第21話~激闘前夜・それぞれの思い⑥~
「――私、ほんとにバカでした……。お金に目が眩んでたとはいえ、あんな連中に加担してたなんて、恥ずかしい……!」
そう言うと、白鳥の目にまた涙がにじんだ。すんでのところで思い留まれたとはいえ、犯罪の片棒を担いだ後悔は重くのしかかっていた。
「ゲームへの偏見は、昔も今も変わらないよ。
世界でeスポーツが流行り始めた頃も、日本は特に『ゲームは俗悪』と決めつける人が多かった。そのせいで、浸透するのも世界的に見て遅かったんだ。
ああいう人たちは、決まって同じ考え方をしているからね」
槍一郎の言葉は、聞く者の胸にも問いかけてくるような重みがあった。そこへ剣が畳みかける。
「それに、現実でもゲームワールドでも、勧誘詐欺は増える一方やしな。
副業を持ちかけるマルチ商法とか、最近はプレイギアからプレイヤーIDを抜き取る詐欺も多い。おじいちゃんによう注意されたわ」
現代にも通じる話が飛び交うなか、レミが白鳥に問いかけた。
「仮にあたし達がブラックヘロンをやっつけても、貴方が加担した分のツケは、いずれ必ず返ってくるわ。それを承知であたし達に協力する、ってことでいいのね?」
「もちろんです。私のしたことが帳消しになるとは思っていません。でも、これが助けになるなら……。
――そうだ、もう一つ大事なことを聞いたんです!」
「何や、大事なことて?」
「ブラックヘロンのボスが、D-Z計画の実行前に――」
◇
占拠されたゲームワールド総本部。回想は、白鳥が逃げ出す直前に戻る。
彼女はそこで、ボスとWGC社長・外崎の会話を耳にしていた。
『ブラックヘロンのボス……いや、大鷲英機!
貴様、50年前のゲームワールド・オンライン開設を、まだ根に持っているのか!?』
縛られた外崎をよそに、ボス――大鷲はふんぞり返っていた。
『当たり前だ。我々が発明した【超高密度次元転送パス・トランスホール】を、ゲーム好きの科学者に奪われ、馬鹿げた世界を築くために使われたのだぞ。そのうえ今や、腐敗した時代の象徴扱いだ。この屈辱が貴様に分かるか!』
【超高密度次元転送パス・トランスホール】とは、現実世界と電脳情報空間・ゲームワールドを行き来するための転送装置である。
VRやARを超え、人の心身を丸ごと電脳世界へ転移させる。その英知の結晶がVRMMOに使われたことに、大鷲は憤っていた。ブラックヘロンのボスの正体は、50年前にトランスホールを開発した元科学者の一人だったのだ。
『今度はこのトランスホールで、くだらぬ時代を作った者どもに報復してやる。貴様も含めてな!
ゲームなどという俗悪なもの、私の手で消し飛ばしてくれるわ!』
◇
白鳥の話に、剣たちは絶句した。首謀者の正体、テロの目的、そしてゲームワールド消滅の危機。どれも頭が追いつかない内容ばかりだった。
(大鷲……その名前、確かおじいちゃんから聞いたことがあるぞ――!)
剣は必死に記憶をたどったが、思い出せなかった。
一方、D-Z計画の計画書を読んでいた槍一郎は、今の話ですべてに合点がいき、決意を固めた。
「……何としてでも、ブラックヘロンを止めるぞ。これはテロで片付く話じゃない。無差別殺戮にもなりかねない!」
「よぉし、ブラックヘロン討伐、やってやらぁ!」
鼓舞する剣の背後に、人の気配が迫っていた。
「――剣くん、危ない!」
――バチィッ、カァン!
ベッドで眠っていたみのりが目を覚まし、気配に気づいて叫んだ。鉄パイプとスタンガンの一撃を、剣はとっさに身をかわす。
ブラックヘロンの団員たちが、剣たちを嗅ぎつけてきたのだ。
「誰を討伐するだぁ? 下等プレイヤーと……裏切り者が」
「この世界を消す前に、まずは貴様らから消してやるよ!」
狙いは白鳥と剣たち。先ほど病棟で返り討ちにされた団員も加わり、殺気立って襲いかかってくる。
「さぁ~て、そう簡単に消せるかな……!」
ブラックヘロンへの叛逆を決めた矢先、雑兵に狙われたシャッフルメンバー。さらに遠方では、立海遊戯戦団が動き出していた。それぞれの思惑が交錯する三つ巴の動乱が、すぐそこまで迫っている。
◇
次回はいよいよ、第2章の後半戦へ突入!
ゲームワールドの存亡をかけた戦いの火蓋が、切られる――!




