第52話③~ゲームに『絆』という名の嵐が吹く~
◇◇◇
――それは、紅蓮城『バスター・キャッスル』に乗り込む前の事だった。
「……それじゃ剣さん、出陣する前に……こいつを渡しときますぜ」
倭刀は手元からアメイジングカードを数枚剣に手渡した。
「これ倭刀のカードか? 何か赤属性ばっかやな」
「大事な身内をメンバー総員で助けて貰うんすから、余りもんで申し訳無いけど、これくらいのことはせぇへんと」
倭刀から貰ったカードは、殆ど赤いカードフレーバーの赤属性のアクションカードばかりであった。それはユニットやプレイヤーにダメージを与える特徴を持つカードを意味する。
「……あと、今のうちに穂香姉ちゃんの攻略法を教えときますぜ。剣さんは分かってるでしょうけど、対策を頭に叩き込まないと姉ちゃんには勝てまへん。マジな話で」
「それは是非御願いしたいが、お前はどうなん? 一番助けたいのは倭刀やろ」
「知り尽くしてる奴は増やす方が有利でしょ? 俺は姉ちゃんの事はファイティングスタイルや弱点やスリーサイズもフェチも全部知ってますぜ」
スリーサイズッ!!?(ガタッ)
「落ち着け、Mr.Gのおっちゃん」
これは失礼しました。
「それに姉ちゃん意外とメンタル弱くて臆病な癖ありますから、立海と手ぇ組んで意地でもゲームに当たらんよう仕掛ける可能性も高いし。その為にも『切り札』の剣さんにも知っておく必要があると思った。俺がリタイアした時の事も兼ねて――!」
倭刀は真剣だった。親愛なる姉貴分を助ける為にプライドをかなぐり捨ててシャッフル・オールスターズに託した彼の最善の行動であった。
「……成る程な。その判断は正しいと思うぜ倭刀、じゃとびっきりグッドな攻略を教えてくれ!」
「――――燃やせ。以上!」
…………はい?
「……いや、それ3文字で纏めてエエんか――?」
剣はもっと、『序盤はスピード重視で……』とか『手札に警戒しろ』とか具体的に言うのかと思ったが、余りにもシンプルで呆気に取られた。
「ところがギッチョン、そのシンプルさが一番効果的なんだよ姉ちゃんは」
それは一体どういう事でしょうか……?
「剣さん、アンタ姉ちゃんと戦って一番強いと思ったカードって何すか?」
「……せやな、やっぱり手札でパワーが変化するユニットの≪オーク・インカネーション≫かな。そこからの手札破壊はマジで致命的やった」
「エースカードはそれで当たりですけど、それを出されてヤバいって思った時点でもう遅いんすよ」
「どういう事や?」
「≪オーク・インカネーション≫は手札に連動して強くなるユニット、逆に手札が少ないとそれは只の貧弱と同等になっちまう。てことは……」
≪オーク・インカネーション≫は手札の数でAP/DPが100変動するユニット。
この知識と前の戦いでの記憶を探るうちに、剣は閃いた。
「……そうか! 初手でカードやEGを補給して、手札を温存させるサポートユニットが厄介って事か!!」
「大当たり!! だからスタート直後にユニットやマテリアルが出たら真っ先に燃やす事! ユニット同士のバトルは落ち着いてからでもOKなんすよ。
――焼き尽くして、姉ちゃんのカードを回す動きを鈍らせてから叩く。これが攻略法なんです!」
◇◇◇
かくして、序盤のユニット除去戦法は倭刀のカードの機転により産み出されたのだった。
「他にも結構カード借りてるからな、それだけ倭刀が姉ちゃんを助けたい一心だったんだろうぜ。無論、俺も同じ意見だけどな!」
「倭刀……」
しかし穂香は躊躇いながらもゲームを止めはしなかった。いやここまで来た以上、止めることは出来ないことのは承知の上での事か……
そして剣と穂香、同時に1枚カードを引いて穂香は即座にカードをスキャンした。
『マテリアルツールカード、【プラントウォール】!!』
◎――――――――――――――――――◎
◎マテリアル・ツールカード◎
【プラントウォール】
属性:緑 EG:③ DP2000
・効果:このカードがフィールドに出たとき、
自分はカードを1枚ドローする。
◎――――――――――――――――――◎
「≪プラントウォール≫の効果により、私は今一度カードを引きます」
緑属性のマテリアル、攻撃は皆無だが高い防御を誇る≪プラントウォール≫。
更におまけ感覚でカードを引ける『キャントリップ』効果も付属したお得な盾。ユニットが潰された以上、防御を高めて様子を伺う穂香。
(盾を構えるならともかく、さっき消費した剣の3枚の手札で覆すのは難易だ。これに対してどう打ち返すか……?)
銃司さん、詳しい戦況解説ありがとうございます。
穂香から5秒遅れて剣も最初のドロータイムでカードを1枚引く。4枚の手札でここからどう展開するのか?
