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現代にダンジョンが出現しました!(要素:武力)  作者: 武匠
とりあえず準備編
17/43

竜と龍なら後者が強そう

もうそろそろストックがないので終わりですね。

 

 いよいよ記念すべきダンジョン第百層だ。そして結構嫌な予感がするので入念に準備運動をして、初手ブッパを決めるイメージをして丹念にイメージトレーニングをする。呆気なく終わったならそれで良い。だがもし違ったら大きなダメージ、もしくは死亡すること間違いない。

 ここは死んでも復活はできないのだから。充分にトレーニングをして氣と魔力に呪力をたぎらせ転移した。


 そして第百層、そこは空が広がる山頂だった。そう「だった」だ。


「初手ブッパだ。死ね『圧縮魔力砲』」

「ガアァァァアアアアア!!!」


 そして閃光と暗闇のブレスがぶち当たり、


「クハハハハッ!やっぱりてめえ暗黒龍か!!」


 龍のブレスをズラすに終わった。そして残るはブレスによって消された()山頂。ブレスと魔力砲のぶつかり合いで山頂部が消し飛んだのだ。そして直ぐに出すは「収束の輪」それを投げつけて、


「もう一発だ。今度はその身をもって味わえや」


 再度閃光が発生した。今度は十もの障壁を消された黒い龍にぶつかり、その巨体を動かすに留まった。

 その様子を見て歓喜と恐怖が、憧れと怯えが、そして殺意と闘気が発せられる。


「文字通り全力だ。とりあえず一本もらう」

「グルアァアアアアアア!!!!」


 咆哮で身がすくむのを意思でもって魔力を使い強制的に体を動かす。狙うは腕。どういう原理で浮いているのかは分からんが、魔法補助器の龍玉を持っている。ならば先に使えないようにするべきだ。


「纏・練氣」


 音もなくただ腕を斬った。直ぐに足を掴み収納する。再生に使われたらたまったもんじゃない。そして案の定魔法陣が俺の周りに展開されて、こちらも全力で結界を展開する。次の瞬間、俺はスタート地点に立っていた。


「おいおい、再生不可の魔法とかバケモンだな!」


 最初の魔力砲の時に結界で条件付き交換の結界を張っていた。条件は自分が再生不可の攻撃をくらう場合、自分が死に至る攻撃をくらう場合、そしてその二つのうちどちらかの条件にプラスで自分がどのような攻撃を喰らったかを理解している場合だ。そして効果は見ての通り結界内部と結界内部を入れ替えること。

 条件が軽い?馬鹿言うな、とんでもなく難しい条件だ。死ぬか再生不可かは俺のスキルを全て使ってもできない場合だ。つまりは腕が消し飛んでも再生する俺はほとんど意味のない条件。そしてどのような攻撃かは、効果をしっかりと理解しないとできない。眼だけでは前者の条件下では非常に達成困難だ。

 まあ敵の攻撃力が今のところ全部致死性の竜魔法なのである意味条件達成は簡単ではある。


 息を整えている俺に気づいた龍はこちらに向かってノータイムでブレスを放つ。だが威力は直撃したら俺が死にかける程度、ならば「収束の輪」を一個で充分逸らせれる。

 そして突っ込んで攻撃すべきだと刀を構えた瞬間、危険察知が警報を鳴らしたことでその場を横に移動する。見ればさっき居た場所には雷の魔法陣があった。雷の魔法陣から魔力を辿れば残り三つの腕のうち一つに繋がった。

 再度構えをとれば、再度魔法陣が俺を捉える。だが、視れば死ぬことは無いと判断、無視して氣と魔力を刀に纏わせ固め、鞘に呪力を込めて循環させて、自身の体から氣や魔力に呪力が溢れんとするのを鎮め込む。これを一秒もかかららず終わらせ踏ん張る。

 そして魔法陣が完成しオートの防御を抜けた攻撃に俺の全身が悲鳴をあげる。骨が軋み、柄を握る手は焼かれ、内臓が傷を負う。だがそれらを全て再生して復活する。脳は呪力で守っている、胸は魔力で壊れない様に補強している、足は氣で支えている。そして十分か、一分か、もしかしたら十秒経ってないかもしれない。放たれた竜魔法の効果が終了した。


