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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
七章「曰く、暖簾に腕押し」
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紫の花

 拍手喝采の会場内を眺めて、無事に最後まで進んでブローチの譲渡で盛り上がる入団試験が終わる前に移動を始める。

 アムには声を掛けたけど、このまま最後まで見ていくらしいから集合場所だけ決めておいた。

 向かう先は関係者だけが立ち入れる一角だ。


「こんにちはぁ。お疲れ様で~す」

「おうエスティ。お疲れさん」

「どのくらい余りました?四?」

「四か五か……ま、そんくらいだな」


 知り合いの騎士団員に声を掛けて、進められるまま椅子に腰を下ろす。

 入団試験でのアンシークの仕事は全部ブローチ関連で、これもしっかりブローチ関連のお仕事だ。

 毎年変わるブローチのあまりを回収して、作成している職人さんの所に返却するのである。何個かは記録とか見本とかの為に回収されるんだけど、それでも毎年余りは出るからね。


 足りない方が困るから、ちょっと多めに作るのが基本だし。

 元々は騎士団が余った分も回収して管理してたんだけど、ブローチを持ってれば正騎士だ!って盗まれたり不正使用されたりがちょっとあったらしくって、それ以降は職人さんの所に返されてるんだよね。

 んで、職人さんと騎士団の間に入って取引をしているアンシークが返却まで担当するようになった、と。


「あ、エスティだ。やっほー」

「こんにちは。お疲れさまでーす」

「お仕事?今年はそれだけじゃないよね?」

「まぁ、面倒事の処理もしておかないといけないですよね」

「んはは。まるっきり脈無しじゃ~ん。そんなこったろうと思ってたけど」


 後ろから腕を回して抱き着いてきた騎士団のお姉さんと戯れていたら、大きめの咳払いが聞こえて来てお姉さんが離れていった。

 お仕事中だったんですね、まぁここにいるんだからそりゃそうだけども。

 上司に睨まれても全く気にしていないお姉さんが手を振って去って行ったので手を振り返して、ため息を吐いた上司の方に向き直った。


「お疲れ様です。今年は豊作でしたね」

「あぁ。皆真面目に訓練に励んでいた成果がよく出ている。今年受からなかった者たちも、来年には実力が足りるようになるだろう」

「型は綺麗なのに模擬戦で落ちちゃった子もいましたねぇ。あの子惜しい感じです」

「あいつは、緊張さえどうにかなればすぐにでも正騎士になれるだろうが……そのあたりは個性だからな。騎士を諦めるようなら、別の部隊にでも誘いたいところだ」


 この人は見習い騎士の訓練官でもあるから、試験の感想を話す相手としてはとってもいい感じ。

 気分のままに感想を喋っていても相槌を打ってくれる良い人でもある。仕事中とか訓練中とかはすっごい厳しいらしいけどね。

 私はアンシークのお嬢さんとして昔から甘やかされているから、欠片の苦手意識も無い。騎士団の人みんなそんな感じ。


「アンシークさん、話したいという人が……」

「あ、面倒事だ。今行きまーす」

「……エスティア、嫌なら行かなくてもいいんだぞ?」

「面倒事はさっさと片付けないと、今後こじれる可能性があるので。……あ、でも可能なら後ろから圧だけかけといてください」

「分かった。同行しよう」


 皆苦笑いなんだけど、もしかしてみんな知ってるの?なんで?

 まぁ、結果として上官が付いてきてくれることになったしいいか。いい加減ここですっぱり話を終わりにして、今後には一切の流れを持っていきたくないからね。

 あんまり長引くと別の面倒ごとに発展しそうだし、お互いの平和のためにも、ね。


 なんて考えながら先導してくれる騎士団の人について行き、道中で営業スマイルを顔に張り付ける。

 ちょうど移行中にすれ違った知り合いがビクッてしてたんだけど、そんなに怖いかね?笑ってるだけよ?

 ……営業スマイルが怖いのは問題なのでは?今までそんなこと言われたことないんだけどな……


「あ、エスティアさん!」

「はいこんにちは」

「俺、正騎士になりました!」

「おめでとうございます」


 なんかギャラリー多くない?見えない位置ではあるけど、確実に聞こえる位置で立ち止まってる人が何人もいるんだけど。

 ……フィンさんに至っては隠れる気も無くこっち見てるし。笑ってるし。あぁ、また面白おかしくシュッツに連絡するんだろうなぁ……

 あんまり誇張されると、半泣きのシュッツが生存確認に来るからほどほどにしてほしい。


「エスティアさん、好きです!付き合ってください!」

「ごめんなさい」

「あっははははは!」

「うわうるさ。びっくりしたぁ」


 勢いよく頭を下げながら差し出された手に対してノータイムで頭を下げたら、フィンさんが爆笑する声が響いて普通にびっくりした。

 なんですかもう。……笑いすぎて泣いてる……!?そんなに面白かったんですか今の。

 えー……どこにそんな爆笑要素が?ハンカチ使います?


「俺は何が足りないんでしょうか……」

「足りないっていうか、そもそも知らんです。あと私誰かと付き合う気とかないので、そもそもの問題ですね」

「くっ……ふ……ヒィ……」

「フィンさん大丈夫です?息できてます?」


 なんか立ち聞きしてた人たちもがたがた物音立ててるんだけど、大丈夫かな?

 なんて考えている間に見習い……もう正騎士か。まぁいいや。見習い君は他の人に連れられて行ったので、見送って上官さんを見上げる。

 ……とりあえず私、ブローチ回収して帰りますね?

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