第54話①~神の裁き~
一人の親友を救う事を引き金に、2つのゲームチームと異世界の遺産を巡る戦争は幕を卸した……筈だった!!
だが友よ、君は何故……『家族』という名を捨てきれず、狂乱に満ちた廃者にすがり付き魂を売ったのか!?
その荒れ果てた暴挙に、ゲーム戦士の怒りは爆発する!!!
オープン・ザ・ゲート!!!!
――アメイジング・ウォーズは終わった……
立海遊戯戦団に打ち勝ち、最大の壁となっていた|大森穂香に勝利し、桐山剣は玉座の床を仰向けで大の字になり、天井・宙に浮かぶG-パーツを眺めながら途方に暮れる。
――好敵手、銃司のリベンジも果たした。
――穂香にも勝つことが出来た。
――後は目の前のG-パーツを取り戻すだけ。
――――――なのに。
何かが足りねぇ…………
そんな不安が剣の頭の中を駆け巡る。
「……よっと……!」
そして剣はようやく身体の自由を取り戻して寝転がっていた上半身を起こすと、壁の向こう側で穂香がまだダメージが残っているようで、満身創痍で声を振り絞った。
「…………わた、しの……負け……で、す……」
「穂香……」
剣は咄嗟に駆け出し、穂香に手を差し伸べようとするが。
「大丈夫です……立てます、から……」
その情けを振り払い、自らその身体を起こす穂香。
「略奪を働いた私が貴方にゲームに敗れたのです。もうこれ以上恥は晒されたくない……今G-パーツの装置も外しますから……」
「あ、あぁ……」
穂香がG-パーツのエネルギーを増幅させる装置の解除に勤しむ中で、剣は更に心に迷いを揺らがせた。
明らかに先程のゲームの敗北で、穂香の心境から自棄的なものと恐怖心を醸し出しているのが剣にも見えていたから。
「………………」
穂香の父の暴挙を止めるべきか、親友への良心に従うべきか。ゲームに勝利した筈の剣の魂に、曇った何かが判断を鈍らせていく。
(……G-パーツを奪い取って、槍一郎さんの邪魔もして、剣さんやみのりちゃんや倭刀達に辛い思いをさせて……私は何のために戦ってきたの……?)
そして、穂香の脳内に巡る混沌の如き二つの記憶……
――人のあるべき良心を滅ぼし、傍若無人に暴挙を繰り返す現在。
――穂香が生まれる前の優しく包み込まれた家族の過去。
記憶の縁にある光と影が、穂香の荒みきった情緒に残酷なまでに刺激させ、解除を進める手を止めて崩れるように涙を落とす。
「ぅ…………あぁぁ……! わああぁぁあぁぁあああ……ッッ!!」
可憐で端正な顔が無様にも潰れ泣くその様子を目の当たりにした剣は……
「お、お、大、尾、御雄、おち、落ち、餅、月、ちゃうて、落ち着けって……!!」
だから剣さんが落ち着きなさいッッ、テンパりすぎてラップ調になってるぞ!!
「も、もう……これ以上無い恥でも構いま、せん……でも、剣さん……どうか、どうかっ……! 私にG-パーツを譲って頂けませんか……ッッ!!」
「……!!? おま、それは……」
……何故彼女をここまで、堕落させたのか――?
穂香は床に顔面を張り付けてまで、そしてゲームのルールをも破ってまで、必死に土下座の姿勢で剣に懇願した。
「お願いします……! お願いします……!! 何でも致します、から……ッッ!!!」
「な……アホッ! 今すぐ顔上げろみっともねぇ事すんな!!」
「……!!」
その時、銃司は急に険しい顔をしながら穂香に叱咤する。
「――このバカが!!! 今すぐそれを取り消せ!!! !このゲームワールドオンラインでのゲームでのルールを破るなど……」
「うっせぇ今それどこじゃねぇんだ銃司!! ルールとか御託並べてる場合じゃ――――」
「死ぬつもりかッッ!!!!?」
「……………………は?」
その刹那だった。
――――――ドガアアアアアア!!!!!!
