無職です。無賃労働は嫌いです
二話目です。どうぞ
洞窟に入ったらそこには整理された岩の道があった。……とでも言うと思った?
実際には洞窟に入った瞬間こう水の中に入ったかのような感触と共に、ライトや灯りなどの類いが無しでも外と変わらないほど視界が有効だった。太陽でもあるのかってレベルだ。今は夏だが、さすがに十九時過ぎて太陽は無い。つまりは何か別の物があると思うのだが…無いな。
先を見れば五十メートルほどは単なる洞窟でそこから二手に分かれているようだ。で、肝心なのは後ろ、つまり帰れるか否かなのだが……問題無い。一安心だな。
「ふう。アリアドネの糸じゃないが、頑丈な釣り糸も切れて無い。外との通信は…ダメか。物理的に繋がっているならオーケーなのかね。ともかく即行で迷うって可能性は低いかな。……でだ、一体コレはなんだ?」
入って右側にタブレット端末のような物が壁に埋まってる。電源が入って無いのか画面は黒いままだが……試しに軍手を着けたまま触ってみるか。
「ってうわ!勝手に画面が動いた。ん?なんだ?」
『ようこそ、竹林匠様。
ここはあなた専用のダンジョン。一定期間ダンジョン攻略をしなければ今の世界にモンスターが出現するようになります。お気をつけて下さい』
タブレット端末は触っても無いのに文字を新聞のように見やすく表示してきた。多分――いや多分ではなく確実に――言われただけでは理解できないだろう文言がそこには書かれていた。眼科には行ってないけど、はたして俺は行った方がいいのだろうか?
そう思いつつ、口に出して情報を整理する。
「……え?ええと、つまり?俺はダンジョン(?)を攻略しないといけないし、別に攻略しなくてもいいけどモンスター溢れる世界に変わりますよってか???」
『概ねその通りです』
「返事した!?」
何も触っても無いのに、またもやひとりでに文字が出された。そして混乱している俺をおいてタブレット端末は文字を映し出す。
『それでは松浜様のステータスを表示します。また、この世界の住人の平均を5とした時のステータスとなっています。ただし魔力に関しては例外です。
竹林 匠 二十四歳 男
職業:該当無し
DRポイント50
適性:グランドマスターetc.
ステータス
HP :15/15
MP :30/30
筋力 :16
耐久 :20
敏捷 :15
器用 :44
魔力 :13
対魔 :13
以上となっています。レベルは存在せず、鍛えれば鍛えるほどステータスは上昇します。耐久ならばダメージを受けた際などに上昇します。ダンジョン内での出来事の方がステータスは上がり易いです。
適性は将来的に最も成りやすい、可能性の高い職業です。称号と職業にはランクが存在し、ランクが高いほど成りにくい代わり補正――ただしステータスには影響無いパラメータ変動――が働きます。
またDRポイントは高いほど宝箱から出るアイテムのレアリティと性能が高くなります。幸運とはまた違うもので、ダンジョン産のみに効果があります。貯める方法はダンジョン攻略とミッションクリアの報酬のみで、無くなる事はありません』
うーん、いきなりファンタジーの世界に迷い込んだようだ。いやこの手の話についていけない訳じゃ無い。むしろ好きなジャンルでもあるが、それ故に納得いかない。一体なぜ俺がこんな主人公じみた事になっているのだろう?
「あー、質問はいいか?」
『いかがなさいました?』
「何故俺なんだ?これだけ聞くと自惚れてしまいそうなんだが」
『既にこの世界の11人の原住民には同じように情報を提示しています。その基準は適性にグランドマスターが存在するか否かです。またこれらのダンジョンに関する情報は一定期間後に世界同時開放されます。テスターとお考え下さい』
でも十一人なんですね。結構な確率なこって。人口比的には十億分の一以上だね。
「なるほど。じゃあダンジョン側の考えは一体なんだ?」
『回答権限は永久に剥奪されていますのでお答えできません。またこれらの情報は公開できない様になっています』
「やっぱりか。んー、あ!そういえばスキルって何?ステータス画面には何にも無いけど」
『スキルはご自身でステータスオープンと唱えれば選択可能です』
まさにファンタジーだな!などと口に出しても状況は何も変わらないし、ましてや俺が幻覚にかかっているかなんて確認のしようが無い。とりあえずは現実だと思って進めるのが吉だろう。
「了解。スキルに関して相談とかはしても回答もらえるの?」
『肯定します』
「そっか。じゃあステータスオープン」
ーーーーー
竹林 匠 二十四歳 男
職業:無職
DRポイント60
適性:グランドマスター、戦人etc.