「俺のEGは現在④、それを全て使って2枚のカードをスキャン!!
――時空からの施しだぜ!!!」
時空……ってまさか!!?
『ツールカード・ユニットカード……【未来からの報酬】、【時空からの使者―クロノス―】!!!』
これは、立海の侍女・時実 桜の2枚のタイムリミットカード!!
それを剣が使っているとは!? 前代未聞だ!!!
◎――――――――――――――――――◎
◎ツールカード◎
【未来の報酬】属性:青 EG:①
・効果:[タイムリミット]〈60〉
プレイヤー1人を対象に
カードを3枚ドローする。
◎――――――――――――――――――◎
◎――――――――――――――――――◎
◎ユニットカード◎
【時空の使者―クロノス―】EG:③
AP:400 DP:400 AS:20
属性 青 ユニット/ソルジャー/ヒーロー
・能力:[タイムリミット]〈180〉
①対戦相手がカードを出す度に
[タイムリミット]のカウントを〈10〉減らす。
②このユニットはブロックされない。
◎――――――――――――――――――◎
「どうして剣さんが桜さんのカードを……?!」
「――――成る程な……」
銃司はしたり顔で感心し、穂香は意外な展開に驚きを隠せない。
「俺に力を貸したのは倭刀だけじゃねぇ、もう一人居たって事だ!!」
◇◇◇
――これは桐山剣VS時実桜との激闘の後の事である。
「――では剣さん、銃司様の元へ案内する前に……こちらを受け取ってください」
理由は勿論聞かないで欲しいが、目が若干赤くなり、目尻に潤いが残る桜は剣に2枚のアメイジングカードを手渡す。
「……オイこれって、さっき桜が使ってたエースカードやないか!? いきなりどないしたん?」
剣が報酬やアンティをせびった訳もなく、突然の桜からの報酬の施しに驚く。
「これは、私にとってのけじめの問題なのです。
――銃司様と剣さんとのリベンジの後に必ず穂香さんと対峙することになるでしょう。その時の為に……私のカードを貴方に、お貸し致します」
桜は穂香と対峙し仮に敗れ、穂香の父・賢士朗の謀略が成されれば立海はおろか穂香自身にも害が及ぶと予測し、それを阻止するために剣に2枚のカードを託したのだ。
このカードの貸し借りは銃司とのリベンジでは決して使わないこと、そして銃司に勝ち抜いて穂香と戦う時のみを条件としてである。
「……本当にそのカードを俺に託しても良いのか? さっきまでプレイヤー不信だったお前が、もしかしたら俺が約束破って銃司の前で使われるとは思ってんとちゃうか?」
剣に限って約束を破るなんて騎士道を外す行為はしないと思うが……、これは『もしも』の話である。
「……前に丈様が仰ってました。『約束に絶対は無い、それでも信じてこその真の価値がある』と。
――私の長い間止まっていた時間の針を動かしたのは貴方です。私はもう一度未来へ動き出すために。私は、桐山剣さんというプレイヤーを信じます――!」
◇◇◇
「……俺はゲームを通じて色んなライバルや、仲間と出会って日々レベルアップを重ねてきた。
穂香と戦って、負けて、そしてまた穂香に会うまでにも、俺はゲームを通じて数多くの嵐を巻き起こしてきたんだ!!」
剣の勇敢な背中から、外の空気をも通さない個室に何故か強風が吹き荒れるような波動を感じた。
「――真のプレイヤーは、ゲームと共に【絆】という名の嵐を呼ぶぜ!!
この50枚のカードの束にはゲームで繋がった仲間の意志が詰まってるんだ、俺は一人で戦ってるんじゃねぇんだッッ!!!!」
「………………」
仲間と共に強くなってきた剣の意志と、頑なに己のセンスを独りで磨きあげた孤独の穂香の意志。
その光と影のような大差が穂香に痛烈な葛藤を味わわせた。
「あの桜が、剣を持つプレイヤーに心を開いたか……なまくらから絆の力で真っ直ぐな刃に磨きあげたプレイヤーに……! 気に入った、益々気に入ったぞ桐山剣!!!
このゲームが終わったら、今一度俺と勝負しようではないか!!!!」
えーー! 再戦!? 余程気に入ったんですか剣の事を……
「悪ぃ銃司、2回戦は勘弁してくれ! 取り敢えず穂香助けてから後で考えとくわ」
あれだけの全力勝負に連続は流石の剣もしんどいのだろう。銃司は少し面白くない態度を示しながらも引き続き二人のゲームを見守ることにした。
「さぁ、ゲームを続けようぜ穂香!!」
二度の回想を挟んで、敵味方問わず絆の強さを見せ付けた桐山剣。
しかしまだこのゲームは序の序の口。この後剣は未だかつてない穂香のトリックプレイを目の当たりにすることになる……!
「では改めて……参ります!!」
次回の更新は5月16日(土)を予定しています!
お楽しみに!!
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