未来を変える努力
あれから師匠とは順調だと思います。大人びた…可愛げのない私ですが、同じく可愛げのない捻くれた師匠とは《エクスカリバー》曰く相性がいいそうで嬉しいです!そうそう《エクスカリバー》とは話し合って、今までのこと全てを和解しました。もちろん私の黒歴史を暴露しないことを約束することも忘れません。
「師匠!クロエ母様からアップルパイを頂きました!お茶にしましょう」
そうそうあの後と【主従契約】という魔法で繋がり、彼らに名前を贈らせてもらいました。
「お前らの入れる紅茶は不味くて飲めたものじゃないからな。さっさと席につけ」
元は剣だった《エクスカリバー》は私と繋がったお陰で魔力が安定しているとかで、今は私の従者として少年の姿でお茶を入れてくれています。あと師匠のセンブリ茶並みのと私のちょっと個性的なお茶を一緒にしないでいただきたいです。
「ピスティスの入れるお茶はどうしてこんなに美味しいのでしょうか…」
そう彼の名前は『ピスティス』忠誠を意味し、私の剣として共に前に進む戦友としてこの名前を贈りました。この名前を贈った時何故か師匠まで泣いていたのは驚きました。
「主様と爺は雑なのです。感覚でやろうなんて100年早いのです未熟者」
相変わらず毒舌な元は鞘だった《エクスカリバー》は今では少女の姿で侍女をしてくれています。彼女は家事全般が得意で、精霊界で美味しい料理を知ってしまった私の舌を師匠の魔の手から守ってくれています。
「アップルパイの準備ありがとラトレイア。じゃあみんなで頂いましょう!」
彼女には敬愛を意味する『ラトレイア』を贈らせていただきました。口は悪いですが彼女の行動や気遣いはとても優しいのです。戦いでも私とピスティスを守ってくれる戦友としてこの名前を贈ると、また師匠までも泣いて喜んでいました。
二人はサラサラと真っ直ぐ伸びた銀髪に紫の瞳を持ち、全く同じ顔をしています。よく見れば睫毛の感じや唇の形が少し異なりますが本当によく似ています。二人とも見た目は12,3歳くらいでピスティスは耳にかかるくらいのショートカット、ラトレイアは背中までの髪を三つ編みにしお団子でまとめフリルのついたヘッドドレスを身に着けています。よく怒ったり顔をしかめる表情豊か?なピスティスに比べ、ラトレイアは大体無表情です。そんなところがエルお兄ちゃんに似ていて、もちろん私には小さな変化もお見通しです!
「ん~!やっぱりクロエ母様のアップルパイは格別ですね!リンゴが輝いていますよ!」
「いや本当に輝いておるのぉ!これが幻の【黄金の林檎】か、初めて食べたわい、次に会った時クロエ様にお礼を伝えておいてくれ」
「ゴホゴホッ!いやいやどうしてそんな伝説級の林檎を何の躊躇いもなく食べられるんだよ!?」
「兄よ美味しいのですよ。流石にこれだけ食材の味が最高だと私のアップルパイも負けちゃうのです」
「そんなことないよ!ラトレイアのも美味しいし、何より家庭の味というか舌に馴染む味がする。クロエ母様のももちろん美味しいんだけど、偶に食べる贅沢って感じ!だからラトレイアのも格別!」
「……知っているのです。言ってみただけなのです」
ラトレイアは表情は変わりませんが照れた時は目をそらし赤い耳で口を少しだけ尖らせます。反対にピスティスは盛大に否定します。真っ赤な顔でバカバカ言います。二人ともとても可愛い大切な私の友であり供です。
そして【主従契約】の効果により二人の考えていることが分かるようになりました。もちろんプライベートもあるので普段は無効にしていますが、この能力が私にどれだけの安心を与えてくれたかは察するに余りあるでしょう。そうして私たちの間には敬語は無くなりました。ラトレイアは口癖のようなものなのでこのままだそうです。
私たちは主人とそのお供という形ですが、基本同じテーブルにつき食事やお茶を共にします。奥様もそうだったようで、みんなで美しい庭を前にお茶を楽しんでいます。
私は自分の身体をコントロール出来るようになってから、今は年齢と比例した4歳児の姿で居ます。髪もクロエ母様を真似てサラサラストレートを腰まで伸ばし、前髪は変わらず目にかからないくらいにおろしています。定期的に精霊界に行って皆に魔法や魔力操作、精霊術、武術などを遊びを交えて教えてもらています。
向こうでの一か月が大体人間界の2時間という余りにも時間の進みが違うので、かなり年を取った自称四歳児なのは内緒です。これだけ違うと向こうに行っても支障はなくよく皆に会いに行っています。なので私が着ている服も精霊の皆がくれるもので、私自身もみんなと話し合ってデザインしています。
今日のドレスは私の瞳に合わせ、薄紫の花のようなスカートが特徴です。何枚も濃さの違う薄紫のチュールを重ね腰に巻いたリボンで花束のように可愛いお気に入りのドレスです!