称号:先駆者
HP :15/15
MP :30/30
筋力 :16
耐久 :20
敏捷 :15
器用 :44
魔力 :13
対魔 :13
スキル:短剣術、無手術、速読術、先読み、悪意感知、虫の知らせ、武の才、早熟
ーーーーー
ん?色々さっきと違う。まずDRポイント、50から60になってる。多分チュートリアルを終えたから、かな?この壁に埋まってるタブレットからは何も自主的に書いて(言って)来ないしチュートリアルは終了かな。えっと次に適性には戦人が追加されてるな。チュートリアルを聞いた結果か?…あとしれっと職業が無職になってるのが気に食わない。そこは投資家とかでは?まあいいけど。
たしかに「適性」が将来的に成れる可能性がある「職業」だとは書いてあったが、なんか嫌だな。変えれる方法は、多分職業に見合うだけの事をダンジョン内でする事かな?一応聞いておこ。
「なあ、職業ってどうしたら変えられるんだ?あとスキルの取得条件と書かれてないものの理由と選ぶ方法」
『職業に関してはダンジョン内で戦闘を行った戦い方などから総合して選出されます。スキルは一定以上の効果のものが表記され、補正効果もあります。取得条件に関してはご自身で検証して下さい。選ぶ方法はこの端末から選んで下さい』
「了解。じっくり選ぶわ」
〜二時間後〜
多いわ!!と途中で思ったが結構選んだのはまだ一つだけ。その名も「時空間魔法」。まあ王道の経験値増加とかもあったのだが、なんとなく地雷臭がしたのでやめた。多分「虫の知らせ」が働いたのだと思う。
ああ時空間魔法の効果は色々あるが、今使えるのは四次元ポ◯ット。容量制限はステータスの魔力値が1あれば「一つ」という風になってる。デメリットは常にMPが消費される事。さっき測ったら内容量関係無く、1分で5MPだ。つまり俺は6分しか使えない。まあ十分だけど。
てな訳で!早速出発。武器はメイン出刃包丁で、サブ武器としてピッケルとシャベル。今の時間は21時だが、一時間したら終了して、明日また出直す予定だ。ああ聞いた限りだとダンジョン内で起きた事は外でも反映されるので死んだらそこまでだ。更に言えばセーブポイント無し、階層クリアしてもショートカット不可だそう。
明日からは土日だ。本気で行こう。
「さて、右か左か。最初は左かな〜。罠は無いって書いてあったけどどこまで信用できるのかね」
トコトコと歩く事五分ほど、二体のゴブリンの姿が見えてきた。隠れる場所は無いのだが、そこはもう考えてある。バックから軍用のライトを取り出し相手の目に当てる。目がやられた隙に!
「グギャッ!ギィィィ」
「グギャ?ガッ」
一体は人間でいう頸動脈を、もう一体は喉を刺して素早くバック。倒れて動かなくなるまでにハンカチで出刃包丁に着いたくすんだ青色の血を拭く。タブレット端末曰く、死んだらドロップアイテムを落として消えるそうだ。なので倒れて動かなくなってるように見えても死んではいない。そしてこれは実験でもある。
「お、頸動脈の方は死んだっぽいな。喉の方は……………死んだな。タイムは一分か」
明らかに出血が多い攻撃と、お手軽に喉を刺すだけの攻撃。どちらがより早く死ぬかの実験だ。どうも人間とは違うようで、喉を刺した方は「死」までの判定が長いようだ。多分回復魔法や再生などの手段が存在する――スキルを選んでる最中に見つけた――ために死亡判定が長いのだろう。対処できちゃうし。うん、これからは頸動脈を切るようにしよう。
ゴブリンが居た場所には小さな石があった。タブレット端末曰く「これから入手できる道具で使える魔石」というものらしい。買い取りとかはやってないそうだ。残念だが。…残念だが!だって時間の無駄になる可能性が高いやん!嫌だよ、働いても収入無しは。
「はあ、コレをしまって。うっし、じゃあ進むか」
そして慎重に歩く事三分、視界に入ったのは十匹ほどのゴブリンたちだ。そこはさっきまでよりももっと開けた場所だ。大体体育館くらいかな?ふむ……分岐点まで戻って右側の通路に行くか。もっと二体のゴブリンを素早く殺せたなら話は変わるが、首を切ったゴブリンは十秒は動いていた。それが最低十体なんて勝てない。君子危うきに近寄らずだ。ま、俺は君子でもなんでも無いけどな。
俺はその場をささっと撤退した。どうやったら勝てるかを考えながら。
分岐点か、さっきの広間(仮)からここまでにゴブリンには出会わなかった。固定出現じゃないか、それとも時間がもっと必要なのか。明日来ればわかるかな。
んじゃあ右側だ。
歩く事十分、ようやくゴブリンに出会った。少し寂しかったので嬉しいが、まあ静かに素早く!切る!!