「巡れ巡れ、我が力。纏い纏い、強く鋭く。『竟刃』」


 そして魔法陣の効果が終了した瞬間に再生も終わらせる。治したのは腕と足のみ。他は要らない。

 龍は俺が魔法を耐えきった事に対して、驚きでも、怒りでもなく、ただ、苛立ちをもって自身の最強の攻撃、咆哮とブレスを使い応えた。


「ガアァァァアアアアア!!!!!」


 迫り来るブレス諸共龍を斬らんと竟刃を放ち、ブレスは斬れたが龍はその巨体を逸らした事で腕一本で終わった。


「クハハハッ!さしもの龍とて竟刃は避けきれなんだか!!」


 龍をも殺す竟刃が、俺の最高の技が、その程度の傷をつけて終わるものか。俺の声に反応してか、はたまた全く関係がないのか、次の瞬間龍の側面を大量の切り傷が走った。


「ガアァァァアアァァァ!?!?」

「次!巻き上げ斬り」


 突然切り傷を大量に作られて叫び苦しむ龍の下に移動、下に振り下ろしたままの刀を自分が回転しながら振り上げる。その勢いに刃で作られた斬撃は風として舞い上がり、苦しむ龍の腹を斬り刻む。そして狙い通り後ろ足を斬り、竟刃で落ちた前足を回収。その場を離れようとしたが、


 ―ズドオォォン

「ガハッ!?…雷!?」


 雷を喰らった。雷を出す前足は既に斬ったはずと見上げれば、確かに前足は再生しているがその手には龍玉は無かった。代わりに後ろ足から伸びた魔力の線が視え、再度攻撃が来ると思い足の氣をジェットのようにしてその場を離れた。

 両足が氣によってズタボロになりながらも先ほどまで居た場所を見れば、唯一残った龍玉から雷が放たれ地面が融解していた。体の再生を魔力の循環を早めることで早くして治す。続けて足を治そうとしたが、


「鏃囲い!」


 咄嗟に全力で結界を張った。そのお陰で向かってくる雷を結界で受け流すことで間一髪で攻撃をくらわずに済んだ。心臓がバクバクとうるさいのを聞きながらも再度足を治す。が、


(魔力が撹乱している!?氣と反発しているのか!)


 中々治らない。結界で攻撃を防ぎ、結界を伸ばして龍の頭を叩く。そうして稼いだ時間の十秒で何とか使えるレベルまで治した。そして治って直ぐにその場を大きく離れて、俺がいた場所に結界を突き破り龍の口がやってきた。

 チャンス?とんでもない。俺は危機感知の警報が無くなる場所まで瞬時に移動する。準備ができなかったので左足の足首が粉砕骨折したが無視、何とか危機感知の反応が無くなった瞬間。暴風雨と雷が後ろに発生した。


「龍ってのはこんな滅茶苦茶な奴ばっかりなんかよ!?」


 愚痴らずにはいられない。何故なら奴は魔法を使っていない。ただ魔力を込めて息を吐き、頭から突っ込んで来ただけだ。それだけで魔法と、大魔法と同じことができる。それが龍なのだ。

 自然現象では無いからダメージを負う、意図したものでは無いのでどこに起きるかは勘か魔力を視認するしか知る術が無い。そしてさっき居た場所にある龍の口は魔法を無効化して突き抜ける。故に前方からの殆どの攻撃を無効にできる鏃囲いが破壊された。

 その龍はむくりと顔を上げて更に暴風雨を拡大させる。


「チッ、足は治った。避けながら行くしかあるまい」


 これ以上範囲を拡大されたら堪らん。意を決して暴風雨の中に突入する。風が傷をつけるべく俺に襲いかかる。しかし防具と集中させた魔力のお陰で傷はつかない。ただしすごく進みにくい。風や雨を無いかのように進める訳じゃ無いのだ。この暴風雨は視界を、進む体を拒む。


