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ありふれたお話で世界最強?

 

 光が収まった時に見えた女性の言葉に咄嗟に出た言葉、それは心の底からの声で、ある意味助けを求めている声でもあった。


「重ねて問おう。汝らが私を召喚したのだな?」

「いいえ違いますそこのファティーグビーのクイーンを倒したから貴女が出現しましたなので事故です帰って下さい」


 再度の質問に俺ってこんなに舌が回ったっけ?と思うような早さで答えがすらすらと出た。多分人生で初めてここまで舌が回ったな。


「では何故、私はここに呼ばれた」

「知りません知りたくないです知ったら後戻りでき「ピコーン」…チクショウ!」

『special mission!!!!!

 発生条件:異世界召喚が行われるタイミングで意図的な召喚を行う事。

 達成条件:度重なる異世界召喚で疲弊している彼女を守りながらクリスタルキメラを倒そう。

 報酬:神話級女性用装備一式×六、???』


 もう嫌になる。


「む!この強大な気配はSランククラスか!?」


 猛スピードでこっちにやってくる気配。視ればクリスタルで覆われた、今の制限されてるステータスじゃどうやっても勝てないだろう敵。

 もう嫌になる。


「ここは任せてくれ。何とか時間を稼ごう」

「はぁ。ったく仕方ない」

「タクミ!そうよ逃げるべきよ!これは私たちの手に負える敵じゃないわ!」

「そうだ!早く逃げてくれ!」

「あー、とりあえず『黙れ』」

「「……」」


 イライラする。なんだか久しく感じて無かったが、このどうしようもない感情は怒りだ。自分が侮られたから?違う、むしろ本気を出さずに済めば万々歳だ。実力を否応なしに出さないといけない事?違う、組合の人間がいたならともかくコイツらなら大丈夫。じゃあ師匠の無茶振り?違う、それこそもう慣れた。これは、


「先ずそこの女。お前は美鈴、そこの浮いてるちっこいやつと一緒にレーツェルに守ってもらえ。レーツェル頼む」

「了解よ」

「な、何を」

「そうよ、こんな敵じゃアンタ」

「謝罪しとくよ。すまんな、騙した様で。実は俺は…」


 キメラが姿を現してチャンスだと思ったのか襲いかかってきた。俺はそっと手を伸ばして、触れる。


破鋼(はこう)


 その瞬間キメラののしかかる体重を受け流し、クリスタルで覆われた全身を破壊する。そしてお互いに吹き飛ぶ。直ぐに木を足場にして衝撃をすべて受け流した。元の位置にジャンプして戻り言葉を紡ぐ。


「俺はバケモノなんだよ」


 これは一人の少女に課せられた悲運に怒っているのだ。視れば分かる。精神が摩耗して、それでもなお頑張るその姿勢。気丈に振る舞い、己が折れない様に必死になって足掻く姿。まるで血みどろの中でもがいているかの様な姿を幻視する。コイツは早死にするタイプだ。しかも周りからは理解されない辛さを持ったまま。


「グルルルゥ」

「もう身を粉にせずとも怒らん。もう泣いても怒らん。もう己に嘘をつかなくても良い。みんなの為だと自分を偽って生きなくても良い。だから!…今は安心してそこに居ろ」

「……」


 それ以上は何も言わずに吹き飛んだキメラに近づく。多くの言葉は要らない。これで、八つ当たりができる。

 身体を滑らせる様にしてキメラに近づき、顎を殴りつける。ドゴンッと大きな音が鳴りキメラの体が浮く。クリスタルで覆われた鋭い前足を伸ばして攻撃をしてきたが、全身を使い前足を引っ張ってキメラを一本背負い。そしてその全身の動きの勢いのまま主軸としてた右足で首に蹴りを追撃する。無論単なる蹴りでは無く、


