これぞ異世界
どうも最近魔力コントロールが熟練し魔法だけでなく魔術も使えるようになったルクレツィア4歳です。毎日師匠の襲撃に怯え呪いや悪質なトラップなどに襲わる日々…死ぬ気で魔力コントロールの精度を上げざる負えない状況をおよそ一年ほど過ごし、現在では安心安全な日々を送れています。
魔法や魔術が使えない間は専ら剣術や体術で師匠の攻撃をしのいでいました。実戦の中で師匠から技を盗むか本を見るしかない育成者の存在意義を疑う状況下で技術を身に着け、先日ようやく魔法を切ることが出来ました。と言っても雑さや無駄が多すぎて《エクスカリバー》からネチネチと文句を言われています。このままだと木刀片手に師匠の前に放り出されそうで、何としても認められるようにならなくてはいけません!
その《エクスカリバー》とは喧嘩しまくっていますがそれも友達って感じで楽しいです。毎日法外な授業料をごっそり持っていかれるので、ただでさえ多すぎてコントロールが難しい魔力がどんどん増えるというイジメにあっています。
でもそんな中でも食事の時に師匠が「ほぼ独学でよくコントロールできておる。凄いぞ!」と頭を撫でた褒めてくださったのでとても嬉しかったです。でも師匠…自分が教えるの放り出して無茶な実践訓練しているのわかっていたんですね。なのでその日以来私からも師匠にトラップを仕掛けたりしています!
呪いやトラップの付与などは魔術と同じ要領で書いた文字や言葉に魔力を流すか、魔力に効果をのせて直接相手にぶつける、または触れさせるなどいろいろなやり方があります。呪術には効果にもいろいろあってその解呪方法も同時に生まれるそうです。でもそれは製作者や【鑑定】を使える人などだけが知りえる情報で、様々な本を読んで解呪の方法まで知っておくか地道に解呪を試す、力技で【聖なる浄化】で無理やり呪いを解くという方法しかなく厄介極まりないです。師匠が所かまわず襲撃またはトラップを仕掛けまくり、魔法もろくに使えなかった私はその罠や呪いにひっかっかりまくり必然的に呪いについて詳しくなりました。
顎が伸びる呪い、前髪が切っても切っても伸びる呪い、カモノハシになる呪いなどマイナーかつ腹の立つ呪いから始まり、即死や衰弱死などの死の呪い系や自我が不安定になる怪物に変化する呪い、体が腐り落ちる、カビる、溶けるなどの第一級危険呪術まで仕掛けてきました。もう鬼畜過ぎて今でも涙が出てきそうです…死ぬぎりぎりで動けるところまで回復させられ、自分で解呪方法を見つけ解くまで何度でも瀕死になるまで放置されました。術はかけられませんが心の中では師匠への呪詛でいっぱいで、何度リアルに血涙を流したか…
そんな辛い中でも《エクスカリバー》が励まして…
『おい食事をよこせ、というか勝手にもらうぞ』
『持ち主の技量が悪いと刃に負担がかかるのです。いい加減【腐敗の呪い】くらい何とかしやがれなのです』
バキッ!
『『アアアアアアアア!』』
騒いでくれたのでメンタルブレイクせずに済みました。でも二人とも名前が同じなので日記に書くときに困りますね。最近知ったことなんですが《エクスカリバー》は喋っているのではなく私だけに【念話】で話しているので、傍目には私の…独り言と…大変痛い状態になっているようで頭が痛いです。
そんなこんなで今日も元気にお勉強を頑張ります!
