女優?としての勧誘
俺絋・・いや私紗由美は母に言われるまま後をついていきました、
着いた先はある高級ホテル、誰かと待ち合わせしているのでしょうか?
ホテルの最上階に着いた私達、奥の部屋では愛華先輩が待っていました!
「お待たせ愛華さん!待たせてごめんね」
「いえ来て頂いて恐縮です!」
学校では女王の愛華先輩も母には一目置いてるらしく敬語を欠かしません、
2人の独特な雰囲気を感じた私は・・正直逃げたいのですが無一文です、
さらに逃げると警察沙汰になる・・ただただ黙って座り母の言いなりでした。
「愛華さん紹介するわね!この度私の娘になった紗由美よ!」
「えっ?篠崎先輩は息子さんだけだったのでは?」
「それがね~~・・・というわけでこの娘私の娘になったのよ!」
真ん中の説明抜けてますけど?
「そうなんですか~それはよかったですね!」
なにがよかったのでしょう?
まるでテレパシーでもあるかのように母と先輩は意思疎通が完璧でした、
そして話題は私に・・愛華先輩は私を舐めるような眼つきで睨んでいます、
まるで蛇に睨まれた蛙のような私、いつか食べられるのでしょうか?
「篠崎先輩!彼女を私の劇団に入れてもいいでしょうか?」
「う~んいま悩んでいるのよね~この娘相当な美人でしょ?使い勝手がいいのよ」
私を何に使う気なんですか?
「それなら通いでも構いません、次の舞台で使いたいのです」
先輩も何に私を使う気なんでしょう・・
私のツッコミを無視して2人は熱談、かなり激しく話し合いをしてました、
私は・・もう逃げられないのでただ地蔵のように黙り込むしかありません、
まな板の上の鯉とはこのことでしょうか?いつか料理されるのでしょうか?
・・・
30分程白熱した会話を繰り返した母と愛華先輩、どうやら折り合いが・・
「さあ紗由美さん!一仕事してもらうわよ!」
はい?
「貴方には来週から始まる舞台に入ってもらうのよ!」
「えっ?えっ?私役者なんて出来ませんけど?」
「それなら心配ないわよ、貴方にぴったりの役柄があるのよ!
貴方はただ私のいうことを聞いて役を行えばいいのよ!」
「えっ?それはどんな役なのですか?」
「貴方がコスプレ大会で演じた乞食娘をそのまま演じてもらうのよ!」
またあの格好をさせられるのですか・・?
「今度は舞台の上だから問題ないわ!」
どこが違うのでしょうか?
私からすると単なる見世物扱いなのですが・・相当人気が出たようです、
なんでも私の乞食姿が演じているように見えなかった、本物のようだと・・
・・・
まあある意味今の私は乞食より厳しい存在なのですが・・
今の私は「篠崎紗由美」という名前以外は何もないただのプータローです、
帰れる家もなく身内も無く男の時の持ち物は全て没収された裸一貫の女です、
おそらくこの先男に戻れることもないでしょう・・
・・・
先が見えない恐怖で青ざめる私、確かに今の私なら乞食にぴったりでしょう、
いえむしろ乞食と言われる方々より私の方が絶望的な状況のような気がします。
だって・・
私は元々この世界にはいない人間ですから・・
・・・
私の気持ちを察したのか・・母がある提案をしてきました。
「紗由美さん・・あなた過剰に心配してない?」
「えっ・・いえいえ・・私に出来るかなって・・」
「嘘言わなくていいわよ、あなたこの先の事が不安でしょうがないのでしょ?」
「は・・はい・・今の私にはなにもありませんから・・」
「なら・・あなた本当に私の娘となる?」
はい?
「実はね・・私の戸籍にはあなたと同じ名前が記載されてるのよ」
そういえば書いてありました・・でも?
それって犯罪じゃないのですか?
「そうじゃないわよ!私達どうしても娘が欲しくて欲しくて・・
絋には黙って・・というか驚かそうと思って施設の子を養子に・・
でもその娘は・・その前の晩買い物途中で交通事故に・・」
そんな話初めて知りました・・
「でもその娘は一命を取り留めてね~その後親戚に引き取られたのよ、
今では大学生になって時々ライン交換しているのよ、それでね~~
戸籍に名前を記載していたことをすっかり忘れていたのよ~」
なんなんですかそれ?
「だからね~戸籍には紗由美の名前がそのまま載っているのよ~
でも今更消すと猶更怪しまれるでしょ?だからあなたが私の娘になれば・・
戸籍に嘘ついた事にはならないでしょ?」
思いっきり問題だと思いますが・・
「だからあなたは・・・私の娘になるべきなの?わかるでしょ?
あなたは行くところ無いんだから言うことを聞きなさい!」
その後も母は私を勧誘、行く先がない私はその言葉に逆らえません、
翌日から私は愛華先輩の劇団に強制参加、皆の目線が怖かったです、
何かと睨まれるので・・舞台の時以外は怖くてその場にいられません。
なので・・
休憩の時は屋上等に逃げお弁当を一人で食べる日々が続きます。
ちなみに・・
母は私にお金は一切持たせません、その理由は逃げるからと・・
そのため私は一円も無く自販機で飲み物を買うことすら出来ません。
一応劇団にはジュースやお菓子等が無料で飲食出来る休憩室があります、
ですが私は・・劇団員さん達の目線が怖くて部屋に入ることすらできません、
なので休憩の時は逃げるように屋上等に移動し水だけで過ごしています。
・・・
このような日々が2か月ほど続き・・
・・・
私は明日から・・
・・・
女優としてデビューすることとなりました。