「グガアアアァァァア!?!?」


 浸透頸と言われる類の技だ。首を破壊する手応えと、首をへし折られた事で超速再生をするキメラ。怒りの咆哮と共に尾の蛇がブレスを吐こうとした瞬間、キメラの首を蹴り一気に蛇の尾を引きちぎる。ブレスの代わりに血が蛇の口から出る。「あ、これは」と思った瞬間手に持っていた蛇部分は砂のようにサラサラと消えた。そして同時にキメラの尾の部分が蛇の形をとって再生した。

 痛みを紛らわせるつもりなのか後ろ足で俺を蹴ろうとしてる体勢のキメラの足。対処は簡単。足の勢いよりも強い力で殴れば、


「グギャァアアア!?!?」


 足の骨はすべて破壊した、と思う。感覚的な話なので確証は無いが粉砕できたはずだ。再度の悲鳴をあげるキメラを見ながら、「まあ再生するだろうがな」と思う。ではどうするか?簡単な話だ。その前にトドメをさす。その場を大きくジャンプしてキメラの上に跳ぶ。


「いい加減死ね。虚無術・通り道」


 空中に結界を張り、それを足場にして心臓目指して移動すれば心臓部までの道が()()()()

 虚無術・通り道。それは攻撃を通る部分を全て消し去る技。魔力、氣、呪力など色々な力を重ねて強制的に押し出して通り道を作る事を強制する技。まあ「技」と言うにはちょっと強引だが、そういう(モノ)だ。他人からは右手から黒いビームが出たかの様に見えただろう。


 さて、まだ消えて無いのは何故か?死んで無いのか?…む?


『special mission clear!!!!!

 発生条件:異世界召喚が行われるタイミングで意図的な召喚を行う事。

 達成条件:度重なる異世界召喚で疲弊している彼女を守りながらクリスタルキメラを倒そう。

 報酬:DRポイント500、神話級女性用装備一式×6、隠遁のローブ』

「なるほどね。ドロップ品も出現したし、キメラの死体も……うん、消えた。ミッション完了ってことか」


 クリア画面を見ながらレーツェルが守ってくれてる二人の元に向かう。そして確認を終えて二人をみれば、片や呆けていて、片ややっぱりかと納得している顔をしている。少しはそこの召喚された女性を見習って驚いたらどうだ?と思いながら近づいていく。


「やっぱり君は実力を隠していたね?」

「まあな。さて……うむ、これやるよ」

「これは?」

「今回のミッション報酬だ。サイズ変更からステータス上昇までなんでもござれって感じの逸品だ」

「おお〜下着まであるよ。こりゃ女性用だね…ふむふむ、こうすると効果付与(エンチャント)出来たはず〜♪」


 何やら納得した様子で下手な鼻歌をしながら魔法をかけている美鈴をおいて、召喚されてしまった哀れな女性に声をかける。


「大丈夫かな?まあレーツェルが守ってくれてたから問題は無いだろうけど」

「……え、ええ。傷一つ無いです。あなたは一体」

「俺は…まあ通りすがりのバケモノだ。と言いたいが、「ダメよ」ま、そんなわけで君の保護者って言う感じがピッタリかな?」

「それなら良いわよ」

「そういう訳だ。君の保護者ってことで」

「は、はあ」


 本音では知らんフリを決めてその場を去たかったが、レーツェルが許してくれないので保護者を名乗り出ることにした。なんせステータスには強いだろうが女性で常識を知らない可能性がある。悪い人間に負けるとは思えない強さだが、法には負ける。彼女を守れる人が必要だろうよ。

 そして更に言えば現状を把握しきれてる訳じゃ無いのだ。お互いの認識をしっかりとすり合わせ、持ちつ持たれつの関係を築いていきたいと思っている。まあ今だと俺の負担が大きいが。

