第49話⑤~人形の戯れに狂乱は笑う~
・天野槍一郎 HP1200:手札1枚 EG①
フォロワー:【ライトクリスタル・ドラゴン】※≪大防御の盾≫装備中
【フォレスト・ヒーラー】
・大森穂香 HP1700:手札3枚 EG③
フォロワー:【オーク・インカネーション】
マテリアル:【宝札を祈る銅像】
自分フィールド一部:【マナ・グラス】
――槍一郎の顔から尋常じゃないほどに汗を浸し、穂香の動きを必要以上に警戒している。
今まで槍一郎がゲームにこんなにも焦燥感を見せたことがあるだろうか。
得意のスピードで穂香を抑えつつも、その動きが読めず、全く勝ち筋の見えない状況に不安が押し寄せる。
一方の穂香は表情の変化を何一つ見せず、ただひたすらにカードを展開させていく。
戦闘マシーンプレイヤーと化した穂香。闘いの遺伝子『GNA』を宿す彼女に余計な感情は必要としないのか――?
「――さぁ、穂香。たまには道具らしく使える所を私に見せろ」
「………はい」
……おのれぇ、娘に対して『道具』とは何事だクソ親父め!!――おっと失礼、私情が出てしまった。
(なんて事だ、穂香ちゃんのプレイスタイルに攻守共に全然遅れを取っていない。それに≪宝札を祈る銅像≫でカードを発動しても補充してくるから余計にリードを狭めづらくなってる。――でも僕にはドラゴンが要るからそう簡単にダメージは……)
――あ、コラ! 油断しちゃダメですってば!!
「………………殺れ」
ヤバい、戦況が変わりつつあるぞ。穂香は何を出す気でしょうか!?
「EGを③支払い、ユニットカードをスキャンします」
『ユニットカード、【バウンダー・ジェリー】!!』
◎――――――――――――――――――◎
◎ユニットカード◎
【バウンダー・ジェリー】EG:③
AP:100 DP:100 AS:10
属性:青 ユニット/フィッシュ
・効果:このユニットがフィールドに出たとき、
フィールド上のユニットを対象にし、
それを持ち主の手札に戻す。
◎――――――――――――――――――◎
「手札に戻すユニットは当然、≪ライトクリスタル・ドラゴン≫です」
「何っ――!!?」
槍一郎はこのカードの発動に驚愕した。
戦闘ダメージも受けず、破壊されない筈の≪ライトクリスタル・ドラゴン≫が無情にも槍一郎の手札に戻されてしまった!!
鉄壁の防御を誇るドラゴンが何故戻されたのか、理由は簡単。それは『破壊』ではなく手札に戻す行為であるから。
カード用語で言う所の【バウンス】効果はドラゴンにとっての最大の死角だったのだ。
更に最悪な事に、ドラゴンに装備されていたカスタムツールカード≪大防御の盾≫も装備させる対象が居なくなった事により、そのまま墓地に置かれてしまった。
「馬鹿め『盾』なんてものはちょっとしたひねりで簡単に崩れ落ちるものだ。スピードで後先考えないお前のようにな……!」
親父は黙ってろや、解説してるのは私だぞボケェ(Mr.G・心の愚痴)
「そのまま≪オーク・インカネーション≫で攻撃します!!」
「くっ……≪フォレスト・ヒーラー≫でブロック!!」
危ないところだ。このまま槍一郎に通れば400のダメージを受けるところだった。
とはいえ≪フォレスト・ヒーラー≫にオークの攻撃を止めてもその場しのぎにしかならない。そのまま槍一郎のユニットは墓地に送られた。
「参ったなぁ……今のEGではドラゴンを呼び戻せないし、早いとこオークを片付けないと……」
頼りは槍一郎の手に握りしめている『トライデント』の武器のみ。
例え劣勢に立たされようと、戦う武器と闘志を無くさない限りアメイジングはいつでもチャンスを呼び起こすのだ。
「………………………ふっ」
あ、ちょっと待って。何か親父の様子が変だぞ?
「――――フフふフふフふ、アッヒャヒャヒャひゃヒャヒャヒャヒャ………ッッ!!!!!!」
大変だーー!!! 親父がイカれたァァァァァ!!!!
「……お、とう、様――!?」
娘の穂香も流石にこの様子には困惑をしている。いや、引いてるってのが妥当か。
「あの、失礼ですけど……何か変なもの食べました? まだ決まった訳では無いし、笑うとこ無いじゃないですか」
それは『医者呼びますか?』と言ってるのと同じですよ槍一郎さん。出来ることなら私が呼びたいですが。
「クフフフ………いや心配も医者も要らん、余りにも可笑しかっただけでさぁ!!
