第54話②~最低、最悪、災厄な展開~
剣と穂香との間に長い冬を越し、わだかまりが溶けていったのも束の間……
城内に響き渡る通信の声……悪魔、死神、道化師……いや、それ以下にも劣る下衆な笑い声が戦いの後始末を全てぶち壊していった。
『言ったな!? 今の言葉言ったよなぁぁぁぁ!!? ヒャハハハハハ!!!!』
その瞬間だった。天井に浮遊していたG-パーツのエネルギー増幅装置が暴走にも似た異音を響かせる。
「ちょ……オイオイオイ、やべぇんとちゃうかオイ!?」
「お父、様……!?」
剣と穂香は天を仰ぎ、G-パーツの異変に察知した。
「――オイ史也兄!! どうなってるんだ!!?」
◇◇◇
銃司がプレイギアで応答したのは同じ城内のコントロールルーム、G-パーツの装置を管理している参謀長・大門 史也だ。
「……ちょっと待て、何なんだこの仕掛けは――!? 何故増幅装置に転送回路が仕掛けられてるんだ!!?」
――転送回路。それはこのゲームワールドからプレイヤーが転送するのに使われる『トランスホール』を縮小させた小型装置で、主に物質やアイテムを遠方に転送させるために使う。
それがG-パーツに仕掛けられた、という事は……!?
「……ッ、ダメだ!! 奴に奪われる!!!」
◇◇◇
そして転送の準備とばかりに、玉座に浮かぶG-パーツがうっすらと消えかけていく……!
「野郎ッッ、そうはさせるか!!!」
剣が抱えた穂香を下ろしてG-パーツを取ろうとするが。
「動くな、貴様は穂香を守れ!! 俺が取るッッ!!!」
代わりに銃司が全速力でG-パーツを取りに向かう……が、手が届く寸前で完全に消えてしまった!!
「くっ……!!」
空振りしたそのスピードに身を投げ出され、銃司は転がりながらその反動を受けた。
『クッククククククク……! あと一歩、遅かったなぁ……!!』
玉座や各部屋から、ホログラフィーとして中継を送る画像モニターが張り巡らされる。
そして彼方の転送された先の装置から、G-パーツが溢れ落ちる。辺りを見下ろすと、漆黒の空と人類が滅び去った末路のような荒れた建物が散らばっている。
そう、転送された先は【超次元空間】、穂香の父 大森 賢士朗の研究所だ――!
『ありがとうなぁ、剣君。素晴らしいトランプを譲ってくれて……! 確かにこの手で受け取ったぞ!!』
「お、お父様……」
穂香は父への圧力にも似た恐怖と動転で不安が収まりきらなくなっていた。
「コイツが……真のラスボスって奴か……!」
剣はまだ彼の存在をこの目で見ていない。だからこそ遠くからでも迸る威圧感、そして狂気が身体全体を襲ってくる。
「こんなバカな事が……G-パーツは隅々まで確認した筈だ、それでもこの私が……見落としていたというのか――!?」
立海のブレイン、完璧主義者の史也もこの展開は予想だにもせず、愕然と落胆した。
G-パーツを確保する上で完璧に計画したから、何度も確認したからこそ、その絶望感は並大抵の強さではなかった。
『それはお前が浅はかだっただけに過ぎん。良く考えてみろぉ?
――お前はこの20年以上の人生でどんな本を読んで、どんな知識を蓄えてきた?
――そしてそれをゲームやビジネスにどれだけ活かしてきた??
――常識を覆すようなテクニックや造物を作り出して来たか???