 と、そんな内容の事を話していく。


「――とまあこんな感じに考えてるよ。もちろん君が承諾するならって前提付きだけど」

「……私は、私は何を対価に差し出せば良い?私は戦う事しか得意じゃ無い。色んなことをしたが出来はお世辞にも良いとは言えないぞ」

「戦えればいいさ。事情があってな、表立ってさっきくらいの力は使えないんだよ」

「なるほど。ならばこの力なんとでも使うと良い!」

「…へ?」


 召喚されてしまった女性からゆったりと光が飛んできたのだが、その光からは危機感知が反応はしなかったし、何よりレーツェルが何も言わなかったので受け入れたのだが、受け入れて分かったその光の正体に驚く。契約魔法だったのだ。それも隷属魔法と言われる分野にまで及ぶ。

 契約魔法は双方の同意の上でしか結べないが、例外的に隷属魔法にも属する隷属の魔法は相手が受け入れた場合のみ、隷属される側がある程度の条件を元に隷属可能なのだ。今回は俺が光を受け入れたという行動が、この女性からの隷属条件を満たしたと判断されたのだろう。

 美鈴との契約魔法も似たような気軽さで行われたが、あれは意外にも俺が受け入れる条件が難しい。先ず魔力を薄くし魔法を受け入れやすくする。そして言動で許可を出す。無意識のうちに防御する精神防壁を無くす。と存外こちらも負担を負っていたのだ。


「これは知っててやったのか!?」

「私はあなたの奴隷となる、だろう?知ってたとも。それに打算の上でもあるのだ。あなたは私の衣食住を最低限保障して、私はこの世界での立場を得る。これが条件だからな!」

「そんな事はわざわざ魔法で縛らずともやってやる!それにこの条件だと双方の同意が無いと貴女は一生奴隷なんだぞ!?」

「分かってるとも。だが私の数多の戦場を駆け抜けた直感が言っている。あなたについて行けば最悪は訪れないと」


 それ以上、俺は何も言えなくなった。覚悟が決まってる目をしている、直感は侮れないのもある、だがそれ以上に俺自身が乗り気なのに驚いてるからだ。

 自分で言うのもなんだが俺は基本的に他人には無頓着だ。どうなろうと知った事ではない、そう本気で思っている。まあ友好だと判断すれば違うが。だが今回はそのどちらでも無い。無頓着とは言い切れないし、友好だと判断した訳でも無い。ただ助けようと思っているだけなのだ。

 そして自分に戸惑いを覚える中ふと、思い出した事がある。それは既視感だ。美鈴との契約を揉めた時にも感じた既視感。特に気にしなかったが今ハッキリと分かった。あの少年だ。あの英雄の素質を持った、悲劇に見舞われる事が運命付けられた少年。


「……ああチクショウ。分かったじゃねえか。分かっちまったじゃねえかよ」

「?」


 分かった。分かってしまった。あの少年の様に英雄の素質を持ち、悲劇に見舞われる事が運命付けられた女性。おそらくはもう英雄としての才能は開花しているのだろう、悲劇に幾度も見舞われたのだろう。だからこそ、だからこそ…ここまで俺は乗り気なのだろう。

 クソったれだ。もう何処にも否定する、この女性の面倒を見る事を拒否する材料はない。何よりその覚悟を否定したくない。先にも感じた様に精神を磨耗しているのは……運命付けられた悲劇に幾度もあったのだろうな。


「………分かった。お前を受け入れよう、名前は?」

「シルヴィア・ノーブル。過去十二回の勇者召喚に選ばれて十回は魔王を倒し、四回はランクSモンスターを単独討伐し、七回は聖剣を入手し、一度は神剣を入手した。うち十回は国に裏切られたが」

「だろうな。お前は良くも悪くも擦れ過ぎている」

「……分かるのか?」

「分かるとも。お前の体験した話なぞ飽きるほど見たし経験しているさ。飽きるほど、という表現が正しいかは分からんが」

「それは…」


 魔王を倒す。高位の存在を討伐する。選ばれし物を入手する。そんな事は農民に生まれてモンスターに襲われて死ぬくらい、ありふれた話だ。そしてその後切り捨てられるのもセットでな。実にくだらない、実に愚かしい、そして実に人間らしい話だ。まあ人間でなくともあった話だが。



