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貴女の幸せが私の幸せ

「はぁはぁはぁ……」


「ふぉっふぉっふぉっ投げた木に紛れワシの懐に飛び込んでくるとは大胆じゃのぉ。動きはいいんじゃがまだまだワシには敵わんようじゃ。」


「うぅぅ…この血も涙もない鬼ぃぃ…手足の短い幼女を痛めつけて楽しいですかこの野郎ぉぉぉ!」



結局あの後もゴルバチョフに手のひらで転がされたルクレツィアは、荒い息で地面に倒れ空を見上げていた。そんな様子をニコニコと余裕そうに見下ろしていたゴルバチョフに、悔しそうに唸ったルクレツィアは拳を地面に振り下ろし叫んだ。それを笑っていたゴルバチョフも、次第に様子がおかしくなっていくルクレツィアに首を傾げた。



「どうかしたか、そんなに青ざめて?」


「あれ……?なんで…なんで、私の手…足も…?これじゃあまるでニ歳かそこらですよ…」



真っ青な顔で起き上がったルクレツィアは震える手で顔を覆い、指の隙間からゴルバチョフを縋るように見つめた。白く透き通るような肌は子供特有の柔らかさと美しさがあり、そんな表情でも彼女の美しさを遺憾なく発揮していた。その顔にはふくふくとした丸く愛らしい頬、顔を覆う手は四歳とは言えないほど小さく腕や足にも幼子特有のムチムチとした柔らかさがあった。それこそトテトテと歩く二歳児のような体がそこにあった。


ルクレツィアは今まで自身の小ささ(・・・)には気づいていたが、その成長(・・)には全く気付いていなかった。ゴルバチョフに弟子入りしてからの毎日にはゆっくり自分のことを気にかけるような時間はなく、また自身のことになると成長というものは気づきにくいことも原因であった。厳しい訓練により何度もボロボロになる服や靴などのサイズは着るたびに自動で体に合うよう魔力を練られた特別仕様であり、何故か(・・・)鏡でも水面で自分の姿がぼやける(・・・・)強力な呪いがかけられていた。


前世の記憶という知識とそれを受け入れる大人びた精神があったゆえに、「子供もの身体は不便だな」くらいにしか思わなかったルクレツィアはようやく気付いた自身の肉体成長の異常さに顔を青から白くさせた。



「なんで…?ほ、本…魔力が多くても…五歳までは自然成長出来てたって…いった…。それに魔人にも…ぇ…う、ぁなんで…なんで!?」



顔を覆っていた手のひらを見つめよろめいたルクレツィアは、パニックになりゴルバチョフの腰に抱き着くと泣きじゃくりながら頭を擦り付けた。小さな体からは想像できないほどの魔力が溢れ出て、両腕の《エクスカリバー》は必死にそれを抑えていた。抱き着く相手がゴルバチョフではなかったら即死は免れないほどの、濃密な《負の感情》が周囲の木々を枯れさせ辺りを荒れ地と化していた。


ゴルバチョフはその様子を悲痛な面持ちで見つめ、「なんでなんで!?」と混乱するルクレツィアの頭を撫で抱き上げた。子供のように(・・・)ワンワンと泣きじゃくりながら首に抱き着く弟子の頭を優しく撫でると、気絶するように泣き止み穏やかな寝息を立て眠る少女がいた。魔力暴走が落ち着き必死に抑えていた《エクスカリバー》は、ルクレツィアの異常さに呆然としていた。





《こいつは…一体何者なんだ?》





愛おしそうに、しかし微かな哀愁を含んだ微笑みを浮かべ、ゴルバチョフは屋敷にある薬剤室へと転移した。そこは以前ルクレツィアに紹介した部屋であり多くの精霊や妖精が、ルクレツィアの様子を見て心配そうに集まってきた。ルクレツィアの腕にブレスレットとして装着している《エクスカリバー》の質問には答えず、ゴルバチョフは訓練でついた汚れを魔法できれいにすると精霊たちにルクレツィアを預けた。そしてそのまま精霊が使う魔法《精霊術》によって浮きあがり、キラキラとした光に包み込まれ姿を消した。


カランッ


ルクレツィアが消えた場所には紫の宝石が光を放つ黄金のブレスレットが一つ(・・)落ちていた。



「おや、まだ【主従契約】をしていなかったんじゃのぉ。とういうことはあれはルークの荒れてしまった魔力を抑えるために仕方なく(・・・・)片割れだけ連れて行ったというところかのぉ?。

いつまで意地を張るつもりだピス《その名で呼ぶな》…はぁ。まぁ良いお前たちはこれからもルークの傍にいてくれるんじゃろう?」


《っ!誰がお前なんかの頼みを「ルクレツィアが何者かじゃったか?」…》


「少し話そうか。そのままの姿(ブレスレット)でもいいがもう人型にもなれるんじゃろう?顔を…見せてはくれんか。ルクレツィアの前ではまだするつもりはないのじゃろうし、これがお前と顔を合わせる最後の機会になるじゃろうからの。」



どんな顔で言っているのか見えなかったが、ゴルバチョフの苦笑がいやに耳に残った。二人の間に流れる空気は決して良いというわけではないが、以前ルクレツィアに話したような「無視や攻撃を仕掛けられる」といった間柄には見えなかった。



暫く沈黙が流れブレスレットの宝石が薄く光ったかと思うと、白に見間違う程の白銀の髪にトレードマークのあの紫の宝石のような瞳の少年がゴルバチョフを睨んでいた。


サラサラとまっすぐに伸びた髪は耳に少しかかるくらいのショートカット、刃のように鋭い瞳を縁取る睫毛は長くルクレツィアに負けず劣らずの神秘的な美貌であった。年は12,3歳だろうか白く透ける肌とすっらとした体を包む真っ白な軍服を身にまとい、腰には自身の分身ともいえるデザインの剣があった。



「僕はお前が嫌いだ。大っ嫌いだ!これはお前のためじゃない、アイツ(ルクレツィア)の正体を知るために!エクスカリバー(僕たち)に害のないやつか判断するためにお前の要望を聞いてやったんだ。だからさっさと教えろっ」



ニコニコと嬉しそうに笑うゴルバチョフは彼をソファーに座らせ魔法でお茶を入れた。ドサッと音を立て座った《エクスカリバー》はその態度とは真逆の美しい姿勢と所作でカップに口を付けた。



「お茶を飲むのも久しぶりじゃろう。どうじゃワシも随分上手く入れれるようになったじゃろう!メリルに指導されルークにダメだしされまくったが最近ようや「その喋り方やめろよ。」……納得は…してくれんか?」


「うるさい……どうでもいい。勝手にしろよ」



カップをソーサ―に置き視線を斜め下にずらしたまま《エクスカリバー》は呟いた。わずかに唇を噛み無表情でゴルバチョフを見つめると話の続きを促した。



「お前が求める答えとはなんじゃ?それはルクレツィアの出自か?それとも記憶か?」


「全てだ。そうでないと説明できないだろう」



ゴルバチョフは《エクスカリバー》の嘘は許さないという真剣な目を正面から見つめ、口を開いた。



















「ワシの孫娘じゃよ」


















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