第49話⑥~僕はただ使命に徹するだけ~
・天野槍一郎 HP1200:手札3枚 EG⑤
フォロワー:なし
・大森穂香 HP1700:手札4枚 EG③
フォロワー:【オーク・インカネーション】【バウンダー・ジェリー】
ツール:【宝札を祈る銅像】
自分フィールド一部:【マナ・グラス】
――槍一郎の片手には数秒前にデッキから1枚ドローしたカードが握られていた。
「――まずは、カード補充だ!!」
『ツールカード、【精神集中】!!』
おぉっと!? ここで2枚目の≪精神集中≫!!
50枚のデッキのうち、同名カードは3枚までしか入れられないルールで2枚目を引き当てたぞ!
〔槍一郎 手札2→5枚〕
「いや、6枚だ。穂香ちゃんの≪宝札を祈る銅像≫の効果で、僕もカード発動で1枚カードを引くよ」
〔槍一郎 手札5→6枚〕
(む、これは……)
槍一郎は加えた手札の内容に僅かに反応を示した。
「……よし、僕はユニットを召喚する!」
『ユニットカード、【召喚の巫女・セイラ】!!』
清く神々しい新緑の衣を纏った巫女がフィールドに舞い降りた!
◎――――――――――――――――――◎
◎ユニットカード◎
【召喚の巫女・セイラ】EG:②
AP:50 DP:50 AS:10
属性:緑 ユニット/ヒューマン
・効果:このユニットが破壊された時、
墓地の代わりに除外フィールドに置くことで、
手札からユニットカードをコストを払わずに
召喚出来る。
◎――――――――――――――――――◎
(自分の身を犠牲にして、ユニットをノーコストで出す特殊召喚誘発カード……まさか槍一郎さんが手札を肥やしたのは――!!)
槍一郎の誘発させる手出しが、穂香の警戒を更に強めていく。
『――劣勢に立たされても、まだ諦めた面はしていない……私の意地悪い干渉をした所で君にとっては風に柳を靡かせ促すだけか?』
一応『意地悪い』のは自覚してるんですねクソ親父。
「まぁ、そんな所でしょうか。貴方がさっき言ったことですよ、僕は『扱いやすく便利な道具』だって。
――でも僕は皆に好かれたくてWGCのオフィシャルプレイヤーになった訳じゃない。貴方の知らないところで困ってるプレイヤー達は沢山いるんだ」
端正で冷静沈着な槍一郎の顔の奥には、既に彼自身のプレイヤーとしての【決意】があった――!!
「――――僕はただ、皆のゲームをしてる時の笑顔が好きなんだ。だから僕の事よりも皆を、仲間を守らないと! 悩む前に行動だ!!」
「…………クハハハハ――! 素晴らしい、素晴らしい心掛けだ!! 聞いたか穂香、自分の立場も仕事の価値も何も疑いやしない!!
――――これが【道具】なんだよぉぉぉぉ!!!!!」
狂気染みた大森賢士朗の高笑い、そしてその刹那に彼は穂香を睨み付け、低く高圧的に囁いた。
「分かってるよな、穂香ぁ? お前も百歩譲って私の血族、そして眷属なんだよ。――あの程度の道具風情に負けてみろ、その時は……………殺すぞ?」
「………………はい」
何と哀れな……、1度でも逆らえば痛め付けられる、殺される。そんな恐怖心に縛られている穂香こそ、虐待の糸で縛られた人形のようだ――!
「――――ねぇ穂香ちゃん、僕ごときがこんな事を口出し出来る立場じゃないけど……一つだけ言わせてくれ」
アメイジングの刻を再び止めて、槍一郎は穂香に言い諭した。
「君のお父さんが言うに、倭刀も先輩後輩の線での付き合いと思っているらしいが………倭刀は僕や剣に本気で頼み込んできたんだよ。『穂香姉ちゃんを助けてくれ』って。
――それだけ、姉貴分の君の事が好きなんだよアイツは。悲観することなんか何処にある? 何も無いじゃないか!」
「………………」
石で殴り付けるような言葉じゃない、『絆』という尊い糸を縛る言葉が、穂香の心を抉ってくる。
「さぁ……もう一度ゲームを続けようか」
再びブレスの一時停止ボタンを押して、アメイジングの刻が動き出す。そして奇遇にも丁度カードドローの時間だ。
《CARD DRAW》
これで穂香の手札は5枚、直ぐ様穂香のユニットに攻撃指令コマンドが繰り出された。
「≪オーク・インカネーション≫、≪バウンダー・ジェリー≫で攻撃します!」
(一気に仕掛けてきたか、それもそうだ。今のオークは手札5枚でAP/DP共に500、何時でもライトクリスタル・ドラゴンを反撃出来る――!!)