 あれは今ではくだらないと唾棄するだろう過去世だ。

 どこにでもいそうな少年が何のパレードかも分からないがそこに居た英雄に憧れ、ひたすらに修練を重ねていた。ただの修練では無い、気がおかしいと言われるレベルの修練だ。毎日毎日雨だろうと嵐だろうと関係無く続けた。その少年の様子に大人は驚き、親は見守った。そして青年と言われる年齢になる前の事、村がモンスターに襲われた。

 少年が獅子奮迅の活躍を成し、親もまた少年が青年と言われるようになる時に冒険者として出る事を認めた。青年となった少年はモンスターを倒す集団に入って自分を成長させていった。そこでも修練をしっかりとし続けていた青年はいつしか「気狂い」などと呼ばれる様にもなった。しかし青年は気にしなかった。

 とある日に危ない事で有名なモンスターが街にやってきました。青年はまたも大活躍、見事にモンスターを倒してしまった。そう、倒してしまった(・・・・)のだ。真実は当時の王子が颯爽と倒す序章としてワザとそのモンスターを放っておいたのだ。街が一つ犠牲になる事でより一層の話の美化をしやすくする為に。

 そこで一計を案じた者がいた。当時の宰相だ。褒めて首都まで来させ謁見をさせ、王子と戦わせる。渡すのは王子にはしっかりとした物を、青年にはとある仕掛けをした物を渡して戦わせたのだ。結果青年は見事にやってしまったのだ、王子を傷つかせる事を。そしてこれを問題として青年は捕らえられた。

 その後語られるのは「青年が街を守ったのはヤラセだ」といった内容だ。そして当時敵対勢力だった者たちの一人をモンスターテイマーに仕立て上げ、高名なモンスターを倒すことで皆の関心を買い、王子を殺すつもりだったとも。気狂いなどと言われてたのも一役買ってしまった。

 結果青年は嵌められ、捕まった。だが物語はこれで終わりでは無い。青年が囚われていた場所には怨霊がいた。それも青年が倒したモンスターなぞ比べるのも烏滸がましい程の力量差だ。怨霊の力に囚われた青年は本当に気を狂わせ、暴れ国を滅ぼし、自らの手で守った街も、故郷をも壊した。



 そんないつの時代でも、何処にでも、ありふれたお話。中には地獄の底から這い出て世界を救うなんてどんでん返しもあったが、アレは比較的珍しいパターンだ。そして決して無い訳でも無い。中でも神様まで出張ってくるケースもあったが、それはそう多い事ではなかったな。

 何故そんな話をしたって?この話が俺が権力者を嫌うきっかけとなったからだよ。世界を敵に回す事も幾度もあった。こと愛を巡る話となればとんと少なくなるが、王道(テンプレ)はかなりの数こなした(?)からな。この手の話の経験から他人のことを予想するのはそう難しくは無い。

 だが今回はその権力者を味方に、ないしは敵にしない事をしなければならない。経験が少なく、とんでもなく面倒だし苦手だが頑張る他あるまい。俺は所詮経験を積むことでしか理解が及ばない生き物なのだから。周囲に物事をよく知っている者が居れば別なのだが、そうそう旨く事は運ぶまい。…ん?


「……いや待てよ?フギンとムニンにどうにかしてもらうか?」

「?…もしや主人よ、それは私以外にも奴隷がいるという事か?」

「ああ違う違う。使い魔だよ。神話の生き物だが」

「???…ならばいいのだが」

「?」


 コイツは一体何を考えたら奴隷が他にもいるという思考になるのかさっぱりわからない。まあいいか。ちゃんと計画を詰めていかないとな。早速フギンとムニンに話を通しておこうか。


「サモン:フギン、ムニン」

『むう、いいところだったのだぞ主』

『これで無効試合だな。残り十数手でフギンの勝ちだっただろうが』

「お前たちまた将棋指してたのかよ。どうせフギンの勝ちばっかりじゃねえか」

『否。3468敗22勝で勝っていた最中である』

「はあ!?マジかよ凄えな」


 驚きだ。ムニンは記憶が仕事。記憶を所持してソートする程度の情報操作や、人間的な考えはとんでもなく得意で今回あてにしようと思っていた程だ。まず人間相手なら情報収集済みなら思考の九割以上は確定してしまうレベルなのであてにしても問題無いだろう。なので心理戦では最高だと言えるだろう。