「くぁ……ッッ!!!?」
まるで雷のような轟音と共に目映く白い光が穂香の頭上に直撃した。
「ぅぐ……ぁああっ……!!」
するとその光に閉じ込められた穂香の身体が、デジタル粒子の欠片となって徐々に消滅を始めていた。
「ぇ、ぁ…………穂香ッッッッ!!!!!!!!」
剣は無意識に捨て身で消滅していく穂香を包む光へ突っ込んでいくが……
「うぉッッ!!!?」
物凄い衝撃によって、剣は後方の銃司の側まで突き飛ばされた。
「オイどうなってんだよ!!! 何で穂香の身体が消えてるんだオイッッ!!!!」
「く……ぁぁぁぁああああ!!!」
苦痛の叫びをあげながら、穂香の身体は手足から五体へと非情に消滅を進めていく……
「くそッ、にゃろおおお!!」
剣が再び突っ込もうとしたところを銃司が両手を縛り上げて止めにかかる。
「よせ剣! 貴様も巻き込まれるぞ!!」
「離せ、銃司てめぇッ!! お前知ってんならどういう事か説明しろや!!!」
「ゲームワールドオンラインを構築する鉄の掟の一つ、【神の裁き】だ――!!」
「……【神の裁き】――?」
――皆はこの用語に、何処か聞き覚えは無いだろうか……?
かつてG-1グランプリ予選にて、破壊と支配の限りを尽くしたテロリスト『ブラックヘロン』のボス・大鷲がこのゲーム世界の秩序を汚した大罪として……
存在諸とも消滅したこのゲーム世界の神が下す天誅の事を……!! ※第26話参照
ゲームワールドオンラインにおいてはゲームでのルールは絶対である。
そしてそのゲーム内での交渉、アンティは決して破ってはいけない。
だが交渉の内容によってはペナルティも軽減され消滅は免れる可能性もあるが……
穂香はこの世界の遺産G-パーツの譲渡に違反する行為を示した。
更に遺産の略奪にも含めて、ゲームワールドオンラインを否定する事を表しているのだ。
よって最も重い罪として、神の名において消滅という裁きが下された。
存在そのものを残さず消すということは死刑よりも、終身刑よりも、残酷な行為だ……!!!
「…………穂香!! 早くG-パーツを諦めろ!!! んな死ぬんじゃねぇよッッ!!!!」
「…………!」
光の中と、薄れゆく意識の奥で剣の痛烈な叫びが穂香に届いた。
「わ、わた……し……は……」
既に手足は消え去り、上半身にまで消去の波が襲うなかで、彼女の脳裏に浮かぶのは未だ鮮明に残る、優しかった頃の父の面影――!!
「あ、き、らめ……られない…………!!」
「な……オイッッ!!? んな時に意地張ってる場合ちゃうやろ!!!!」
「私は……大森家の最後の子供……! 優しかったお父様に戻って欲しい、生きてて欲しいから……私がお父様を守る盾となる…………!!!!」
消滅しても尚、離すことのない『盾』。
その頑なな意志に、切り札を抱えて戦う騎士はただ愕然と歯を食い縛りながら見守ることしか出来ない。
――――正義とは……なんだ……!?
「くっそぉぉぉッ……馬鹿、野郎…………ッッッ!!!!!」
その時、剣はギラッと銃司の方に鋭い視線を走らせ必死の形相で問いかける。
「……なぁオイ銃司、何か神の裁きを止める方法くらいあんだろ!? このままアイツを見殺しにしたくねぇんだ、頼む、あるって言ってくれよオイッッ!!!!」
「……一つだけある」
「ホントか!? 早く教えてくれ何でも良いんだ!!」
「簡単だ、このゲームの勝者が、アンティで得た権利を破棄するだけだ」
「……!?」
それは即ち、G-パーツを諦めるということ……そしてその破棄はプレイギアの対戦データでの戦歴から先程のゲームのデータをタップの二つ返事で消去させるだけ。
「だがそんな事をすれば先程の激戦も水泡に帰す! それでも」
「交渉破棄だ!!!!!!!!!!」
剣のプレイギアから穂香との対戦データを速攻で削除させた。桐山剣にこれ以上躊躇う理由は無かった。
G-パーツなどどうでも良い。今は意地でも、仲間を守りたい……!