駆け巡る戦略、既に槍一郎の腹は決まっていた。
「≪召喚の巫女・セイラ≫でオークをブロック!!」
手札1枚分のセイラの攻撃では歯が立たず、そのままオークとの戦闘で破壊。そして、例のあの効果が発動する。
「セイラが破壊された瞬間、墓地の代わりに除外フィールドに置いて効果発動! ――僕の手札からユニットを特殊召喚させる!!」
現在槍一郎の手札はドローで1枚引いて7枚。その中にはフィールドから戻ってきた≪ライトクリスタル・ドラゴン≫が眠ってるが……
「またあの結晶龍を出すのですか?」
「いや……別の切り札だよ!!」
右手にPASの波動を宿らせた1枚のカードが今、スキャンされる――!!
「ユニットカード、【シルヴィ・テンペスター】!!!」
そうでしたッ、槍一郎にはまだ切り札が残されてあった!!
「そ、そのユニットは――?!」
「これでどんなユニットか読者の皆にも思い出してくれるかな? 行くよ!! 『風神大旋風』!!!」
華奢で優美な少女ユニットの清らかな印象とは裏腹に、勝利をも呼び起こす『春風』を巻き上げる!!!
◎――――――――――――――――――◎
◎ユニットカード◎
【シルヴィ・テンペスター】EG:⑦
AP:400 DP:500 AS:10
属性 青 ユニット/ヒューマン/ヒーロー
・能力:このユニットが場に出たとき、
10秒間相手フィールド上のプレイヤーまたは
カードは全ての効果発動、行動が出来ない。
◎――――――――――――――――――◎
「≪シルヴィ・テンペスター≫の旋風で、ユニットも私も押し戻される――!!!」
とてつもない春風によって、ユニット共々穂香は風によって自由を奪われていく。
そのたった10秒間の刹那だった――!!
――ズシャ! ザシュ!! 斬ッッ!!!
「!!!?」
穂香は風吹き荒れるなか、辛うじて開けたその眼を疑った。
〔《オーク・インカネーション》《バウンダー・ジェリー》《宝札を祈る銅像》撃破!!〕
たった10秒でユニット、ツールカード諸とも槍一郎の武器『トライデント』で一掃させたのだ!!
『ほぅ、アメイジングの四大聖霊ユニットを持っていたのか……。だが風が吹き止めばただのか弱いユニット。後は手札のうち1枚はドラゴンだというのも分かりきっているがな』
ギャラリーは黙ってなさい。ただのその場しのぎで出した訳じゃないんだから! そうでしょう槍一郎さん!?
「そういうこと。でもこれは僕の『勘』なんだけど、この≪シルヴィ・テンペスター≫と僕の今ある手札で素晴らしいコンボを思い付いたんだ!!」
『勘、だと――? そんな曖昧でまぐれな思考を信じるのかね君は!?』
「その通り、『勘』ってのは風の便りのように気まぐれだ。だからスピードしか取り柄の無い僕は、それだけでWGCを背負ったと言っても過言じゃない。
――僕は剣や倭刀みたいに努力して得た力の強さをはっきり理解していない。生温い僕が本気で戦う立海のプレイヤーに嫌われる理由がそれだ。でも、これだけは言える――!!」
槍一郎はそう言うと、自ら掛けていた眼鏡を外した……って、えぇッッ!!??
槍一郎さん、貴方眼鏡外したら性格がガラリと変わるんじゃ……?!
「大丈夫だ、理性は保ってる。こっからマジの本気になりたいだけだ………ッッ!!!」
……それこそマジだ。さっきの気迫と100倍以上凄まじくなっている――!!
「僕は………俺は、この【直感】という気まぐれな風の強さを信じて、ここまで戦って来たんだッッ!!!!!」
ついに明かされた眼鏡の底に隠された槍一郎の真意。
穂香の圧倒的パワーを前に、槍一郎の手札に隠されたコンボとは何であろうか――!?
次回の更新は4月5日(日)を予定しています!
同日朝に投稿する新作長編と共に、お楽しみに!!
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