「師匠今日はこの後錬金術をするんですよね!」
「そうじゃ。ようやく魔眼が使えるようになったからのぉ」
そういって師匠は遠い目をします。そうなのです…ここまで来るのに長かった…一体いくつの目玉が犠牲になったのか…
「本当ようやくなのです。ラトの知る限り全部で104個の目玉が破裂したのです!」
「あぁ、まぁ次第に目玉単体が飛び出た時は笑ったな…ふっふふっ…思い出したら、痛てっ!」
「ラトレイアそれは言い過ぎよ!片目が成功したんだから確か100は超えてないはず!「おいルクレツィアなんで僕の足を踏むんだ!」何のことかしら?おほほ」
まさか数えているなんて思いませんでした。私は途中から見ないふりをしたので100以下だったことにしましょう。最後の方では多すぎる魔力の調節も出来はじめ目玉が…こう…海賊王になる的な漫画チックな現象が起こりました。それがピスティスのツボにはまったらしく爆笑しやがるのです。主が頑張っているのにそれを馬鹿に…あろうことか真似をする生意気な彼にはしっかり制裁しておいたのはここだけの秘密です。
【魔眼】は血族に伝わる能力のほかに基本的な能力として魔力や精霊などのエネルギー体を見たり、望遠鏡や顕微鏡のような役割も果たせます。私は少しなら時を見ることが出来るようになり今はそれを使った戦い方の訓練もしています。
そして透視などもできるこの目は【治癒魔法】を極めるには必須で、この魔法の訓練のために私はどんなグロい惨状でも平静を保てると思います。えぇそれだけこの訓練は地獄でした。一瞬で元に戻せるまで何度も幹部や組織や骨を凝視させられ、何故か患者の声とやらを脳に流される鬼畜ぶりに涙やら鼻水やらでグチャグチャになりながらも合格を貰いました。
私の未来に何が待ち受けているというのか、戦場で魔法が飛び交う中意識のハッキリしている仲間の治療という設定から隣で家族が泣き叫ぶプレッシャーの中での蘇生、今にも死にそうな二人の患者の取捨選択からの同時治癒等々。私は医者になるにしてもどんな過酷な所に飛ばされるんだってくらい過酷な現場の幻術を見せられ、幻術だと油断しないよう偶に本物の患者が攫われ治療していたなんてこともあった時は心臓が口から出たと思う程驚きました。
ピスティスもラトレイアも私のため…心を殺して見守ってくれている…と信じたいです。
『ルクレツィアはどうしてそんなに遅いのです?これくらいで後遺症が残るなら魔術でやるのと変わんないのです』
『身体を理解してないと敵の動きや急所が分からないぞ。表面じゃなく中を見るんだよ』
あぁピスティスは真面目にアドバイスくれてましたね、分かりにくい言い方のお陰で断面の方を見てしまいましたよ、ハハハ。
そう私が遠い目をしていると師匠が話しかけてきました。
「じゃがのぉ…ルークは少しガッカリするかもしれん」
「何か理由が?」
「いや…必ずそうとは言えんが…」
私は疑問に思いながらもお茶を終え、錬金術を行う部屋に向かう師匠の跡に着いていったのです。