すると、万物をも漂白され無に帰すように真っ白に包まれていた光が一瞬にして消え去り、消滅された筈の穂香の身体が五体満足で元に戻った。
「うぅ……ぁ…………」
裁きからの束縛から解き放たれた穂香は、そのまま崩れ落ちる。
「――はっ、穂香!!」
剣は疾風のように穂香の元に駆け寄り、倒れた彼女を抱き抱えた。
(……剣の交渉破棄によってG-パーツの所有権は再び白紙に戻った、か……という事はこのまま俺が略奪しても問題にはならない……!)
銃司の強欲なままに血走った眼が、G-パーツを目の前に手を出そうとする。
……でも銃司さん、もし貴方の兄さんが生きていたら、そっちはどうしてたんでしょうか?
「………………出来るか。そんな恥さらしな事など」
そう、それでこそ気高いゲーム貴族です。
「大丈夫か穂香。ほら『プレイヤーエナジードリンク』だ」
剣はプレイギアからストックしていたプレイヤー専用水分補給飲料を穂香に飲ませた。
「ん……つ、剣、さん……? 何で……」
「『何で』も『かんで』もねぇよ。目の前でバタンキューで倒れてる仲間をほっとけるか!」
「……私は、剣さんや皆を傷付けました。その上、ゲームのルールまで破って……こんな恥をさらけ出して……生き延びるなんて――!」
「ホント、お前ホンマにアホ! 死んでも身体無くなりかけてもクソ親父守り通すなんてさ!
……でも、俺もまだまだだぜ。大事なものを必死に守ろうとするお前にゃ、ホント敵わねぇ。だから……
――G-パーツ、お前に譲るよ」
「え……?」
「だからこのゲームはお前の勝ちぃ☆ G-パーツトランプもあんなキンキラキンじゃ眩しくてポーカーも出来やしねぇ。だからお前にあげんの、はい決まり!」
「え、いや、でも……!」
「その代わり! ケガ治ったら俺達を親父の所へ連れてく約束でな。ここまで来ちゃ意地でもアイツ止めてやらねぇとお前の為にもならないしな、へへへ!!」
「…………分からないです。何故貴方がそこまで……?」
「穂香は、俺達の大事な仲間や!!
――――漢が仲間の笑顔を守らなきゃ、切り札騎士の名が廃るぜ!」
「…………っ、ぐすっ……!」
穂香の深緑の眼から、新しい葉が芽吹くようにみずみずしい新緑へと潤ませ、目先から大粒の滴がポロポロと大量に滴り落ちて、剣の胸元に泣き叫ぶ。
「……うああああぁぁぁぁぁぁぁん!! ――剣さん……ごめんなさい……ごめんなさい、剣さぁぁぁぁん……ッッ!!!」
「ああああ分かった! 分かったからそんな泣くじゃねぇよ!! 弱いんだよそーゆーの泣かせた思われるからさぁ!!」
「だって……ぁぁぁぁああああん!!!!」
「しゃーないなぁ、じゃ城のベッド借りて休ませたるか……」
……これで、ハッピーエンドならどれだけ良かっただろうか。
二人のわだかまりがほどけていったその時、それを見届けていた銃司の視線に変化が。
急に天を見上げたと思いきや、徐々に銃司は鋭い視線と瞳孔が見開き、苛立ちや怒りが沸々と沸き上がるようにボルテージを上げる。
そしてとうとう……
「――――貴様!!!! ふざけるのも大概にしろッッ!!!!!!!」
一体誰に叫んでいるのか。剣か、穂香か?
――――いや……アイツだ!!!!
「ひぃゃゃあああああああははははははははははッッッッッッ!!!!!!!!!!!!」
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