第52話⑤~窮地に舞い上がる幸ある翼~
【アメイジングゲーム状況】
・桐山剣 HP1100:手札0枚 EG①
ユニット:【時空の使者―クロノス―】(タイムリミット)
ツールカード:【未来からの報酬】(タイムリミット)
・大森穂香 HP2000:手札4枚 EG①
マテリアル:【プラントウォール】
ユニット:【オーク・インカネーション】
【アクアステルス・ハンター】
紅蓮城のクリムゾンの色に染まる玉座の空間に天高く浮かぶG-パーツ。その遺産の下から見下ろせば、フィールド狭しと戦うプレイヤーが二人。
想定を越えた相手のカードタクティクス、更に相手のエースカードの到来に苦悶の表情を隠せない桐山剣。
そして縛られた糸に為すがまま操られるように、感情の概念を書き消し、淡々とゲームを進める大森穂香。
戦況は穂香の圧倒的優勢状態の中で、果たして剣に逆転の兆しは見えるのか!?
……さぁ、ゲーム続行だ! 解説は立海遊戯戦団城主、立海銃司でお送り――――
「誰が解説だ、鈍才地の文」
……鈍才って言い方はないでしょ!!(半泣き)
(しかし……序盤こそ倭刀のカードでキープはしたが、前回の≪アクアステルス・ハンター≫との攻防で全て水泡に帰された。それに剣のフィールドにユニットも無く、手札も0。アドバンテージも絶望的だ)
しかしユニットは無くとも、桜から託された2枚のカードが今か今かと発動のカウントダウンを刻んでいる。
発動した瞬間にカードを3枚ドロー、更にブロック不可のアタッカー≪時空の使者―クロノス―≫が現れるが……とてもじゃないが決定打に成り得ない。
最早この状態で逆転するには、奇跡に賭けるしかないのだろうか――!?
「奇跡でも何でも、やるしかねぇだろ!! ――俺のドロータイムだ……!」
時間経過でデッキから1枚ドローする剣、1枚のカードは救いの施しである。
「そのままアクションカード発動!!」
『アクションカード、【リカバー&ショット】!!』
◎――――――――――――――――――◎
◎アクションカード◎
【リカバー&ショット】
属性:赤 EG:②
・効果:プレイヤーまたはユニット1体を
対象に100ダメージ。その後自分はデッキから
カードを1枚ドローする。
◎――――――――――――――――――◎
「≪アクアステルス・ハンター≫に100ダメージ!!」
既に≪ビルドアップ≫による強化から30秒経っているため、元のステータスAPとDP共に100の状態でのジャストキルだ。
穂香を4枚もカードドローさせた元凶をようやく破壊した剣、更にカードの付加効果によるドロー(キャントリップ効果)によって、またカードを1枚引いた。
これに対して穂香もアクションを起こす。
「まずは≪オーク・インカネーション≫で攻撃です!!」
穂香の手札は4枚、よって400のAPによるダメージがダイレクトに剣にぶつかった。
「ぐっ……」
〔剣 HP1100→700〕
しかし本当の地獄は、ここからだった――!!
「そして私は、マテリアル・ツールカードを発動します」
そのカードのEGは④、だが発動がされてないにも関わらず、心なしかカードから凍てつくような寒気を感じていた。
『マテリアル・ツールカード、【アイスエイジストーン】!!』
穂香の背後から出現した、北極の海深くに眠る氷塊のように澄んだアイスブルー色の巨大な結晶。VR空間のフィールドに寒さや痛みは実際の通りに感じるわけではないが、その結晶の色から見ているだけでも寒気を感じてしまう。
……しかし、フィールドに何か変化がある様子が見えない。
(何や? もうすぐ夏やゆーのに一気に冬に逆戻りするような寒気がする石に、どんな効果が……!?)
厄介な事にならないうちに、≪アイスエイジストーン≫を攻撃しようとカードを発動しようとする剣。
しかしそこで残りEGを確認しようとした瞬間、あることに気づいてしまう。
「……あれ、EGが回復しない――!?」
最後に剣がカードを発動し、EGが①の状態のまま蓄積されていなかった。時と共に回復するEGのルールに従っても、数十秒経っても数値は不動であることに違和感があった。
「……これが≪アイスエイジストーン≫の効果です。私を含め、剣さんのEG蓄積は30秒に①しか回復されません」
「EGの回復を制限させるカードだと――!!?」
◎――――――――――――――――――◎
◎マテリアル・ツールカード◎
【アイスエイジストーン】
属性:無 EG:④ DP2500
・効果:互いのプレイヤーは30秒に
①しかEGが回復しなくなる。
◎――――――――――――――――――◎
アメイジングはスピード勝負。30秒毎とはいえ大きいコストを払うカードを使うのを待てば、あっという間に敗北してしまうこのゲームでは、≪アイスエイジストーン≫のようなロックカードは致命的な効果なのだ。
幸いにも剣は低コストなカードが多くあるためそれほど痛手ではないが、≪オーク・インカネーション≫を前にしてはどのみちそのパワーに圧倒されて終わるだけ。
穂香はそれを見据えた上での発動を決めたのだ。
剣もこの追撃には出かかっていた汗が急に額から噴き出していった。そんな中で……!!
……ボォォォォオオン!!
マテリアル・ツールカードが発動された事により、1枚のカードから時計の時刻を告げる音が鳴り始めた。
「…………≪時空の使者―クロノス―≫のタイムリミットカウンターが0になった事によって、フィールドにタイムリミット召喚!! 出てこい!!!」
クロノスのタイムリミットは3分。それを穂香が発動したカードで10秒短縮、何度も繰り返した結果先にクロノスの召喚から解き放たれた。
時空間から飛び出したハイブリッドヒーロー・クロノス、満を持して降臨!!
