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言わ猿

作者: とがわ まどか

『年上の部下に死ぬほど嫌気がさしています。』

 昔映画で見たカトリック教会の懺悔部屋に入ったら迷わずそう言えるのにな。


 依頼した仕事を納期内にできなかった部下の田村さん(54歳・独身)と今週2度目の打ち合わせをしながらそう思った。


「え、北野さん絶対今日までって言いましたっけ?」


 悪びれなく反論してくるのは田村さんのお決まりのやり口だ。

 俺はゆっくりと彼と前回打ち合わせした際のメモを読み返し辛抱強く説明した。


「はい。言ったつもりです。今日までにサプライヤーとウチの設計が合意できていないと、来月の生産ラインへの対応には間に合いません。田村さんも前回の打ち合わせで十分ご理解されていたと思います。」


「僕、北野さんに『はい。できます。』って言いましたっけ?」


 はあ?そんな事を言い争いたいんじゃねーよ。タコ野郎。お前がフラフラ業務中サボってんのは俺の席からも見えてるし、毎日1時間も意味不明の散歩をしてるってグールプから苦情が入ってるんだよ。この給料泥棒が。


 彼を思いっきり罵倒したい感情を抑え、田村さんが持っているカードを拾ってなんとか納期までに間に合わせる策を考える事にした。

 まだ午前中なので俺が今から設計と話せば間に合うかもしれない。サプライヤー調整は田村さんだけじゃ不安なので三島さんにサポートに入ってもらって終わらせよう。


 余計な事は言わない。ストレスは溜まるがこれが俺のポリシーだ。

 

 課長である俺はストレスに耐える必要があるんだ。昔、憧れの上司が言った「上に立つ人は一番我慢強くなくてはいけない。」という言葉の重みがすごくわかる。


 ヘルプに入ってもらう三島さんを呼んで挽回策の話し合いを始めようとした時、同じフロアで後輩の佐藤拓哉の怒鳴り声が響いた。身長185センチ近くあり筋肉質の彼が声を張っている姿は必然的に人の目を引く。


「東崎さん、何回説明したらわかってくれるんですか!」


 佐藤は俺の2期下の後輩だ。彼も昨年課長に昇格し俺と同じように年上の部下がいる。悪い奴じゃないのだが、一回り以上年上の部下をみんなの前でこっぴどく怒鳴るのは推奨されるマネジメントスタイルではない。

 佐藤は上司にも部下にも等しくチャレンジングなのだが、立場が上になるほど発言に気をつけなくてはいけないのに。


「あいつマジやばいっすね。」とボソッと三島さんが言った。

 俺は相槌はうたず、打ち合わせを始めた。


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