激動の世界
久しぶりです!なんか最近執筆速度が急停止しました。
書けるといいなぁ。
妙な感覚だ。ちゃんとマジックアイテムで身を包み、擬装で一般人と同じ格好に見えるようにはなってる。だが実際には違う格好だ。刀を腰に装着してベルトには縦長の何かが入っているのがわかり、ズボンと上着は少し、いや結構早い長袖長ズボンだ。そして更にロングコートまでも着ている。笑いの仮面をつけて人相は窺えない。
誰が見ても不審者決定だ。そんな格好で国会議事堂の近くにいるのだ。誰もが嫌な予感しかしないだろう。まあ悪い話じゃ無いんだけど。チラッと時計を見れば時間は十時過ぎ、予定通り中に入っていく。
空間転移と同じ原理だが、側から見れば単に幽霊が如く壁をすり抜けて見えるだろう。
……到着だ。行動開始。
「Hey!everyone!」
「…何者だ!」
なんか間があったがまあいい。国会でおおよそ聞けないだろうダンジョンなどという単語が多く出てきてから突如出現したのだ。皆が一様に驚くのも無理はない。それも議長席の上に。
※以下、主人公と主人公と話す人は英語で話します。
「ええ〜、「何者だ」って言ってる場合なのかね?」
突然の英語について来れない馬鹿が大勢いる様だが、無視して話を進める。英語を全く理解していなかったらどうしようかとヒヤヒヤしてたのだ。
「それはいいさ。実は用があってね?それもかなり重要だ。ダンジョンについてだ」
ざわざわと何とか英語を理解しようとしていたらダンジョンという単語が出てきて、再びざわざわと喋り始めた。
「ダンジョンのスタンピードに関する条件が見つかった。一応この国のダンジョンで発見されたから一番に持ってきたのだが、帰った方がいいかね?」
「……いいや。できれば教えてほしい」
「うん、素直なのはいい事だ。では手元に置いた解説を見てくれれば良いさ」
「これは、」
「その通り!ダンジョンに関する簡単な解説さ。中には君たちが先日愚かな行動の理由まで書かれている」
黙って資料を読み出す馬鹿ども。今は人の話を聞いて欲しいんだが…威圧したらショック死しちゃうだろうし、無視して進めるべきか。
「そしてその資料に書かれている遺跡の残骸らしき物の実物は、」
ここで指パッチン。失敗したら嫌だったけど…できたな。うん一安心。
「ここにある。そして君たちが見ている解説なのだが、一部を全世界にばら撒く。猶予は一ヵ月。最初に言ったようにこの国のダンジョンで発見したからね。「ギリ」と「ニンジョウ」?というやつさ!」
「待ってくれ!待ってくれ。この資料は本当なのか?」
「何という愚かな質問!私が嘘を言おうが真実を言おうがそれが全てだ。ああ、解読の資料はカメラを見れば分かると思うが一部を既に公開させてもらった」
「な!?」
「その情報をばら撒く一ヵ月後までに私を見つけれたら、その者に情報の全てとそれを自由に扱う権利をあげよう。何と言ったか…そう!「オニゴッコ」!それまで私と君たち全員のオニゴッコだよ。私からは以上だ。健闘を祈るよ」
そしてコートからマントに変化した服を一振りして小さく煙幕を出す。転移をしてその場から消えて、紙を一枚だけ落とす。内容は「スパイ諸君は頑張りたまえ」と書いただけの物。
だがこの一枚で、皆が気が気じゃないだろう。疑心暗鬼になればさぞかし楽しいだろうからという一枚だ。…まあフギンの言った通りに動いただけだが。
そして三日後世界に激震が走る。
資料の内容が真実か調べるために一般人が暴動を起こしたのだ。そりゃそうだろう。カメラに写した資料の中には一般化させるのが目的であるという事と、このまま変動が無ければスタンピードを起こすという事、ダンジョンの一般導入されたメリットと一般導入されなかったデメリットの内容が書かれているのだから。
既に一般人に「思考誘導」をフギンとムニンにかけてもらい、より一層暴動が起きやすいようにした。と言うかフギンとムニンが嬉々として自主的にやってくれた。掲示板を見てみるとよく分かる。ちなみに俺は資料に一枚一枚愚者と名前を書いた。様々な言語で。
ーーーーー
1:名もない探索者 ID:P12xx-xxxx-xxxx-2893
突然現れた愚者とかいうふざけた名前のやつがばら撒いた資料がリアル過ぎる件について。
詐欺師か、はたまた世界の救世主か?
