紙一重
今俺は下の階の台所で父さんと母さんと一緒に食事している、
当然ながら・・無事男の姿で食事にありつけている。
あの時苦肉の策とはいえ・・押入れに隠れた俺は幸運だった、
まさか押入れの中に充満していたカビで助かるとは思わなかった、
ふすまを押さえていたらカビが舞い思わずくしゃみをして難を逃れた。
まさに紙一重!九死に一生を得たような気分だ。
ただ母さんからは変な目で見られたけど・・
おまけに返事が無いからと言われかなり怒られた。
「ごちそうさまでした」
食事が済み部屋に帰る俺、さてこれからどうしよう?
こんなこと繰り返していたらいつかはバレるのは間違いない。
巷で話題の異世界なら魔法だのアイテム等で凌げそうだが・・
俺の場合は思いっきり現実世界、その手の凌ぎは到底出来そうにない、
特に怖いのがスマホやネット、こういうのはあっという間に広がる。
特に親父にバレたら・・確実に実験台にされそうだな。
・・・
正直めちゃくちゃ怖い。
俺は不安を抱えながら寝床についた。
翌日・・
俺はこの日担当教師と進路で相談していた。
「どうする?この大学なら今の成績でもなんとかなりそうだぞ、
ただお前が住む家からかなり遠いからアパート暮らしになるけどな、
資金面で問題なければ確実に入れるおススメの大学だ。」
「えっ?寮はないんですか?」
「この大学に寮は無い、昔はあったが学生不足で閉鎖したそうだ、
まあ近隣に1Kアパートは沢山ある、生活に問題はないだろう」
「他にはないんですか?」
「あるにはあるが・・今の成績だと相当厳しいぞ、どうする?」
・・・
「どちらも受験させてください」
「わかった、手続きしておこう」
俺に推薦された2つの大学・・
ひとつは無名の大学で家から遠く一人暮らしは確実な状態、
近隣に工場が多くそこで働く社員が住むアパートが多数あるらしい、
そのためスーパーやコンビニ等も多く生活には困らないそうだ。
もう一つは家から近いが志願者も多い最近改装したある程度の有名校、
全体的に見ると中の上レベルだが大手会社と複数つながりがあるらしい、
そのため卒業後はそれらに就職できる可能性が高いので申し込みも多い。
ここに進学できればその先・・大手の会社に就職出来れば独立も可能だ、
テレワークがメインの会社に就職できればバレる可能性も低いだろう、
そうなれば人との関わりも減るからこの体質でも無難に過ごせるだろう。
電車で通えば20分位、こちらは厳しいが出来ればここに進学したい、
自宅が使えれば何かと便利はいいけど・・でも一人暮らしはする予定だ、
これ以上親と住んでいたらバレる可能性大だからな・・
よし!
俺はその日から猛勉強を始めた。
寝るのも惜しんで勉強したのは・・生まれて始めてかもしれない。
とにかく俺は焦った、このままだとバレるのは時間の問題だからな、
どうかしたら生命の危機になるかもしれない・・俺はとにかく勉強した、
まずは親と離れるためには大学に進まないといけない。
学校から帰るとすぐ部屋に籠り勉強三昧、妄想も忘れるほど熱中した、
学校でも同じ、同級生から冷めた目線も感じたがかまっている暇はない、
とにかく俺は命がけ、ひたすら勉強して毎日を過ごしていた。
その甲斐あって模擬テストの成績は・・なんと80点越え!
教師からも褒められた!これならいけるんじゃないか?とも言われた。
俺は手ごたえを感じた、これなら志望大学に進むことも夢じゃない!
だが油断は禁物、ほとんど毎日寝る間も惜しみで勉強を続けた。
いざ受験!
不思議と焦りは無く答案用紙に答えを書いていく、手ごたえはバッチリ!
全部の試験を終えた俺は・・安堵からかベンチで居眠り・・・
はっ・・は・・・
!
俺は飛び起きて急ぎマスクをつける、なんとかくしゃみは抑えられた、
そして急ぎ帰宅、寝不足からか俺は夕食も忘れて爆睡していた。
結果は・・・
俺の番号が・・しっかりと看板に記載してあった。