「ならば、敵を穿つ一つの刀と化すのみ。一穿(いっせん)


 刀を自分の目の横に構え、縮地でもって移動する。狙いは龍の目。そして景色が一瞬で変わり目に刀が当たる瞬間、刀は障壁に阻まれた。四つだ。たった四つの障壁に刀の動きを完全に止められた。そしてジロリと龍の目に睨まれ、髭で吹き飛ばされた。

 …驚きは、ある。だが湧き出るこの気持ちは、歓喜。命の保証などどこにも無く、しかしこの刃は届く事実を知っている。そう、ハイ・オークエンペラーと戦った時のような高揚感!レイと戦った一撃が致命傷となり得る攻撃をいかにしてくぐり抜け戦えるかの綱渡り!俺は、


「俺はまだ生きている!!」


 生の実感。強烈なばかりのその気持ちに吹き飛ぶ体の体勢を整えて、刀を下段に構え、足場を結界で一瞬だけ作る。直ぐに消した結界で体は落下し始め、移動する。


 ―ドンッ

「斬る!」


 さっき吹き飛ばした髭は今度は刀から身を守らんと魔力が多く含まれ盾になってる。障壁も存在するその髭を視て(・・)斬り飛ばし、次に移動した先には目がある。目を風と土による壁と自らの膨大な魔力を使い障壁で守る龍。だが、問題無い。


「新月」


 音もなく、ただ魔法と障壁を突き抜け、目を貫く。


「グギャアァアァアアア!?!?」


 ―ドンッ


 思わずと言った様子で()を起点に上半身を持ち上げる龍に、再び虚空を蹴り移動した俺は地面に着地。またもや下段に構え、ひと息に二度斬る。名付けて、


「鏡斬り」


 そう言った時になって漸く、龍の首をバツの字に傷がついた。強靭な鱗や障壁を物ともしない斬撃はしかし、龍の首を斬り落とすに至らなかった。


「グオオォォォオオ!!!」

「チッ、半分成功か」


 首の背から血を流しながらも龍は咆える。その声からは衝撃波が走り、風が刃と化す。直ぐにその場を離れて戦果を確認。龍の首を斬り落とすには至らなかったが、治せない傷(・・・・・)を作るのには成功した。万能眼を用いるまでも無く傷は治らず混乱しているのが分かる。

 再生は魔力や生命力を代償にするもの。そして最近呪術の操作次第では再生に似たことができると知ったが、それもこれも傷を治すには何かを対価にしているのだ。だからこそ対価を弾く、或いは対価を出させない技が必要だった。そしてこの技は敵の魔力などの対価を操作できない様に、つまりは斬ったところで元からそうであったかのように斬ったのだ。

 弱点は俺のテンションが高い状態じゃ無いと成功しない技。平時にできる様になるにはまだまだ修行が必要だ。だが、


「今は関係ねえな!」


 再び縮地。浮き上がろうとその巨躯に力を入れて血を噴き出す龍の胴体部に移動。そしていつの間にか左手にある短刀と共にひたすらに刃を振るえば?


血散(けっさん)遼刃(りょうじん)


 鋭く、鋭く、鋭く。ただそれだけを求めて斬る「竟刃」とも違う。

 鋭く、綺麗に、認識されぬように。それを求めて斬る「鏡斬り」とも違う。

 素早く、素早く、素早く。それだけを求めて斬る「血散遼刃」は治りが遅く、大量で、無差別にその凶刃を振り撒く技。狙いは殆どつけず、ただ敵に突っ込んで攻撃すれば下手な鉄砲数撃ちゃ当たるの原理と共に猛威を振るう。

 障壁は龍のその巨体全てに張られている。ただし強い敵と、対等なレベルの敵と戦うならばそれは悪手。なので重要な器官以外は傷を負ってから、障壁を張る。だが血散遼刃にはこれまた悪手。何故なら張った場所に攻撃がくる可能性の方が少ないのだから。


