ってていいか」
兄さんに把握されて困ることも無いし、心配過ぎて暴走してる兄さんを宥めてるだろうリュシアの心労は減らしておくべきだからね。
実家に戻って何かあったら頼るだろうから、万全でいて貰わないと。
これでなんか私がでかめの怪我をしたとかあったら余計に心配かけるだろうけど、まぁそんなことは起こらないでしょう!
なにせモンスターにダンジョンに引きずり込まれても、数日で歩けるようになる程度の怪我で済んだ私ですし!頑丈ですし!
ゴーストハウスはちょっとヤバかったけどね!あれは駄目です!
でももうグリヴィアの中にあんな感じの場所はほとんどないってシュッツが言ってたから、その心配もないでしょう。
残る激やばポイントは本当にヤバそうだけど、アンシークからはかなり遠いから行こうと思って行動しない限り行くことはない。
私は行くことないのでもう本当に関わる事は無いだろう。
調べ上げてくれてありがとうシュッツ、あの地図は大事にします。
「よーっし、ご飯たーべよ」
兄さんの心配の結晶は兄さん召喚用のお守りと一緒の紐に通しておくことにした。
これで落としたりもしないし安心だ。
多分私が持ってるとその時点で発動して兄さんの方に知らせが行くんだろうから、無事に荷物が届いたって報告と持ってるよーって報告がこれで出来てるだろう。
兄さんの心配がちょっとは減ると良いけど、なんて考えながら夕飯の支度をして、明日の予定を考えながらさっさと夕飯を食べて寝支度を整えた。
結局寝る時間とかはいつもと変わんなかったな。