次スレ 930 あたりで。
2:名もない愚民
あれってマジなの?
3:名もない愚民
嘘じゃね?
4:名もない愚民
でもお隣さんの話があったからね。
5:名もない愚民
筋が通っているのがまた手が込んでる。
6:名もない愚民
何か起こすべきかね?
7:名もない愚民
>>6
何かって何さ?
8:名もない愚民
ダンジョン開けろ〜!的な運動
9:名もない愚民
いや捕まるだろ。いや捕まらんか?一応自由国家だし
10:名もない愚民
やり過ぎはアウトだろうけど、
11:名もない愚民
やり過ぎ無ければワンチャン?
12:名もない愚民
ワンチャンってなんだよ。ステータスアップの事か?
13:名もない愚民
ステータス?
14:名もない愚民
ステータスってゲーム的なあれ?
15:名もない愚民
ダンジョンあるし、ステータスがあってもおかしくないけど
16:名もない愚民
え?お前たち恥ずかしいけどステータスオープンってカードに向けて言って無いの?
17:名もない愚民
おいコラ。カードってなんだよ
18:名もない愚民
一時期軍が独占している謎のアイテムって流行ったけど、あれの事?
19:名もない愚民
そうだぞ、実在するからな。第一層クリアしたら貰えた。
20:名もない愚民
何と!?
21:名前ない愚民
って事は19は軍人か!?
22:名もない愚民
エリートコースだったけどダンジョン行けって言われた悲しい愚民です。今は嬉しいけど!
23:名もない愚民
マジか!?
24:名もない愚民
マジ〜!?
25:名もない愚民
おおマジだ。
……
ーーーーー
と言った具合に上手いこと各国の軍人に情報暴露させてもらった。そして情報が出て、煽る役の人間にやってもらうという感じ。しっかりと考えればおかしいと分かるし、一部の人間は気づいて止まったが全体的には違った。もう狙った通りに動いてる。ステータスって言葉が魅力的なのかね?
ああそうして起きた暴動が一部成功したのだ。そして資料の正当性が一部認められた。すなわち「ステータス制度」「ミッション制度」と「DRカード」の存在だ。そして今世界を賑わせているのは、
「DRカード、ダンジョン攻略ランキング第一位ねえ」
ランキング制度だ。そのランキング制度のベスト十位がDRカードに書かれているのだ。こんな感じ。
ーーーーー
名前:タクミ 職業:マスター 種族:修羅道師
パーティーメンバー:無し
ダンジョン攻略ランキング:一位(登録名、フール)
攻略数2
ーーーーー
「何度見ても手抜きだと思うけど、すげえ技術の結晶なんだよなあ」
パソコンのように入手した後直ぐに登録が行われる。ただしそれは名前と登録名のみ、つまりはパーティーメンバーは自動登録だ。システムとしてはレベル制じゃないので今のところ何も起きて無い。が、注意は必要だ。今は特に管理者たる師匠が胡喜媚と王貴人と遊んでいるからな。
後ろの面にはスキルが五つ効果と共に書かれている。だが触れば他のスキルが分かるという優れものなのだが、問題点としてはスキル名が分かっても効果が書かれていない方は分からない点だ。まあスキル名だけでも分かるので良しとするが。
そしてそんな物が簡単に創れる訳がない。いくら師匠でもこの分野はそうそう簡単にはできないと思ったのだが、どうも『世界』を説得して作らせているようだ。どう説得したかは世界が邪魔だと思う魂をダンジョンに入れる事で合意させたらしい。…馬車馬の如く働けばいい。おっと違ったな。