――――青二才が知識豊富な大人に勝てる筈がねぇだろォォ!!!?』
賢士朗は数々の研究で常識から離脱した奇妙な開発をしてきた。1nano以下の転送装置に、ゲームワールドのエリアを破って作った超次元空間……
思考回路を凌駕するような鬼才と名高い彼に論破された史也は、
「………………言葉も、無い――!!」
完全にしてやられた。史也はその未熟な自分の頭脳に嫌悪感すら覚えかけた。
『半端者はそこで頭でも冷やしてろ。さて……
はじめまして、だったかな? 切り札騎士の桐山 剣君。私が大森 賢士朗、超次元空間の神となる男だ――!!』
「………………」
剣は賢士朗を鋭く睨み付けて、苛立ちの意図全開とまでに威嚇を始める。
『……何だ? 人が挨拶してるのに君は礼儀も弁えんのかね?』
「誰が挨拶するかボケ。あと人の話はちゃんと聞いとけ。G-パーツを譲るつったのは穂香で、親父にやるとは言ってねぇんだよ……!」
剣、今までに無い以上にブチキレています。
『そう固いことを言うな、君の真っ直ぐな騎士道精神で見事にこの遺産を手中に収めたのだ、君にはとても感謝してるのだよ。“絆”という低俗な情に揺らいで、隙を見せてくれることを信じてたのだ!!』
「『低俗な情』だぁ……? お前大阪の埋め立て地のヘドロよりも汚ぇな、オイ!!」
「……それは、我々が敗北することも見越してた事か? 超次元の神」
物言いしたのは、銃司だった。
『そこは予測しなかったがな。だがお前らはゲームの勝利にいちいち酔うタイプだろうからな、そこで浮かれた隙に奪い取るつもりだった。チームが揃いも揃って馬鹿だろうからな』
「……ほぅ?」
冷静に受け流す銃司、しかし彼の眉間から凄まじいほどに青筋が浮き上がっていた。
『立海遊戯戦団にシャッフル・オールスターズ……凡人どもからかき集めたゲームチームが勝手に争いあって潰しあった挙げ句にこんなにも都合良くG-パーツが手に入った!! 最高の気分に笑いが止まらんわ!!!』
「……それは結構、おめでたいことで。こっちはクソ最悪な気分だがな……」
「そいつぁ俺も同じだぜ、銃司……」
剣と銃司、リーダーが揃いも揃って仲間を侮辱されて胸糞悪い状態だ。
「……で? 今からG-パーツ片手に異世界征服でも決行するつもりか? それこそ馬鹿のつけ上がりだろう?」
『馬鹿はお前だ。さっきまで参謀長とか名乗りながら常識尺度の狭さに恥を晒したばかりだろう?
G-パーツは単体で動かしても世界は奪い取れん。燃費も極端に激しいから非効率も甚だしい。だからそれを最大限に活かす装置を使うんだよぉ!!』
「……何だよ、遺産を悪用し尽くして何しでかす気だ――!?」
狂気に駆られた者が悪巧みを企む時こそ恐ろしいことはない。剣の額から徐々に冷や汗が出始めてくる。そんな中で……
「……お父様!! お願いです、もう止めてください!!!」
「ちょ、オイ戻れ穂香!! 危ねぇぞ!!!」
剣の手からするりと抜けて、穂香はボロボロの身体を押して父に想いをぶつける。
「……私はこの通り負けてしまいました……ですが、お父様もこの手に触れてみて感じませんか!? このG-パーツには、剣さんの温情が込められているのです!!
だから……私のみならず、剣さんの心を踏みにじるのは止めてくださいッッ!!!」
なんと健気な子でしょう。しかしそんな温もりも狂いに飲み込まれた者は容易く踏み潰される。
『……却下だ。お前らガキの温情など大人からすれば単なる玩具も同然だ』
「このクソゴミがぁ……!!! てめーこそそのトランプ片手に何しようってんだよ!!!!」
『G-パーツに眠る膨大な闘争エネルギーを我が糧にする。簡単に言えば……
――――私の身体にG-パーツを吸収する」
「…………はぁ???」
『ガキはそこで見ていろ!! 私のPASにG-パーツを取り込み、最凶の力を得る様を!!!』
「ふざけてんのか!? 止めろコラァ!!!」
『止めねぇよバーーーーーーカ!!!!!☆☆』
……アンタの方が一番ガキじゃないですかねぇ?
ガキ……じゃなくて賢士朗は『PASエネルギー増幅装置』を使い、アメイジングカードのエネルギーで力を得るところを、敢えてG-パーツに置き換えてセットさせる。
まるで寄生虫に犯されたかように身体全体に装置でエネルギー注入させる管を張り付くし、装置を作動させる。
『ぐっ……!!』
しかしエネルギー注入による尋常じゃない痛みが賢士朗に襲いかかる。
アメイジングカード1枚とG-パーツのエネルギーの格差は1億倍もの膨大であるから当然である。
『道具風情が……私に逆らうな、愚の遺産がああああああああああああ!!!!!!』
「…………!!」
金色の輝きを持つG-パーツのエネルギーが賢士朗に全て吸い付くされ、G-パーツの物質そのものが消失してしまう。
「……G-パーツが、消えた……!?」
遺産の消失をただ見守ることしか出来なかった剣達3人に、無念の意が駆け巡る。……その一方で!!
『……素晴らしい、実に素晴らしいぞ、この至高なるパワーが全身に溢れてくるようだ!
――だが、本番はこれからだ……!!』
すると賢士朗は周囲の巨大な機械の電源を作動させて、その頭上にあるアンテナに禍々しい紫色のエネルギーが蓄積されていく……!
『とくと見よ、私がお前らに送る至高のゲームを!! 【SUPER DIMENSIONS GAME―スーパー・ディメンジョンズ・ゲーム―】、起動だッッ!!!!!』
――ギュビィィイアアアアアアア!!!!!!!
アンテナに満たされた混沌のエネルギーが大量に放出され、超次元空間と天空エリア『ヘブンリー・ゾーン』を繋ぐ次元の裂け目に、解き放たれた!!!
ゲームワールド・オンラインに……災厄がやってくる!!!!!
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