 しかしフギンとは大分相性が悪い。というか正反対とでも言うべきか、フギンは口調に反して――本人(?)曰くワザと人間らしくしてるそう――量子コンピュータなんて比じゃないくらい計算高い。未来の自立ロボットだと思えばいい程だ、実際それくらいの力量はあるし。なので将棋指しで勝つのはほぼ不可能に近いのだ。それを勝ち越しているとは…褒める他ないだろう。

 なので二体揃っての株式市場を荒らすとなれば、まあまず勝てまい。


『それで、大方そこの娘をどうにかして欲しいって願いだろう。予想通りかな?』

「正解だ。正確に言えば異世界からの転移を横取りしてしまった結果、此処に呼び寄せた事故に遭った女性だな」

『それはなんとも面妖な』

『壁を越えたと?毎度の事ながら主は面白い。にしてもふむ……そこの半妖精より強いか。ならば……』


 俺たちは黙って結果を待つ。半妖精、つまりは美鈴の事はつい昨日念話で話したので知っている。レーツェルの事も話した。それを踏まえても異世界転移というのは尋常じゃない技術なのだ。人ならざる神の技、とも言える領域なのでこれを馬鹿正直に言うのはリスクが高すぎる。

 まあ人体(ホムンクルス)錬成をしてる時点で神の技などと言うカテゴリは興味が失せたが。もちろんアニメなどである変装マスクを錬成するのは簡単になったので、一時期楽しんでいた。その技術を使えばアフリカ大陸出身の人間だと偽る事は簡単だが、その戦闘能力は隠せないからなぁ。


『うむ、うむ。これならいいだろうよ』

「よっ!待ってました」

『先ずそこなる娘よ。お主隷属しているな?』

「…はい。それが?」

『ならば生命霊具となるのに抵抗はあるか?』

「生命…霊具?」

「おい流石に俺でも成功するか分からん技術を使うつもりはねえぞ。分かってるだろう?」

『無論である。しかしソフィアなる存在がどれほどか、測りきれぬ今ならば成功確率の高い手段を取るのが最善策では?』


 フギンが出した結論は確かに悪くない手段だ。しかしソレには若干の抵抗がある。そしてソフィアの奥の手が読めない現状では最善策だとも分かる。分かるのだが……はあ。


「あの〜、その生命霊具って何でしょうか?」

「あー、簡単に言えば生物を道具にした物だ。人体錬成の次の段階とも言われてるな」

「そうねー。人体錬成とは違って有名じゃないし、過去に行われたって話は聞かないわ。にしても使えるの?」

「まあな。竜でなら成功させたことはある。これな」

「ワオ!……君、人の領分って知ってる?」

「知っててもやらない理由にはならんな。それに人体錬成は既に犯した領分だから一度も二度も大差ない」

「はあ〜。聞くだけで疲れるわ」


 美鈴と軽口――俺の感覚では――を叩きあっていると、何やら覚悟が決まった目でこちらを見るシルヴィアがいた。


「大丈夫です!是非行ってください!!」

「何か覚悟が決まった顔してるけど、一体なぜ?」

「主よ。多分この娘は生命霊具になるのにリスクがあると思っているのでは無いか?』

「はあ!?あるんだったら即断ってるわ!失敬な」

『主殿。主殿は一言も生命霊具のリスクが無いとは言ってないぞ。むしろ成功するかどうか分からん技術と言っていた』

「そりゃ素材入手の話!生命霊具を作るのは完全にものにしたわ!!」


 キョトンとした顔で立つ美鈴とシルヴィア。はて、俺は一言も生命霊具を作る事に不安材料があるなどと言って無いのだが。何故そんな顔するんだ?

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