まあそれはともかく、今コレの仕組みを知るべく頑張っている者が居るようなのだが、まあ『世界』がそんな存在を許さず同じくダンジョン送りにしている様だ。
「全く、何で俺が情報収集しないt「戦るか?」いいえ、遠慮します。ええしっかりと行動しますから殺生石を収めて下さい」
ふう、全く酷い目に遭った。こうして俺も情報を集めているのでダンジョン攻略にも行けない。そうそう報告でメグミが第八十層まで到着したと言っていた。宝箱は不必要な物は全て俺に送られてきてるのだが、コレが中々良い物ばかり。
例えば今俺が座ってるマッサージ機。コレなんかは自動で魔力を吸いとって疲れてる部分を自動で感知、そしてマッサージしてくれるのだ。まさしく夢のごときだが、なぜ俺に送られてきてるのか?魔石では代用できないからだ。つまりは魔道具では無い。魔法道具なのだ。
魔法道具は使用者に魔力と魔法適性を求める。魔道具が魔石さえ在れば動くのに対して、魔法道具は魔力と魔法適性が無ければ動かない。
メグミは魔法適性が風と精神のみ。対人戦では強い属性だがダンジョン攻略に適性があるかと言うと、あるにはあるが低いとしか言えないな。
そんな彼女に集めさせているのが一番は魔道具の設計図、二番が万人受けする武器防具、三番に魔石だ。まあ確実に来るだろうダンジョン攻略の組織団体の為の必需品だな。俺が愚者として売りつける。金は正直要らないが、ダンジョン攻略で被害に遭った奴らに対する補助金として活躍するか。
「あーあ、家は大体魔法道具だらけ。ダンジョンに行くための装備も完璧。訓練も怠っていない。充実しすぎてやる事が無い」
『そんな主に朗報だぞ』
「おお〜ムニンか。なになに?」
『ダンジョン対策の組織ができつつある』
「もう?予想よりめっちゃ早いな」
『正直、フギンが一番驚いているな。追い詰められた人間の結束力を舐めていたと』
「だろうね〜。草案だと本部はどこさ」
『蝦夷のダンジョン近くだ』
「………は?」
『蝦夷のダンジョン近くだ』
「いや聞こえてるって。にしても草案でも最適解を選んだか。中々すごいな」
蝦夷のダンジョンは国土面積最大の国にあるものに続いて二番目に大きいダンジョンだ。ここのダンジョンに居るモンスターは強いがその分ドロップ率が非常に高い。もしファンタジー小説と同じように本部に強い者が集まるならば…最適解と言えるだろう。
そして更にムニンから聞いてみれば場所を提案した者は強い者はダンジョン組合(仮)に所属させて、軍属もオーケーだがスタンピードが発生した場合には駆けつけるのが条件とする事も提案。更に驚くべきことに提案者は国土面積最大の国所属の者だと言う点。
怪しいと思いカラス共に監視させているそうだ。そして何より、名前が、
「ソフィア・イヴァノヴァねえ」
『どうかしたのか?主よ』
「んー、フギンに伝えろ。ソフィアの全てを洗い出せとな」
『…むう。主の珍しい命令ならば仕方ないか。しかと伝えよう』
どうも勘が囁いている。何かあるぞと。まあ何も無いならそれでいいが、十中八九何かある。「何にも無い」「普通の経歴」「怪しい事はない」とかの報告ならば確実だ、俺が動いた方がいいだろう。
まあそれはさて置き、先の話の続きだ。今世界のトップの人間を最も賑わせているのは魔道具だが、次点でステータスだ。なんでもステータスが高い者を対モンスターや対犯罪者の組織としようとかなんとか。イタチごっこが始まる予感しかしない…。
対モンスターの組織は先のダンジョン組合(仮)に併合しようとかの話も出てるそうだ。ま、コレに関しては賛成だな。なんせ、
『special mission!!
