第20話②~プレイヤーの研究所~
「――前に矛玄さんが言ってた。
『力を持つ者には2つの魂がある』って」
「……おじいちゃんが?何だよ2つの魂って」
剣は槍一郎が発した祖父の矛玄の名前に反応するように話を聞いた。
「1つは【正義の魂】、正義といってもヒーローの概念に拘らず、己を信じ己の信念を貫き通し正しき方向へ導き示す心を意味する。
もう1つは【邪気の魂】、我を見失いただ己の欲望を欲するがままに破壊や殺意を覆う人の道外れた魂、それに囚われし者は栄光か破滅への道かを選ぶしか術なし」
「……急にマジな話になっちゃったけど、何が言いたいんだよ?」
剣はさっきまで泣きそうになってたのが小難しい話で眉をしかめていた。
「分かんないかな……要するに!
力のある強いプレイヤーってのは考え方次第で英雄にも悪役にも成りうるって事!!」
槍一郎もそんなにムキにならなくても良いと思うが。
「……剣はどっちの方が良い?英雄になるか、落ちぶれてグレて終わるか!?」
「――!!」
剣は目が覚めたかのように何かに悟った。
「前者だ、当たり前だろ?俺が最強のプレイヤーを目指すのは自分の為だけじゃねぇ。大事なものを守り通すため!!
その為に『剣』抱えてゲームやってんじゃねぇか!!!」
槍一郎は剣が活気を取り戻したと同時に笑みを浮かべた。
「分かってるじゃないか!じゃ話は早い!!今から剣や皆には『英雄』になって貰わなきゃ!!そして僕もね!!!」
「ちょ、ちょっと!槍ちゃん何処に行くのよ!?」
「――決まってるだろう?英雄になるためにうってつけの所だ!」
◇◇◇
向かった先は同じくプレイヤーバザールエリアの南西にある静かな土地、バザールとは多少無縁な研究所である。
「……俺達実験台にされるんかな?」
「いやぁ!私解剖されるの!?寝たきりだし」
「アホ!!こんな緊急時に実験するか!みのりも乗らないでよろしい」
余計なボケはほっといて、この研究所を説明しよう。
――この研究所の名は【プレイヤーズ・ラボ】。
プレイヤーのゲームプレイの様子やステータスの変化、各ゲームの攻略研究等を行っている。
研究所の無数のコンピュータから、ゲームのリプレイ等の映像データが多数眠っているのだ。
しかし、槍一郎がここを選んだ理由は別にあった。
「ここで何をするんだよ?時間も無いのに」
「少ない時間でも剣達にとって充実する事をやって貰う。――その前に!」
槍一郎はプレイギアを開きながらみのりに質問を持ちかけた。
「みのりちゃん、マインスイーパの決勝で戦った烏田って男とゲームしてどんな感じだった?」
「?――えーと、何か冷たく怖そうな感じで……そうだ!何か右手が光りだして私、操られていたんだ!!」
「「「操られていた!!?」」」
「……もしかしてそれは、【遊奥義】とかいう技かな?」
「そうそう!!そんな事言ってた」
遊奥義――!!
読者の皆さんは覚えているだろうか、かつて槍一郎と初めて出会い仲間になった時に見せたあの技――!
『ランサー流 遊奥義!!『疾風怒濤』!!!!!』
そして、レミが予選3rdSTAGEで見せたあの能力!
『遊奥義・【BLACKBOX】発動!!』
これらも同じ『遊奥義』という技・能力である。
「――これで分かったよ。
そいつはブラックヘロンの一員だが、『B.H Bat』でイカサマをするような奴じゃない。本物の実力者だ」
これを聞いた剣もそろそろ疑問に思うことが出てきたようだ。
「自分だけ理解してないで俺にも教えろよ、何なんだよその遊奥義ってのは!」
「遊奥義ってのは、プレイヤーの極限を越えた能力の1つだ。
プレイヤーステータスの『プレイヤースキル』のような技よりも優れた潜在能力が存在するんだ。
僕が前に剣に見せた技も烏田の能力もそれに値する」
「そんなマンガみたいな能力が……」
「有り得るんだよ。プレイヤーの力は無限大だからね」
この物語自体がマンガみたいだとつっこむのは野暮なのでスルーしておこう。
「だが、遊奥義が凄い訳じゃない。プレイヤーにも十人十色といて色んな能力を持っている。
下手すればゲームの本質さえも狂わせる能力を持つプレイヤーだっている。
その能力はプレイヤーのプレイスタイル、そしてゲームに対する意思で姿を変える!――魂の形で!!」
魂の形で姿を変える能力――!?