「グギャアァアァアアア!?!?」


 再度の悲鳴。障壁が間に合わずとも鱗がある。だが一度竟刃でつけられた傷はジャミングされて治り辛い。そして他の部分に回復を集中させれば、傷は残ったままとなる。故にもう一度傷の上から攻撃を受ければ、鱗など最初から無いかのように切り裂かれる。

 そして悲鳴を上げ、動きを、空に逃げる手を遅らせれば、それは致命的な隙を生む。竟刃の準備をするのは十分な時間を。


「行くぞ」


 龍は狂った様に魔法を放つ。必死に。当たり前だろう。自身の最強の攻撃を斬り、威力が落ちてもなお腕を切り落とされた技の気配を感じたのだ。今くらえば確実に死ぬ。

 だが、それは勘違いだ。


 ―ゴウッ


 最初の技は言うなれば竟刃・弱。全力では無かった。魔力収束砲、時間の無さ、そして集中。その全てが俺の最強(・・)の技を最高(・・)にまで引き()()()のだ。魔力は不十分、氣は十分、呪力も十分、集中も十分、テンションは最高だ。ならば溜めは要らない。不十分な魔力は気合いでどうにかなる。

 襲いかかる魔法は練り上げた氣と呪力で防ぎ、間に合わなかったのは竜鱗の盾が守り、更に足りなければ纏域が防ぐ。そして、


「竟刃」


 俺の最強の攻撃が放たれる。

 ブレスを使うがもう遅い。一度でも全力の竟刃が放たれれば、全てを斬る。


 ―ィィィイイイン


「俺の勝ち。チェックメイトだ。楽しかったよ」


 最後にそう伝え、俺の体から力が抜けた。これで死んで無かったら俺の負けだが…確信を持って言える、俺の勝ちだ。


『mission clear!!!

 ダンジョン第百層クリアおめでとうございます。

 条件:最上位龍の討伐。

 報酬:第百一層への転移陣の使用許可、ダンジョンキー収納ケース鞄、古代龍魔法』

『special mission clear!!!!!

 発生条件:ダンジョン突入三ヵ月以内に他のテスターよりも先に百層へと到達する事。

 条件:最上位龍種→古代神龍の討伐。

 報酬:DRポイント500、虹の宝箱一個、金の宝箱三個、銀の宝箱三個、自動龍製の防具強化(神話)』

『special mission clear!!!!!(new)

 条件:古代神龍種の討伐。

 報酬:DRポイント500、過去世の記録、虹の宝箱三個』


 ほら、やっぱり勝ちだ。その確信を得た事で倒れ込むが、転移陣が発動して俺はその場から消えた。




 そして目覚めると、そこは豪華な休息ポイントだった。何か他の者の気配を感じて起きれば、ベットの直ぐ隣に恐ろしく美人な女性がパソコンらしき物を閉じてこちらを向いた。


「ふむ、おはよう。しかしながら近くで見ればなおのこと男とは思えんな」

「酷い言いようですね。俺を知ってる様子を見るに…ダンジョン管理者ですか?」

「人のことを聞く前に、まず自分の紹介をしろ。そう何度も言ってきたんだがな」


 何度も言ってきた?それではまるで俺が過去に会って教えてもらっていた時があると…うん?何か違和感が。この世の者とは思えない容姿、同じくこの世の者とは思えない魅了されそうな声…どこかで引っかかる。まあ今は置いておこう。


「……すみません。では改めて、僕はマツハマ、じゃ無かった。ムラマサ タクミです。どうぞよろしく。そして貴女は?」

「私はダンジョン管理者であり、お前の師匠だ。思い出せんか?」

「師匠?爺ちゃんじゃ無くて?…申し訳ないです..が?え?師匠?師匠って言った???」

「うむうむ、思い出した様だな。久しぶりだタクミ。名と容姿は変わらんな」


 このサラッとディスってくる感じ、そして嫌というくらい聞いた声、決め手に万能眼。


「……玉藻の前…師匠で良いですよね?」

「そうだ。前世を無事に思い出した様で何よりだ。そして、ようこそ『世界』を超えた存在へ。我々は君を歓迎する」


 夢じゃ無いんだろうなあ。

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