アフリカ大陸で複数の魔物放出が発生する。モンスターを倒して自然化を止めよう。残り時間9,485時間。
条件:複数のダンジョンから出てくる魔物を狩る(0/不明)
報酬:ダンジョンの少数化、倒した量の魔物に応じた宝箱(複数あり)』
こんなミッションが出たのだから。因みに残り時間は約一年と一ヵ月だ。そしてこのミッションが出たのは今日の朝五時(現在時刻二十三時)で、その後の会議で先のダンジョン組合(仮)の設立案と共同案だ。何かあると思わない方がどうかしてる。
『そういえば、主よ』
「ん?なんだ?」
『世界会談が直ぐに成立したのは、このソフィアなる者のせいだと思っているのだろう?』
「そうだが?」
『その上で質問だ。主が仮にソフィアなる者の立場の場合、どんな手段を使う?』
「ん〜、難しい質問だなぁ」
俺は良くも悪くも戦闘特化だ。逆に言えば戦闘に関係しない部分はとことん経験が無い。戦闘経験は色々あるし、家事や商談取引に値段交渉、錬金術、鍛治、知識収集などなど多岐に渡って戦闘に関係する分野ならば経験がある。
だが一方で戦功会は全無視、政治的素材の取引も全無視した。政治からいかにして無視できるかを追求したタイプの生き物だからなぁ。それでも政治的な事情は嫌でも知ってるから、利用は可能だ。そう考えてみれば、
「……思考誘導だな。もちろん最低条件として自分が政治的立場がしかとある上で、だが。もしくは洗脳が手っ取り早いか」
『それが妥当か』
「ああ。ただし洗脳って言っても何か中継機が無いと全世界にはできない。思考誘導程度に落とすなら俺にもできるが」
『主と比べてもな』
「うっせー。俺も人間とはかけ離れているって自覚はあるんだよ」
『にしても中継機か。主ならば何を使う?』
「んー、質問の意図が分かったぞ。何を発見した」
『むう、つまらんな。答えは魔石だ。刻印が書いてあるな、コレは専門の言語学者レベルならば読めるだろう』
「へえ。どこのだ?」
『我が古巣の言葉、ルーン文字を更に暗号化されたものだ』
となると何処かは一気に絞れなくなったな。ルーン文字なんて今時調べれば出てくる。それを踏まえて暗号化されたならば容易では無いが、入手経路は一瞬で失うことになる。だが文字か。
「…お前たちのどっちかが筆跡鑑定できるか?」
『既にやっている。ふむ、ソフィアなる者の文字に相違あるまい。他の魔石はそれを踏まえて他の者が真似したな』
「つまりはソフィア・イヴァノヴァは黒幕、というかもう一人のマスター候補か」
『む、何故だ?』
「そりゃあ「簡単な話さ。フギンが見てる本人はホムンクルスで、それを見てるフギンから隠し通せている時点で実力は明白。神話の存在を欺けるなんてマスター候補しかないよ」…師匠いきなり出てくるのはやめません?」
「君は分かったのだからいいだろう。家主なんだから」
『貴女様が主の師匠ですか。お話はかねがね』
「いいのいいの。そんな風にしないで。それで、そのソフィアちゃんは「節制」だよ」
節制、あいつは何かと俺を縛ろうとしてきた。まあ自由と規則は反対のものだから分かるんだがね。それを踏まえても多いぞってレベルで絡んできたのを覚えている。
…ん?……いやいや、まさか。
「あの〜師匠?もしかしてそれは…」
「君を追ってきたんだよ?」
「やっぱり『世界』ぶっ潰そうかね?」
「私が止めるけど?」
「じゃあ無理だな。チッ」
『ふむ、察するに対等な立場だったと?』
「あー、違うんだがな。事あるごとに絡んでくるんだよ、アイツ」
『ならば勝てる道理もなし。どうするのが吉か』
「あー、通常業務に戻っていいぞ。すまんな、扱いが酷くて」
『何、主神に比べれば休みがあるだけありがたい。ではまた』
ボンッと消えたのを見ながら思う。オーディンの爺さんはそこまでブラックだったのかと。
「じゃあ組織体系は彼女に任せるけど、ミッションは参加してね♪」
「あー、一応聞いておきます。何故ですか?」
「あそこ邪魔なんだよねえ。本当は消し飛ばしたいけど自然化させることで手打ちにしたの。自然化は決定。あとは君たち次第だよ。じゃあねえ〜」
「あーあ、消えちゃったし」