「グギャ!?…ガァァ」
「……成功か。タイムは五秒。うん、これならまあまあかな。さてさて、行きますか」
素早く近づき金的、悶えているところを首を半ばから切りつけることでタイムを縮めた。正直触りたくも無いが、この先そうも言ってられないだろう。血を拭い次は素手で戦う事にする。
「っ!!」
ゴブリンを倒して魔石を拾った時に先から足音が聞こえ咄嗟に壁に体を埋めるようにして隠れ(?)る。…ゴブリンが二体、ならば!
バックを地面に落としゴブリンに駆け寄る。そのまま飛び蹴りをかまして一体を倒す。そして手に持っていた出刃包丁を胸に刺し、振り返るとゴブリンが木の棍棒を振り上げていた。
(防ぐか、避けるか。道幅が狭い。攻撃を利用する!)
手を伸ばしてゴブリンの腕を右手で掴む。そのまま引き寄せ肘で顔面攻撃、立ち上がる勢いを利用して立っている場所を交代。膝で腹を攻撃して、棍棒を持った手を脇に抱えて動けなくする。幸いゴブリンは何が起きたか混乱中。そのまま首を掴んで押し倒す。
「グギャァァ!」
(よし!出刃包丁が更に深く刺さった!)
押し倒したゴブリンの背中に出刃包丁の持ち手が当たり、うまい具合に深く刺さった。首を抑えたとはいえまだ死んで無い。俺の握力じゃ首をへし折ることもできない。どうするか?簡単だ。
「喉を潰す!」
「ガァ」
チャンス。喉を潰した後一旦立ち上がり、背中にあるシャベルで叩く。運が良いのか一発でシャベルの角に当たりそのままゴブリンは二体とも消滅した。
「はあはあ、つっら。やっぱりさっきの広間は無視して正解だったな。ここまで辛いとは」
二体。しかも先制攻撃ができたたった二体相手に何を言ってるのかと言われるかもしれんが、かなり心臓に悪い。バクバクと心臓が動き、酸素を欲しているのがよく分かる。周りを確認して時計をチェック。時間はまだある。
昔爺ちゃんの友人に狩に連れて行ってもらった事があるから血は別に問題無い。更に昔不良相手に暴れ回った事があるから鈍器で殴られる事にも殴る事にも恐怖はあんまり無い。骨折も同じく。
だが冷静になって考えてみれば「対等な命のやり取り」はした事がない。だけど今俺は充実している。まだ戦ってみないと、命をかけてみないと分からないが、どうも俺は所謂戦闘狂の気質がそれなりにあるようだ。
「ただまあ、この興奮に身を任せてはいけないのは分かるんだがな。……うっし、いくか」
地面に転がった小さな魔石と出刃包丁を手にして血を拭く。家に帰ったら研ぎ直すなりなんなりしないとな。と考えて、ふと疑問に思う。死体は消えた。けど包丁についた血は無くならない。放ったバックは消えてない。中に入れた魔石も消えてない。一体どこからどこまでが消えて、どこまでが消えないのか?……おいおい調べるか。
シャベルの血を拭い、バックを背負う。そのまま歩いていると何か音が聞こえる。この足音は小さいな。音の間隔から考えて、跳ねてる?スピードは中々だ。さっき背負ったばかりのバックを地面に下ろしてある物と出刃包丁を構える。
(三、二、一)
「ピギィ!」
(今!)
―プシュー
「ピギ!?」
悶えている角の生えたデカいウサギの首に突き刺した。今度はゴブリンの時とは違い直ぐに消えた。ラップらしき物に巻かれた肉とゴブリンよりも少し大きい魔石を落として。
「……何故包装されている。いやありがたいけどね。なんかなあ、釈然としない」
ガスマスクをしっかりと装備したままドロップ品を回収する。ガスマスクは必須だ。何故ならさっきバックから取り出したのは唐辛子スプレーだからだ。ダンジョンの中が季節関係無い上に風が殆どない事を知った俺はガスマスクと唐辛子スプレーのセットを直ぐに思いついた。
え?ゴブリンに使えば良いって?勿体ない上に使う必要性が無い。だって殺せるし。ただ、この角ウサギ(仮)は素早いので使っただけだ。ラノベでも定番と言えるウサギだからな!勘だが出るだろう敵の対策はしっかりとしてある。オークはまだだけど。
「まあオークなんてそうそう出会わないだろ。…あ、コレってフラグかな?……考えても仕方ない、今日はもう帰るか」
今日の戦果
・ゴブリンの魔石(極小)五個
・角ウサギの魔石(微小)一個
→ 角ウサギの肉600グラム
今日はここまで。五日に一度分出すと思います。頑張れるかは分かりませんが。
いきなり30pvもありがとうございます!もっと全面に出した方が良いのかな?