◎――――――――――――――――――◎
◎ユニットカード◎
【時空の使者―クロノス―】EG:③
AP:400 DP:400 AS:20
属性 青 ユニット/ソルジャー/ヒーロー
・能力:[タイムリミット]〈180〉
①対戦相手がカードを出す度に
[タイムリミット]のカウントを〈10〉減らす。
②このユニットはブロックされない。
◎――――――――――――――――――◎
(AP/DP共に400で、ブロックされないクロノスは強力だが……、召喚が早まるのを承知でEG拘束を優先させて、≪アイスエイジストーン≫を発動させた分には若干遅かった。早い内に手を打たないと氷河の産物の元に凍りつかれてしまうぞ、剣!)
心の内から好敵手に助言を送る銃司、だが彼が心配せずとも2回目の施しが与えられる。
――ボォォォォオオン!!
ツールカード≪未来からの報酬≫のタイムリミットが0になった!
「≪未来からの報酬≫の効果により、俺は3枚カードをドローする!!」
下手をするとこの3枚がゲームの運命を左右することになるだろう。運が悪ければ……穂香のユニットによって制圧されるのみ、果たして――!?
「行くぜ、トリプルドロー!!!」
《3CARD DRAW》
(………………まだ足りてない……だけど、これなら行ける!!)
足りてないとはどういう意味であろうか? 意味深な言葉を残しつつ剣は即座にカードスキャン!
『マテリアル・ツールカード、【ボンドストーン】!!』
◎――――――――――――――――――◎
◎マテリアル・ツールカード◎
【ボンドストーン】
属性:無 EG:②
・効果:このカードがフィールドにある限り、
自分のEGに常に①加える。
◎――――――――――――――――――◎
これは桜とのバトルでも使われたEG補給マテリアル、これならストーンの束縛に気にせず①のEGを使える!
「じゃ早速その≪ボンドストーン≫の効果でEG①でユニットを召喚するぜ!」
剣は手札からカードをブレスにスキャンしようとしたその時、遠目で見ていた穂香がそのカードの色に気付いた。
「え……、緑――!!?」
穂香が驚いたのは、剣の使うデッキには『赤』『黄』『青』属性の信号3色デッキを使ってる事を彼女は知っていたから。
勿論その後も桜や銃司でもその3色で戦っていたが、緑属性のカードは一回も使っていなかった。
「……気付いちゃったか! 今から俺の出すカードはEG①、そして緑属性!! 多分それは、お前が一番知ってるカードだぜ!!」
『ユニットカード……』
「――――出てこい、【ブルーバード】!!!!」
カードスキャンと同時に剣のブレスから緑の弧の滑空線を描いて、青い翼の小さな鳥が空へ舞い上がった!
穂香との絆を結んだ幸せの青い鳥、≪ブルーバード≫参上!!!
◎――――――――――――――――――◎
◎ユニットカード◎
【ブルーバード】EG:①
AP:100 DP:100 AS:5
属性 緑 ユニット/バード
・効果:[フライヤー]
①このカードを攻撃する代わりに
EGを②加えることが出来る。
◎――――――――――――――――――◎
「ブルーバード……!!!」
これには穂香も茫然と立ち尽くす。
「……こいつはな、お前とまた戦うまでずーーーーっと持ってた大事なカードや。ブルーバードも無茶苦茶会いたがってたぜ!」
ゲーム開始前に剣がシャッフルで忍ばせたのは、倭刀や桜のカードだけではなかったのだ。
アメイジングではデッキを入れる際のカードの種類によるリスクは余り存在しない。剣のデッキの特性を掻い潜っての4色採用となった。
現にEG束縛の状況にEG供給の救いとなる≪ブルーバード≫はまさに助け船となっているのだ。
「倭刀に、桜さんにだけでなく、みのりちゃんのカードも……デッキの相性が歪むのを承知で何故そこまで――!?」
困惑する穂香に、躊躇わず剣が話を割る。
「…………言っとくけどこのカードはみのりのじゃねぇぜ。お前のだろ? ――本当はお前も、倭刀や皆の元に帰りたいんじゃないのか?」
またしても、剣の言葉に穂香の良心が突き刺さる。『帰りたい』という感情が諸に……
「…………何度も仰った通りです。もう私に戻る所などありません! 現に≪ブルーバード≫も貴方の元に手放したのですよ!!」
「戻れないって何だよ? バカ親父の言い付けでG-パーツ奪うのに片棒背負ったからか!?
……ってか俺らとG-パーツは元々関係は無いんだよ!! WGCの持ち物にとやかく言われても俺らは全く関係ありませんッッ!!!」
……そーいえば剣、政府の所持物のG-パーツ強奪に巻き込まれただけの話だったよーな。今更言っても野暮でしょうか。
「それ企てた銃司や立海との戦争も終わったんや、後は黒幕に糸引かれてるお前を助けるだけや穂香!!」
「それでも私は――――剣さんをはね除けてでも御父様を守りたいんです…………ッッ!!!!」
意地でも唯一の家族であり、この事件の黒幕である父を守りたい。そんな頑な気持ちが重圧として押されながらも、穂香は力一杯唇を噛み締め堪えていた。
「…………それも、何度も聞いたぜ……耳にタコ出来るくらいにな。ゲームを続けようぜ」
剣はさりげなく呟きながら、穂香の追撃に備え構えを取った。
幸せの青い鳥≪ブルーバード≫が、穂香の幸せを守り通せるのか――!?
次回の更新は5月22日(金)を予定しています!
お楽しみに!!
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