相変わらず嵐の様に過ぎ去って行ったな。…まあちょっくら運動しますか。
Another side
そんな会話があった後、タクミは隣国の樹海化した場所に転移し無双をしたら家に戻るの生活をしていた。
一方で世界情勢は迅速に、過去を見ても類を見ない速度で変化していた。
まず半年後、世界ダンジョン組合(World Dungeon Union)が結成された。それに伴い全世界とは言えないが、主要な先進国は全て法律にダンジョンに関する事柄が追加された。その内容は要約すれば、
・ダンジョンを発見報告した場合多額の報酬を国から支払い、以降そのダンジョンは世界ダンジョン組合(WDU)に所属すること。
・ダンジョンの利権を国が主張することはできず、またWDUも同様である。ダンジョンで取れた物は発見者の財産となる。
・ダンジョンで取れた物を売買する権利はWDUにしか無いものとする。これに反するとWDU独自の厳しい罰則を与える。
・WDUの活動主要部は第一に日の本の北海道とし、第二はロシアのニジニ・ノヴゴロドとする。支部は各国の発見されたダンジョンの側に造るものとする。その際に土地の所有者はWDUに売ること。これに反すると罰則を与える。
・WDUへの所属はDRカード所持者の権利である。またWDUの売買店を利用する場合にはこのカードが必要である。
と言った感じだ。コレは渋った国が多かったが特に最初に被害を受けた国が強く訴えた為に半年という短期間で成立した。
そして世界ダンジョン組合は誰が発足人となったかは、自身もダンジョン攻略ランキング第二位のソフィア・イヴァノヴァである。その際、幹部には各国の出したランキングの高い者が据えられ教育がされた為に実質ソフィア・イヴァノヴァの一強である。
そんな背景が存在するために結成時には高ランキング=WDU内での権力者となっていた。そんな世界ダンジョン組合ではルールが非常に少なくシンプルである。理由としてはやはり元が頭の良い者が多い訳では無いからだろう。
その少ないルールがこれだ。
・どこの組織に属して居ても良い。ただし有事の際には個人指定で強制依頼が発生する可能性がある。
・ダンジョンから出た物の売り上げに応じてランク10〜0までに入れられる。
・死亡した場合や怪我をした場合に備えて所属時にはWDUの保険へ入るのを勧める。
・犯罪は発覚し次第、幹部による粛正とする。粛正内容は各幹部によって異なる。幹部がいない場合にはWDU本部に移送され教育を受けてもらう。
・その他は各自の良心によるものとする。
以上の五つだ。犯罪の発覚方法は非公開。教育の内容も非公開。ただしどんな刑罰よりも恐ろしいものとしか公表されていない。
正直組織としてはどうなのか?と言われたが問題無いと押し切り、資金面は殆どがソフィア・イヴァノヴァと愚者の持つダンジョン産の物を金として、それらから出されている。
ここでサラッと愚者が出ているが、本人はソフィア宅に大量のダンジョン産の物を置いて「世界ダンジョン組合立ち上げに使え」とだけ書いてあっただけである。それをソフィアは気に食わずに出資者として公表したのだ。なお当のタクミは「軽率だった」と嘆いていた模様。
そうしてできた世界ダンジョン組合(WDU)は最初のみ不安定に思われたが軌道に乗ればどこの組織よりもしっかりとしていた。
さて、そんな激動の世界だが二つ忘れられている重大な事がある。先ずはDRカード。殆どの者に忘れさられていたコレは突如ダンジョン入り口に現れた謎の機械により革命的発展の起点となった。
謎の機械はダンジョン入り口の近くを如何なる方法か不明だが通った時に反応を示すテレビだ。例えマジックバックの中に隠そうとも同じであるが、DRカード所持者限定なので他への利用は難しい。またダンジョン出口も一緒なのでダンジョンから出ないしかこの機械から逃れる方法は無い。
先ずは世界ダンジョン組合が犯罪発覚方法で悩んでいた事を嘲笑うかの様に、ダンジョン内限定だが「他者への害意を持っての攻撃」「他者の物を奪った事実」「他者への妨害行為」の三つを白黒グレーで判定される様になった。
