ルクレツィアのハンバーグ
こんにちはルクレツィアです。
皆さんは前回の予告を見てこう思ったでしょう?
「あ~ルクレツィアちゃん師匠の不味いご飯が耐えられなくなって、前世の記憶でハンバーグとかの料理改革するんだ~。」
そうです。
なので今回はハンバーグを作ってみようと思います。
ルクレツィアと師匠のお料理教室~
まずお肉を用意します。
お肉の筋繊維に調味料を染み込ませるために細胞を破壊します。
あぁぁ師匠!お肉があっちこっちに飛び散っちゃってますよ!
ほらほら辺り一面真っ赤になっちゃって…
あら?卵がコロコロ…あれ?これ
私の目玉だ
「ギィアアアアアアァァァァァァァァァ!!!!!!!!」
そうお肉は私
調味料は魔力
魔力を強制的に体に馴染ませるため全ての細胞を破壊し、瞬時に修復を繰り返します。師匠と組手をしながら行っているんですが手も足も出ずに、ミンチになる痛みとそれを一瞬で治す回復が繰り返されています。
次はお肉を締めるために氷漬けにします。
もー師匠解凍が面倒臭いからって凍ったままミンチにしちゃダメですよ~
「ア゛ア……ア゛…」
次にお肉に隠し味を足します。
「ガッ……ァァァ…ゴフッ…」
隠し味は少しだって言ったのに師匠ドバドバ入れちゃダメですよ!
もーこれによって毒耐性がつき、食中毒を引き起こさなくなります。
次にミンチの空気を抜くために地面に叩きつけます。
これにより物理耐性がつき、歯応えが増します。
ゴウッ
最後にミンチを炙ります。
あー師匠それは炙るじゃなくて焦げてますよ。
お陰で魔法耐性がつき、再度温めた時焦げずにすみます。
「ああああああああぁぁぁ…」
ほらこれで…
ルクレツィアのハンバーグの完成です。
最後は残さず『いただきます』
ポイッと巨大な地竜に一口で食べられちゃいました。
でも大丈夫!ハンバーグはここまで来るのにあらゆる耐性を付けてきたので、そう簡単に消化されません。
だから…
「グルァッ!?グルアァァァァァッ!!!!!!!!」
竜のお腹を食い破って出てきちゃいます。
ふぅー!まぁ具材も食材もハンバーグからほど遠いんですけどね!胃酸で溶けまくりですが生きてます!結局【完全回復】してもらい元通りの金髪紫眼パッチリお目目のキュートなルクレツィアちゃんです。
「よしよし良く耐えたのぉ。流石はルークじゃ並の…いや歴戦の勇士でもこの苦行に耐えられるやつは滅多に居らんじゃろうに。」
「そうなんですか?皆さん覚悟と忍耐が足りないんですね。私は何としてでもこの苦行を受けなければならないという覚悟がありましたからね!お陰で《耐性系》は全て手に入れましたよ!それに本命も!」
「そうか…そうか良かったのぉルーク…。あぁ…すまんのぉ…幼いお前にこんな事をさせて…ワシはお前の幸せのためなら何だってするぞ。だからそんな早く大人にならなくてもいいんじゃ…。
だがお前の幸せはワシが決めるものじゃないからのぉ…お前が望むこと全てを叶えることが出来るようこの老い耄れの技全てを与えるぞ。」
師匠は泣いて喜んでくれました。あぁごめんなさい師匠…ずっと反対してたのに私の為にこんなこと手伝ってくれて…。大丈夫ですよ、確かに痛かったし苦しくって辛かったですけど…ほら師匠謝らないでください。
ギィィィ…
「よし!今日も沢山本を読みまくって知識を蓄えますよ。昨日のようにいきなり失明とかにはなりません!」
ルクレツィアはそう意気込むと短い足でハシゴに登り、本を浮かせキャッチするとそのまま読み始めた。
本棚は3m程の高さで、至る所に可動式のハシゴがあった。そのひとつにルクレツィアは座り、魔力制御の為に本を浮かしていた。
とてつもない集中力とスピードで読み進めていたルクレツィアだが、とある本を凝視すると顔を真っ青にし慌ててそれを持って図書室を飛び出した。
「し…師匠!!」
「これこれそんなに慌ててどうしたんじゃルークよ」
ルクレツィアはハァハァと息を落ち着かせ汗を拭うと、ゴルバチョフにバッと本のページを見せた。
「わ…私は!私は一生このままの姿なんですか!?」
ルクレツィアは真っ青な顔でゴルバチョフに詰め寄った。
『魔力量と老化について
魔法を行使する者は一概に長命であり、その実力や魔力量によりその見た目も一般人と大きく異なる。我々は長年の研究により魔力が人体に及ぼす影響について研究し、ここにそれを記す。
検体No.1
→83歳女性(平民)死因:戦死
15歳で魔法騎士団に所属し以降魔法の行使を続ける。入団当初、平民に現れる魔力保持者の平均魔力量よりやや多めであった。訓練や任務などで魔力の枯渇、肉体の損傷回復を繰り替えす。その後魔力量は増え、70歳頃には上級貴族程まで上り詰める。
入団後から魔力量は増え続け、30歳頃には肉体の成長スピードが格段に落ちた。その後も成長はほとんどすることなく、享年の姿は30代後半であった。
司法解剖によると彼女の細胞は隅々まで魔力が行き渡りその割合は6割であり、血管や臓器なども見た目と変わらない年齢であった。回復した傷口は特にその傾向が強く、何度も負傷し回復した右腕は肉体の最盛期を維持していた。
中略
検体No.75
→101歳男性(下級貴族)死因:事故死
下級貴族の平均魔力量と比べやや少なかった。学生時代以降魔法を行使することはなく、魔力の枯渇や怪我による大きな肉体の損傷回復は1度も経験したことはなかった。
享年の姿は初老であり、下級貴族の平均老化速度とほぼ変わりない。
司法解剖によると彼の細胞の魔力侵食度は3割ほどで、魔力を作る機関の衰えが見られた。
中略
検体No.81
→27歳女性(元上級貴族)死因:心筋梗塞
上級貴族の平均より遥かに多い魔力量を持っていた。しかし肉体の成長が著しく遅く、知能や感情は年相応であったが享年の姿は5歳と変わらない体格であった。
一般的な魔力暴走と異なり、彼女の魔力は体内で暴走し自身の肉体を破壊していた。魔力制御を習得してからは落ち着いていたが、20歳頃から謎の吐血や内出血が見られ、25歳を迎えるころには脳の著しい損傷により魔法による回復は見込めなかった。
遺族の意向により司法解剖は行えず肉体の状態は不明だが、我々は自身の魔力に身体が耐えられず命を落としたと考える。
検体No.102
→26…
中略
考察
上級貴族や高位の魔法士の資料は少なかったが、皆一様に魔力量によって肉体の成長速度が異な…』
「私って魔力すごく多いんですよね…こ…ここのNo.81さん…わ…私もしかして早死しちゃうんですか!?この姿のままで!?そんなのってあんまりです!!!!」
ルクレツィアは本を読んでいたゴルバチョフに飛び付き泣き喚いた。その際ゴルバチョフはローブにヨダレや鼻水や涙を擦り付けられていた事は見なかった事にしていた。そしてパニックになったルクレツィアを抱き上げポンポンと背中を叩きなだめた。