私の立ち位置
律子さんが私を繋ぎ止めたい本当の理由は・・
「よく聞いてちょうだい、あたし達は昔からの財閥なんだよ、ただね・・
言いにくいんだけど法律すれすれのこともやってきたんだよ、それと・・
大勢の社員を賄うために日々戦ってきたんだよ!」
「えっ?それはどういう相手と?」
「まず国だね、あいつらは税金といって私達の稼ぎを横取りするからね、
もちろんそれが弱者を救ったりインフラ整備などに使われるのはわかるよ、
だけどね・・立場を利用して理不尽なことをする輩も多いんだよ」
「そ・・そうですね、TVでみる限りですけど・・」
「特に最近の政治家は増税ばかりで節約する考えが乏しいから信用出来ない、
そんな輩にあたし達が稼いだ金を使われたくないんだよ、だから力が欲しい、
あたし達があいつらが一目置く存在になれば暴走を食い止められるだろう?」
「そ・・そうですね・・その考えは理解できます」
「本来は国民がしっかりその輩を監視して選挙で落とせば済む話なんだよ、
だけどこの国は贅沢に慣れていて危機意識が薄すぎるから輩達がつけあがる、
だから長期政権が続くからあたし達は力つけないと叩き潰されるんだよ」
「そ・・そうなんですか?」
「ああ表ではニコニコしてるけどね、隙見せれば即座に叩き潰しに来るんだよ、
あいつらもあたし達がうっとうしいからあのとこの手で攻めてくるんだよ、
だからあたし達もそいつらを監視して敵と判断したら叩き潰さないと危ない」
「そ・・壮絶な世界なのですね・・」
「ああそうだよ、だからあたし達も必死なんだ、そのため部下も大勢必要、
食わせるためもあるけど・・そういう輩と戦うためにも兵力は必要なんだ、
優秀な人材を繋ぎ止めるためにもあたし達は常に稼がないといけない」
「そ・・それはよくわかります」
「わかるなら理解できるだろ?愛華達はそのために劇団を立ち上げ世界を目指す、
そのためには志があって信頼出来る人材を傍に置きたいのはわかるだろ?」
「そ・・そう思います」
「あんたはもう一般には戻れないよ、そして山奥での一人暮らしも諦めな、
仮にあたし達から離れても誰かがあんたを利用しようと関わってくるよ、
まあ男に戻れたら孤立できるけど・・それであんた生きていけるのかい?」
「そ・・相当難しいのは感じます」
「だろ?あんたは気づいてないかもしれないけどある意味ラッキーなんだよ、
この日本であんたを理解してる巨大な組織がアタシ達だったからね、
利用する気持ちはあるけど・・同時に守れる力があるのも確かなんだよ」
「・・・」
「あんたは下手に逃げるよりも今の方が格段に安心できる環境にいるんだよ、
よく考えてごらん、その美貌をいつまでも隠せると思うのかい?
なんかの拍子で見られたらそこで人生狂うよ、そいつが利用するからね」
・・・
律子さんの言葉はよくわかります、これは私が一番恐れていることです、
実際母の行動を見てると・・目立つ私をあえて目立たせ稼ごうとしています、
ですが律子さんの言葉を聞いて・・そうしないと逆にまずいからなんですね」
この世の中何だかんだとお金がかかります、目立つとなおさら必要となります、
最下層の生活だとセキュリティに問題があるし買い物でも人の目が付き纏います、
最悪暴走した輩が攫ったり道連れとばかりに命を狙いに来るでしょう。
それとこの日本は・・・
・・・
理不尽な裁判を見てると加害者に甘く被害者は泣き寝入りの話をよく聞きます、
そのための法整備なのですが律子さんが言うとおり理不尽な輩も数多くいます、
それらは下手に改正されると都合悪いからあえて先送りばかりしています。
・・・
律子さん達は・・・
・・・
見えない巨大な敵と戦っていることは理解出来ました、それと同時に・・
私は男に戻らない限り・・律子さんの傘の下にいないと危ないと悟りました。
「どうやらアタシの言葉が理解出来たようだね、なら晴翔の傍にいなさい!
まあ結婚は沙綾香とさせるけど晴翔はあんたに惚れているから傍に置いておくよ、
性欲がほとんど無いようだからアタシ達もそれなら安心できるからね」
つづけて・・
「あんたは晴翔が苦手のようだけどね、でもあの子は本当に優しいのよ、
たださっきも行ったとおり立場上弱みは見せられないんだよ、だからね・・
あの子も安らぎが欲しいんだよ、それがあんただと思えるんだよ」
これを聞いた私は・・・
猛烈な寒気と同時に・・・
・・・
晴翔さん達からもう逃げられないという・・
・・・
今の己の立場を理解したのでした。