黒の場合は即ブザーと共に黒と白を激しく点滅する。黒は三つのうちどれかを犯した場合になり、犯罪者当人のDRカードを当人が持ってかざすと止まる。そしてテレビ画面に罪状とその様子が写される。直接自分が手を出さずとも鳴るので隠せない。
グレーの場合はブザーのみ。三つのうちどれかを犯したが本人に悪意が無い場合で、こちらも犯罪者当人のDRカードを当人が持ってかざすと止まる。テレビ画面にその様子だけが写されて放置。
白の場合は画面に一度だけ罪状と済の文字が書かれる。過去に犯罪歴ありで、既に罪を贖っている場合になるが、正直要らないと言われてるがどうしようもないのでスルーされてる。
ちなみにこれらの犯罪に対する罰は各国によって違うのだが、何故かどの刑罰でもしっかりと償い改心した場合は白になる。
そして革新的な発展となったのは魔法犯罪の禁止だ。アイテムボックスなどのスキル、魔法道具や魔法による犯罪を犯した者は永久指名手配犯となり、ダンジョンにも永久に入れない様になる。そういった仕組みがこの機械によって作られた。
魔法はダンジョンに入らないと手に入らない。スキルオーブを使おうにもDRカードが無いと使えない様になっtゴホン、失礼。DRカード保有者以外は使えない。そしてスキルや魔法を使うとDRカードが記録してしまう。使用履歴をこの機械が読み取り魔法を使った犯罪か否かを見抜ける様になった。
そうなるとそれでも使おうとする人間が現れる。そういった人間はDRカードが消滅、永久に発行不可になる。そしてそれに伴い魔法もスキルも使えない、種族ごと犯罪人となった。所謂昔の人間になるのだ。ステータスも最初期から変動しなくなる。
この犯罪の基準は未だ明らかにはなっていないが、誰もが試したがらず、それを知るために司法と手を組んだ。それが「犯罪人刑」犯罪の基準を知る名目で種族を契約魔法によって強制、これで犯罪が劇的に減る。そして各国の司法の犯罪人は全てこの種族に変えられるという罰を死刑と双璧をなす刑罰とした。
さて忘れられている重大な事、その二。ダンジョンに関する説明だ。愚者が恥を承知で皆の前に現れて説明した内容だ。え?要らない?そう言わずに最後まで聞いてね。
あまり長ったらしいと嫌がれるので簡潔に、
1、ダンジョンは人間にしか基本的に危害を与えない。
2、ダンジョンは強き者を生み出すためのシステム。なので一定の者のみが利益を享受している場合と、一定の弱者の死者が出た場合に発生する魔物の地球人に対するダンジョンの攻撃を行う。それが魔物放出。
3、ダンジョンは誰が強くなるのか不明なので誰もが入れる事を望んでいる。なので人間側に利益として魔道具を供給できるシステムでもある。
4、ダンジョンは強き者を生み出すためのシステムなので世界が壊れても困る。なのでなるべく魔道具という環境に良い道具を使ってもらうべく、それらを供給している。
5、ダンジョンの望む者はマスタークラスの職業保持者である。マスタークラスの職業になる可能性の高い人間には多くの試練を与える。
6、ダンジョンに置いて現代兵器は最初のみ効くが、一定以上進めば弾かれる。
7、パーティーを組むには六人以下でどの階層でも一緒にクリアする事。選択肢が出た後全員が承認でパーティー結成だが、メリットは少ない。
8、missionにはnormal、secret 、extra、specialの四つが存在する。職業の可能性が大きれば大きいほど後者が出てくる可能性が高くなる。
9、ダンジョン外でもダンジョンは常にマスタークラスの職業になれる者に試練を与える。失敗は死の可能性が大きい。
10、ノーマルミッションにもクリアしなければ死ぬ者も存在する。これから世界は弱肉強食が広まるだろう。
と、まあ大雑把にはこんな感じ。
全て事実だしメリットばかりでは人間は堕落する。だからこそのミッションとダンジョンという飴と鞭を与えている。
疑問に思うだろう神はこの「世界」にはもう数えるほどしか居ない。理由はいずれタクミが語ってくれるだろう。
ただ、何か違和感というか…少し今までとは違う気がするんだよね。はてさて、タクミは一体何を考えてるのだろうね?あるいは……。
Another side 『世界』 END




