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エスティア・アンシークのそれなりに楽しい日常  作者: 瓶覗
七章「曰く、暖簾に腕押し」
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入団試験 3

 入団試験が進行していくのを眺めつつ、アムが外の屋台で買ってきたものを一緒につまむ。

 お祭りの屋台での定番から初めて見るようなものまで色々あるんだけど、屋台巡りの時間はそんなに長くなかったのにいつの間にこんなに買ってたんだろう。


「あ、移動販売のお姉さんだ」

「まだ買うの?」

「飲み物欲しい」

「それは確かに」


 客席の間を歩いてまわっている移動販売のお姉さんに声を掛けに行ったアムの背中を見送って、視線を中央のステージに戻す。

 お、あの子も一次試験通過してる。今年は豊作だねぇ。


「エスティどっちがいい?ベリベリベリーとリンゴ」

「べり……なんて?」

「ベリベリベリー。三種のベリージュース」

「リンゴがいい」

「はいよ~」

「ありがとーう」


 差し出されたジュースを受け取って、横に座り直したアムが向かいの客席をジーッと見ているのでつられてそっちに目を向ける。

 なに、誰かいたりするの?全然分かんないんだけど。


「ヴァフル爺が来てる」

「え、どこどこ?」

「ちょうど正面。気付いて手ぇ振ってるよ」

「見えない。ヴァフル爺アピールして。……あ、いた」


 向かい側の客席にいるらしい爺が全く見えないので、見えるようにしてもらう。

 呟いた直後に私たちにだけ分かるように杖を小さく点滅させるお爺ちゃんが見えたので、手を振っておいた。わ~、ヴァフル爺久しぶり~。楽しんでるぅ~?

 なんか時々来てるらしいんだけど、私の所には顔出してくれないから会えないんだよね。


 多分私が気付かないところから観察して帰ってるんだろう。

 シュッツの方には行ってるのかなぁとか考えつつ、杖の点滅が消えるのと同時に姿も霧に包まれるように消えてしまったヴァフル爺の行方をちょっとだけ探して、無意味なので諦めてステージに目を戻す。

 あら、いつの間にか試験が次の段階に行ってる。


「今年はごたごたも無くて順調に進んでるねぇ」

「去年凄かったもんね」

「ね。あれってあの後どうなったの?」

「勘当同然の扱い受けて、辺境の軍部とかに行かされたらしいよ」

「おわぁ~。大変じゃん」


 去年の入団試験は、途中で面倒事が発生してそれが落ち着くまでちょっと時間が掛かったのだ。

 面倒事自体はたまーにある感じのもので、不合格になった見習い騎士がその結果を受け入れずに暴れたり泣きわめいたりするってだけなんだけど……いやだけってもんでもないんだけども。

 それでもまぁ数年に一回はあるようなそれがやたらと規模の大きい面倒ごとになったのは、去年結果が不服だとわめき散らかしたのがとある貴族の息子だったってのが理由。


 後から聞いた話だと、そもそも騎士団に入るのも本人は不服だったのに、父親に言われて見習いになったらしい。多分社会勉強とかも含めてのことだったんだろうね。

 んで、騎士団は上位騎士とかはかなり華やかだし見栄えも良ければ名誉もあるので、騎士になることに関しては本人も最終的には受け入れたらしいんだけど……騎士団は平民出身者が多いから、見習いの時から威張り散らかして訓練もサボりまくってたらしい。


 そんなんしてたら当然なんだけど、ものの見事に入団試験には落ち、その結果に対してわめき散らかした結果上位騎士が出てきたり魔法部隊が覗きに来たりと結構な騒ぎになったのだ。

 そして最終的には父親が血相変えてやってきて、馬鹿息子が!と頭ひっぱたいて家に連れて帰って、騎士団見習いもやめさせたと。

 頭ひっぱたいて連れて行った貴族様が普段は本当に穏やかな人だったってのもあって、しばらく話題になっていた。わざわざ騎士団に謝罪にも行ったらしいからね。


「エスティはそれ誰に聞いたの?」

「フィンさん。その馬鹿息子が行った辺境の軍部に知り合いが居るんだって」

「顔広いねぇ」

「ねー。あ、噂をすればフィンさんだ。見回りかな?」


 いつも通り移動用の円盤に乗って、上から会場を眺めているフィンさんを見つけたので手で示す。

 ローブすっごいたなびいてるけど、大丈夫かな?まぁ大丈夫なんだろうけど、風が強そうだとちょっと心配になるよね。


「移動用の魔道具って色々あるけどさぁ、片足しか乗らないのってほとんどないよね」

「単純にバランス取れなさ過ぎて需要ないらしいよ」

「あの人なんでそんなの使ってるの……?いじめ?大丈夫?」

「フィンさん魔法部隊の中でも有能だからちょっと浮いてるらしいけど、虐められるような人じゃないから多分大丈夫。小さい方が持ち歩きやすいんだってさ。いっつもローブの内ポケットに入れてるし」

「あぁ、なるほど。箒とかだと簡単だけどかさばるもんね」


 話している間にフィンさんはそのままふわふわ飛んでどこかに行ってしまったので、それを見送ってついでに会場を見渡す。

 大分客席も埋まってきて、そろそろ大詰め、みたいな気配がちょっとだけ出て来たな。

 まだもうちょっと続くけど、まぁここら辺から楽しくなってくるもんね。


 人の増加に伴って見回りと警備の騎士たちも増えてきたので、念のため手元に入場チケットを用意しておく。

 アンシークは騎士団の常連さん多いから大丈夫だとは思うけど、念のためね。

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