変な奴
ある所に《江田助》と呼ばれる男がいた。
しかしこれは本名では無く彼の本名は誰も知らない、誰が最初に言い始めたのか街の人々は彼を江田助と呼ぶ。
見た目は二十代前半の若い男で身長は小柄、顔も可もなく不可もない平均的な顔をしている。
しかし街の人々は彼のことを変な奴だと忌み嫌っている。
今日も彼に怒号が飛ぶ。
「何だこの紙切れは!!物が買いたかったら金を払うのがこの街のルールだ!ニセ札にしても出来が悪すぎる!金がないなら帰ってくれ!!」
店から叩き出される江田助は声を上げる
「#¥@“%€£+*<!!!」
この風景を見ていた街の人達が言う
「まーた江田助か。何回行ってもお金を払わないと商品が買えないというのに何をしてるんだあいつは」
「ねぇ、お母さんあの男の人は何を言っているの?」
「分からないわ坊や、でも分からなくていいのよああいう人には近寄らない事が一番よ」
「また意味の分からない言葉を話してたな」
「江田助!お前みたいなやつはこの街から消えちまえ!!」
そんな言葉を浴びせられながら江田助は走って何処かへ行ってしまう。
この江田助という男は半年前この街にふらっと現れた、どこから来たのか何故来たのかは誰も知らない、よく街に現れて謎な行動をして周りの人を気味悪がらせている。
こんな事が半年も続いたある日街で会議が行われて江田助の話になった...
「ゴホンッ、失礼、あの半年前に突然現れた男、あいつに悩まされている人も多いと思う」
「江田助ですね。あいつはウチの店に来て意味の分からない事を言いながら変な紙を渡して来てものを買おうとする。気味が悪くて周りの客にも大変迷惑をかけている」
「最初は浮浪者かと思って慈悲でウチのレストランで飯を食わせてやったんだ、でも食事のマナーも何も出来ていない。多めにみていてやったが遂に客からクレームが来て出入り禁止にしたよ」
「はじめてアイツを見た時僕は普通に挨拶をしたんだ、そしたら突然顔色を変えて僕を一発殴りやがった!」
「この間僕が車を運転してる時だって信号無視で歩道も車道もめちゃくちゃに歩くんだ。邪魔だし危ないし注意してもこっちの言葉を理解してるのか無視してるのか全く治らない」
「この前なんて私の息子の頭を突然撫でて...」
会議室がザワつく...
「何?頭を!?」
「はい...頭を撫でてまた意味のわからない事を言いながら赤い玉を息子に渡したんです。不気味なので私がその手を振り払ったら江田助は急いで赤い玉を拾い上げると口の中にポンっと頬張ってニタニタしながら何処かへ行きました」
「不気味なやつだとは思っていたがそこまでとは...よし、これ以上街に迷惑をかけるわけにもいかないし警察へ届けよう」
この意見には皆が同意して後日江田助は身柄を確保され話はトントン拍子で進んでいき裁判が開かれることとなった。
手足を縛られた状態で江田助は車椅子を押されて法廷へ入ってきた。
あたりを見回しながら何か言っている。
「@¥?”*€+$£#!?」
裁判官は江田助を睨みつけて呟く
「ゴホッゴホッ。ん〜、話には聞いていたが本当に不気味な奴だな。江田助よ私の言っていることが分かるか?」
こんどは江田助は裁判官の目を見てハッキリと言う。
「"#/×!*〒〆」
裁判官はため息をつきながら言う
「やれやれ、本当に我々の言葉が理解できないようだ。よし、"あれ"を持ってきてくれ」
実はこの街、昔から動物裁判という文化が根付いている、農作物を食い荒らしたり人間を襲う動物を裁判にかけて人間の法律で裁くのだ。
やり方は簡単【意思疎通機】というものを使う、これはペットボトルのキャップぐらいの大きさで頭の上に乗せるとこの機械を乗せたもの同士の考えている事をお互い伝えられるという装置だ。
今まで動物裁判ではよく使われていたが人間相手に使うのは江田助が初めてである。
裁判官は頭の上に意思疎通期を乗せて職員は江田助にも装置を付ける。周りの観覧の人達もそれぞれ頭の上に装置を乗せる。
先に裁判官が一言
「さて、これで意思疎通が取れるようになったわけだが、名前と出身を教えてくれ」
周りの人々の興味は一気に江田助の言葉に集中する。
少し間が空いてから江田助は話し始める。
「いやぁ!すごい!!!本当に言っていることが分かる!!いつぶりだろうか人と話せたのは!あー嬉しいなぁ...」
裁判官は話し続けようとする江田助に強めに咳払いをして注意する。
「質問に答えろ。お前の本当の名前は何だ?出身はどこで何故ここへきた」
江田助はいろんな感情が交じったような緊張したような顔で答える。
「すいません、嬉しすぎてつい...僕の名前はジャック・フマーノ」
裁判官は不思議そうな顔で言う
「珍しい名前だな、それではフマーノ君、きみはどこから来たんだ?」
フマーノは難しそうに言葉を選んで話す。
「うーん、どこから来たと言われるとまずここが何処なのかという所から話したいけど僕は地球という星で暮らしていました、半年間僕がこの街で暮してみて思うのはここは地球とは違う星ですね」
驚きと興味を隠せない様子で裁判官は話す。
「地球!?聞いたこともない星だなここはオウトロという星のシダージという街だ、なぜ君はこの星へ来たのだ?」
フマーノも困ったようにこたえる。
「それが...僕の星ではCウイルスという菌が世界的に蔓延していて長い間苦しんでいました、昔は78億人近くいた人口も10分の1以下になってしまって僕の家族や身の回りの人達もみんなそのウイルスが原因で死んでしまって、今じゃ秩序もなにもない荒廃した星になってしまいました」
フマーノの説明に一同は様々な事を思いながら話を聞き続ける
「Cウイルスのせいで僕は一人ぼっちになってしまいました。ある星の綺麗な夜にこんな世界から消えて居なくなりたいと願いながら眠ったんです。そして次の日目が覚めたとおもったらもうこの星へ来てしまっていた」
裁判官はゆっくりとうなずきながらまた質問をする。
「地球から一夜でこの星まで飛ばされて、さぞ辛く大変な思いをしただろう?いつここが地球ではない星だと気づいたのだ?」
フマーノは記憶を遡るように少し上を眺めて話す。
「そうですね、まず地球との1番の違いは街の皆んながマスクをしないで生活していた所です。こそで異変には気付いていて、あとはこの街の挨拶は相手に中指を立てますよね?僕の故郷で同じことをしたら直ぐにでも喧嘩になる仕草です。ポケットに入っていたお金が使えなかったりお菓子のアメ玉を気味悪そうに見ている人を見て今まで自分が暮らしていた所とは全然別の場所に来てしまったと感じました」
それからフマーノは様々な質疑応答に答えた。
裁判の結果今までの行いは悪気が無かったという点で無罪になった、フマーノは意思疎通機を付けることを条件に街で住所と職を与えられた。
それからは街の人々も優しく接してくれてフマーノは新しい街の生活に馴染んでいった。
ただ一つだけ最近街の人々が仕切りに咳をするようになったという小さな小さな問題以外は皆んな幸せに暮らしていました。
まだ3つ目の作品ですが書いていて一番楽しかったです。
初めは江田助が地球人だったというオチで書き進めていたのですが途中からこのオチを思いついてこういうお話になりました。
作り話なので実在の人物や団体などとは関係ありません。