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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
八章「曰く、月夜に釜を抜かれる」
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山盛りの花籠 2

 店の開店準備をして、開店前に少し外に出かける。

 エプロンは外しているけど店の用事だ。

 向かう先はニレさんのお花屋さん。ちょっと前にお願いしていた新しい花の受け取りが今日なので、ウッキウキで朝から支度をしていたのだ。


「ニーレさーん」

「はーい。おはようエスティ」

「おはようございます!」

「ご注文の品、出来てるわよ」

「やったー!」


 奥から出てきたニレさんが笑顔で見せてくれたのは、溢れんばかりの花が飾られた籠。

 こんな感じが良いです~とざっくりお願いしていた通りの出来で、思わず小さく拍手までしてしまった。

 ヤッター!カワイイー!


 はしゃぎながら代金を払って花籠を抱え、手を振ってお店を後にする。

 へっへっへ……これを出窓の所に飾るんだ……そのためにもう他のセッティングは終わってるんだ……

 ちょっと色味弄らないとかなぁって思ってたけどその必要もなさそうだし、さっすがニレさん!完璧!美人!優しい!最高!


「ふんふんふ~ん」

「ご機嫌ねぇ、エスティ」

「はい!見てくださいこの可愛い花籠」

「あら綺麗。お店に飾るの?」

「そうです!」


 あまりのご機嫌具合に知り合いが声を掛けて来て、微笑ましそうに去っていく。

 でも今の私はどんなに微笑ましそうに眺められても構いやしないのだ。何せこんなに可愛い花籠を抱えているからね!


 ご機嫌なまま店に戻って、花籠を予定通りの位置に飾って一度外に出て見え方を確認する。

 ……うんうん、いい感じだ。籠の持ち手にリボン付けようかな。

 色は緑にして、花を邪魔しないようにして……下に敷いたレースの敷物の角度をちょっと変えて、これでどうだろう。


「完璧では!?」

「あ、店長さん。おはようございまーす。まだお店開いてないですか?」

「おはようございまーす。今から開けますよ。……これどうです?めっちゃ可愛くないです?」

「え、可愛い!」


 外ではしゃいでいたら常連の子が来たので、店を開けて中に入ってもらう。

 開店準備は終わってたからね、開けようと思えばすぐに開くのだ。


「今日はどうされました?」

「えっとね、プレゼントの相談をしたくて……」

「あら、何にも決まってない感じです?」

「うん……あんまり目立つのにはしたくないんだけど、身に着けられるものが良くて」


 彼女がプレゼントを探しているのは珍しい事じゃないけど、何も決まってないのは珍しい。

 普段はどういう物が欲しいかは決めてから来るから、今回は相当悩んでいるみたいだ。

 ……もしかして特別な何かがあるんだろうか。ちょっとウキウキしてきちゃったぞ?


「今回も青ですか?」

「……どうしよっかなぁ。赤の方が、付けてても違和感ないかも」

「珍しく弱気ですねぇ」

「実はね、渡すの、最後になるかもしれないから」

「えっ、なんかあったんです?」

「んー……単に向こうが忙しくなるから?今みたいに会えなくなるし、あんまり渡しても困らせちゃうようになるからもう渡せないなって」


 道理で弱気な訳だ。

 カウンターに寄りかかって小さな声で呟く彼女の頭を撫でて、そうですねぇと緩く声を出す。


「いつ渡すんです?」

「花祭り。一緒に行くから」

「ならあと二週間はありますね。んー……最後ならむしろ、貴女が普段着けてるようなものを渡したりはどうです?」

「えー……それだと違和感ない?」

「違和感あるくらいでいいじゃないですか。最後だって決めたのも貴女のエゴみたいなもんですし、これで最後って渡すんなら自己主張しないと」


 何が良いだろうかと考えつつそんなことを言って、とりあえず顔を上げさせる。

 どうあれ悪い方向にはいかないだろうって確信が私にはあるのだ。

 なにせここまで思い悩んでおきながらこの子たち絶対両思いだもん。任せろ私の確信は強いぞ。


「彼女の好みで、貴女の色です。そのくらいがちょうどいい」

「店長さん今回はやけにはっきり言うね?」

「言わんと私まで後悔しそうですからね」

「……ちなみに、どんなのが良いと思う?」

「そうですねぇ、透き通るような……ガラス系がいいんじゃないです?」

「あぁ~……そうだね、似合いそう」


 想像したのか、やっと笑った顔を見てこっちまで嬉しくなる。

 そうそう。プレゼント探すのに暗いままじゃ何も見つからないからね。

 んで、ガラス系かぁ……ガラスで綺麗なのって言ったらやっぱり……


「よし、アルト呼ぶか」

「ねぇまって、もしかしてアルト・ヴェルカーの事言ってる?」

「そうですよ。あいつ私が呼んだら来ます」

「仲いいのは知ってたけどさ、そんな気軽に呼ぶ?」

「呼んでいいよって言われてますからねっ!直通連絡魔道具もあります」


 言いながら連絡機を手に取ってアルトを呼び付け、カウンターに向き直る。

 あっ、頭抱えちゃってる。ごめんね、そういえばあいつ割と有名なんだったね。


「店長さんって凄い人と知り合いなこと多いよね……」

「アルトに関しては知り合ってから有名になりましたけどね」

「滅多に出てこない人なのに……」

「うちの店には毎月来ますよ。用事無くても来ますよ」


 あいつ、実は国内のガラス細工の大会で優勝してたり特別賞取ってたりするから、結構有名だし作品を欲しがる人も多いのだ。

 うちに卸してる分は名前明かさないでって言われてるからバレてないけど、バレたらいっぱい人来るんだろうなぁ。

 今でも普通にいっぱい人くるもんなぁ。

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