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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
七章「曰く、暖簾に腕押し」
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紫の花 2

 騎士団採用試験から二日ほどが経ち、それ関連の仕事は後はもううだうだ言いながら書類を纏めるだけになったので、私は今日も元気にうだうだ言いながらカウンターの内側で書き物をしている。

 面倒くさいよぉ~……ブローチのデザインとか、楽しい書き物を先に終わらせちゃったからもう後は面倒くさいのしか残ってないよぉ~……


 なんてうだうだ言いながら書き物をしている私を見て笑いながらアムは去って行ったし、シュッツが来て何やらオドオドしていたからフィンさんの話は大体盛りすぎてて嘘の域だと言ったらメモ帳とペンを買って帰って行った。

 今度は何を聞いたんだろうね。シュッツはあれで嘘とか気付くタイプなのに、なんで毎回フィンさんには騙されるんだろう。


「……あ、足りないじゃんこれ……後一枚どこいったの?」


 ぶつくさ言いながら足りない書類を探して引っ張り出し、書き込んでインクを乾かす。

 なんだかんだ言いつつも今日は中々進みがいい日だ。これなら思ってたより早く終わりそう。

 元々次の定休日までには~って思ってたんだけど、明日にでも終わりそうかな?


「大変そうだね」

「どわぁ!?びっくりした!ちょっとフィンさん、ちゃんと扉の鈴鳴らしてください!」


 書類作業に割と集中してたとはいえ、流石に扉の鈴の音を聞き逃したりはしない。

 と、いうことは。フィンさんがまた悪戯心を発揮させて、鈴が鳴らないようにして中に入り込んできたのだろう。

 普通にびっくりしたし椅子の上で跳ねちゃったし、これでインク瓶倒してたらどうしてくれるんですか全く……


「あ、というかシュッツに妙な事言わないで下さいよ」

「何て言ってた?」

「やたらキョドってました」

「ははは。あ、ガラフネの飾り羽ある?」

「ありますよ。何色ですか?」

「赤。あとは……マンド石」

「はーい」


 インク瓶の蓋を締めて、ご注文の品を取りに店の奥に入る。

 魔法部隊の使うものは専門店じゃないと買えないようなものも多いんだけど、アンシークには何故かしっかり在庫があるのだ。

 多分三代目辺りが仕入れルート作ったんだろうな、って先代が言ってた気がする。


「マンド石、お好きなのを選んでください」

「こんなにあるんだ」

「増えるんですよ、たまに」

「まぁアンシークに置いといた方が安心ではあるからねぇ……これとこれ貰って行こうかな」

「はぁ~い」


 石の入っている箱ごと店の方に持っていって、確認してもらって選ばれたものを小箱に移し替える。

 布の敷かれた仕切り付きの箱は後で奥に戻しに行くとして、飾り羽も品質に問題が無い事を確認してもらってから包んで値段を確認した。


「えーっと、ガラフネの飾り羽が一枚、マンド石が二つ……二万六千コルメですね」

「はーい。……エスティ、今度の休み暇?」

「先代のところに行ってこようかなぁって思ってるくらいですね」

「じゃあその後ご飯行こ。新しく出来たお店行きたいんだ」

「お、どこらへんです?」


 話しながら代金を受け取り、おつりと商品を渡して帰っていくフィンさんを見送った。

 待ち合わせ時間をメモに書いておいて、出してきた石のケースやら何やらを片付けたら書き物に戻る。

 ……でもまぁ、戻る前に一回休憩にしてもいいよねっ!


 流石に飽きた。一回中断されたし、ちょっとやる気ない。

 はぁ~……デート中のカップルとか通りかからないかなぁ~。

 なんて思いつつ窓の外に目を向けると、大通りではあちこちで紫の花が咲き誇っている。


「春だねぇ」


 思わずぼんやり呟きながら眺めちゃったけど、ここからグリヴィアは一気に暑くなっていくんだよなぁ。

 春の心地良い気温が続いて欲しいのに。冬が好きだから、私としてはなんならこのまま冬にもっかい戻ってくれたっていいのに。

 なんてぼんやりしていたら、扉がカランコロンと音を立てて開いた。


「いらっしゃいませ~」

「こんにちは」

「あらライナちゃん。こんにちは」


 営業スマイルを向けた先に居たのは常連の女の子だった。

 他に人が居ないことを確かめて歩いてくるので広げかけた書類を見えない位置に避けて、彼女がアンシークに来そうな用事をいくつか脳内に並べる。


「プレゼント、どうでした?」

「喜んでくれたわ。……これはお礼。個人的なお願いも聞いてもらったから」

「あらまぁご丁寧に。そんなに気を使わなくて良いんですよ?」

「私がしたかっただけよ」


 カウンターの上に乗せられた紙袋を回収して、ちょっとだけ中身を確認する。

 ちょっといいところのクッキー詰め合わせだ!やった。

 ライナちゃんの選ぶものに外れは無いからなぁなんてウキウキしながらカウンターの内側にそれを置いて、まだ何か言いたげな彼女に目を向けた。


「さて、今日は何をお探しですか?」

「……学校の、友人と観劇に行くことになったのだけれど、いつもの服では、気を遣わせる気がして……」

「なるほど。一般席ですか?」

「ええ」


 ライナちゃん、お嬢様だからな。

 普段は観劇にしてもいい席が用意されるんだろうし、一般席は初めてだったりするんだろうか。

 そんなライナちゃんがわざわざ一般席で観劇するってことは一緒に行く子が一般家庭の子なのだろう。


 んで、気を遣わせたくないから、いつものお嬢様っぽいカッチリした服じゃない物を選びたいのか。

 ……可愛いねぇ!本当にお友達大事にしてるんだからこの子は!!

 任せろ私にはシュッツがくれたこの春のトレンドメモがあるからね、一緒に考えようねぇ!

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