「今日はいつもの場所じゃないんですね。何をするんですか?」
「それは中を見てからのお楽しみじゃ。みんなお前に会いたがっておったんじゃ、仲良くしてやってくれ」
「???」
昼食後ついてくるように言われ入った先は、いつもの場所ではなく、薬草の匂いがする大きな鍋のある部屋でした。空間拡張された部屋は広く壁から生えた気が高くなった天井まで幹を伸ばし木の実やかごなど様々なものを吊るし、幹にぶら下がっている魔法ランプが部屋の隅々までを温かく照らしています。窓の付近では壁から滝のように水が流れ、そこで沢山の植物が育っています。何より部屋のいたるところに本で見たこの世界に住む鳥や小動物、妖精や精霊がいて、私は開いた口が塞がりませんでした。
「ふぉっふぉっふぉ驚いたじゃろう?本当はもっと早くに紹介しようと思っておったのじゃが、ルークは直ぐに魔人になるための修行を始めたからのぉ。その後も自身から漏れ出る魔力を制御できないお前を合わせるわけにはいかんかったんじゃ。精霊は周囲の魔素の影響を強く受けるゆえに以前のルークと顔を合わせた瞬間、下級の精霊じゃ魔力過多で即身体が四散したじゃろうからな、ふぉっふぉっふぉ」
「うわっ今初めて知る事実サラッと言われましたよ。私知らない間に魔力体から放出されてたんですか!?それに私滅茶苦茶危険人物じゃないですか!」
《魔素》とは大気中に漂う魔力のことで、それが異常に濃く生物に悪影響を及ぼすレベルで汚染されたものを《瘴気》と言います。生き物は皆体の中に魔力を作る魔力器官があるのですが、魔素の薄い地域は魔法の威力が弱くそれを利用する魔道具も使えないので人はあまり住んでいないようです。精霊や妖精など清廉な魔力を好む種族は魔素が瘴気にならないよう浄化できる森に住みつくそうで……はっ!
「あの四散って…私そんな瘴気巻き散らしていたってことですよね、まさに歩く公害じゃないですか!?うわぁぁ《エクスカリバー》ごめんなさいこんな私の傍にいて!だからそんなに捻くれた性根の曲がったクソ野郎になっちゃったんですねうわぁぁぁぁぁあん!」
『うるせえ元々こういう性格だ馬鹿が!お前なんかが僕たちに影響を及ぼせると思うなよへなちょこが!』
『捻くれてないのです、思ったことが正直に口から出ちゃう系ピュアなだけなのです!ていうかお前に言われたくないのです、謝ってるふりして滅茶苦茶悪口言ってるのですコイツ!』
そんな喚く一人と腰にぶら下がる剣を心配そうに見つめていた。ゴルバチョフは楽しそうにニコニコしているだけで止めることはしなかった。
「喧嘩してるの?大丈夫かなぁ」
「イライラだめなの~」
「蜂蜜たべるかな」
そんな様子を見てルクレツィアに興味を持った生き物たちが集まってきた。
「ほれルークよじゃれ合うのもそのくらいにして皆に自己紹介せんか。それとお前からあふれていた魔力はお前の感情に左右されるゆえに常に冷静であらねばならん。淀んだ瘴気にも清らかな魔素にもなるお前の魔力は、心の持ちようで如何様にも変わるんじゃ。あ―それと漏れ出ていた魔力は《エクスカリバー》が全て吸収してくれていたから問題ないぞ。ただ余りに強い感情を込めすぎると
「わぁ、ありがとうございます《エクスカリバー》!流石相棒!貴方達ほど私を支えてくれるものはありません、これからもよろしくお願いいたします!」
人の話は最後まで…はぁまあ良い。みんな以前から話していたワシの弟子ルクレツィアじゃ。アホで問題ばかり起こすが実力は確かじゃ。これから長い付き合いになるじゃろう、仲良くしてやってくれ」
ゴルバチョフは《エクスカリバー》を抱えニコニコと嬉しそうなルクレツィアを見て怒る気が失せたのか、ため息をついてルクレツィアを紹介した。
「こんにちは、ルクレツィアといいます。師匠のようなすぐに戦おうとする脳筋ではないので皆さんと沢山お話をしてみたいと思っています!これからどうぞ宜しくお願いします。」
「「「「「「よろしく~」」」」」」
色鮮やかな鳥やフワフワなウサギのような小動物などの姿をした精霊や、美しい翅をもち15センチほどの大きさの妖精などが笑顔でルクレツィアを歓迎した。魔法を使っているのかキラキラとした光がルクレツィアと《エクスカリバー》を包み込み花々が舞い散っていた。美しい舞を踊りながら飛び回りはしゃぐ姿は幻想的で、ルクレツィアは魔法以外でここまで異世界を強く感じたことはなく、自分の前世の常識が当てはまらない今を生きていると強く感じたのだった。