――今の時代にも『変わった人形』がいたなんて、うちのクズ娘以上……いやそれ以下かぁぁぁぁぁぁ!!?」
「………………それは、僕の事ですか?」
「他に誰が居るのだ、WGC専属プレイヤー(笑)の天野槍一郎さん。――君、中々面白いなぁ………!!」
……誰かコイツにレッドカードをデッキにして渡してくれないものか。
私が叶わぬ願いを言っても仕方ないが、この狂乱ぶりはかつての『ブラックヘロン』を彷彿させる。
「僕、何かボケかましたっけ」
かましてないかましてない。
「お役所に雇われたトラブル解決人形の癖に、ゲームになると無駄に喜んで驚いて……、まるでプレイヤーにでもなったかのように」
「なったかのように、って……僕はれっきとしたプレイヤーですよ?」
ここまで来ると槍一郎も流石に苛立ってきたか。
「そうだろう? 普通のプレイヤーなんだろう? だからこそ興味深い――」
「……あ、あのお父様、お話はゲームの後にでも………」
その通りッッ!!!!
いい加減早くゲームを進めないと読者が飽きちゃうからホントに!!
「黙れクズ共。私は槍一郎君とお話中だ」
……もうシバいていいすか?(Mr.G・心の殺意)
「それより、君にはWGCに選ばれる程の能力はあったりするのか? ただ並みよりも早く動けるしか無いだろう。
――全プレイヤーの手本になるべきプレイヤーがか?
――ゲームワールドの管理上で違反を正すプレイヤーがか??
――『WGCの決めたルールは絶対』のプレイヤーがか???
――――バカにも程があるわ!!!!!」
「………………」
「そんな平均点より上の君を何でWGCに選んだのだろうなぁ………?」
「……それに関しては誰も教えてくれなかったんですけどね」
「――まぁこれは私の考察なのだが、不良品の娘の件もあるから恐らく合点してるだろうが……………
――――君は【道具】だ。
扱いやすく、便利な道具」
「――――――!!!」
「この『超次元ゲーム時代』ではゲームの勝敗が全て……故に『PAS』や『GNA』といったチート能力がのさばる弱肉強食の時代と化した。
――君のその能力は、そんな時代を生き延びれるような大層な力か?」
「――いや? 僕はそんな事は考えても見なかったですけど」
「素直だな。だが現実は残酷なものだ、今の君は誰からも興味を持たれて無いだろう」
このまま行くと二人の胸糞トーク談義みたいに成りかねないのでちょっと割り込もう。
何故クソ親父があんなにも口が減らないのか。
それはアメイジング・ウォーズを第三者の眼で通してみれば、槍一郎の存在が余りにも空気でしか無かったからだ。
この戦争の展開を最初から辿って、プレイヤー達の強さ、信頼、立場から見て、『天野槍一郎』というプレイヤーを認めていた者は居たのだろうか―――?
これは物凄く残酷な話だが……ただ『強いだけ』のプレイヤーには何の特徴も無く、個性も薄れてしまうのだ。
その今の状況が、【空っぽ】な槍一郎を生み出してしまった――!!
「君の後輩分の倭刀君とも親しいとは聞いていたが……君の強さを利用して嫌々付き合ってるんじゃないのかぁぁぁ??」
――悔しい、悔しすぎる。ここまで言い放たれては。
そしてそれを横で聞いていた穂香は、心なしか左手のマジェスティックを強く握りしめていた。
「………言いたいことはそれだけですか? 賢士朗さん」
――そ、槍一郎さん……!?
「確かにWGCには無理矢理厄介事押し付けられるし、優しくされた事なんか1度も無いけど――そんなもの、小さな事ですよ」
「ほぅ……? ここまで責め立てても肯定していくか」
「言ってることは大体合ってますしね。
僕はそんなWGCの仕事と、仲間の為にここまで来た。それに仕事で嫌だとは思った事はない。何故なら……
――――仕事後にやる大好きなゲームが、凄く楽しくてね!!」
お……おぉーーー!!(Mr.G・心からの拍手)
「僕は現実でもゲームワールドでも皆が楽しくゲームをしてくれるだけで十分だ。それと最近じゃ、剣やみのりちゃん達とゲームするのも楽しくなってきたんだ!!
――親友の頼み事は、意地でも助けてやらないと!!!」
「……………………ふん」
……流石、シャッフル・オールスターズの纏め役は格が違う! 他のメンバーにも劣らないこの精神力、惚れ直したぞ私は!!
「――さて、長話もこれでおしまいにしましょうか。2度目の続行、僕も少し気合いも入れさせて貰うよ!!」
槍一郎の体内に蒼きブルーの波動を迸るPASが激しく放出していく。
負けるな槍一郎! その魂の槍を折らない限り、ゲームはまだまだ終わらない!!
次回の更新は4月2日(木)を予定しています!
お楽しみに!!
そしてブックマーク、感想、評価等もお待ちしております!!




