第48話④~この闘志、燃え尽きるまで……~
・桐山剣 HP800:手札0枚 EG④
フォロワー:【ヴァルキリー・フレア・ドラゴン】(≪KIZUNA・ソウル≫装備中)
マテリアル:【ボンドストーン】
・時実桜 HP550:手札4枚 EG⑥
マテリアル:【ディフェンダーオブジェ】
フィールド:『フォーチュン・サンクチュアリ』
※手札制限・HP100支払って無効
――フィールドで戦う意志がある限り、時実桜は片手のナイフを手放すことはない。
何故なら今は亡き立海の先代城主、立海丈と桜の間には、並みならぬ強い絆で結ばれているから。
桜と丈が交わした立海の契約として、桜は生涯この紅蓮城で仕え、忠誠を誓うことのみを条件とした。
それは城主である者が同胞と共に過ごした時間を強く尊び、死しても城主自らが看取り、供養をし続ける掟があるから。
立海のような遊戯貴族は、強いプレイヤーやゲームを追い求め、頂点に立つことを最大の名誉に思うもの。そしてその為ならば死をも恐れはしない。
故に彼等は中途半端な生き方よりも、名を刻むような誇りを望んでいるのだ。
――だが、桜は生まれながらの遊戯貴族ではない。名誉よりも生きることに執着する普通のプレイヤーだ。
故に現城主の銃司が起こしたG-パーツを使った革命を、桜は最も起こすことを反対した。
彼女のこの心境は一体何を意味するのか?
その答え、もとい桜の心に占めるものはただ一つ。
―――先代城主と交わした約束を守り抜きたい。命よりも大事なたった一つの純粋な想いのみ……
◇◇◇
――『フォーチュン・サンクチュアリ』による運命タクティクスによって、アメイジングは剣の勝利は確実に決まる……筈だった。
立海に命を捧げた桜の不屈の闘志は、運命に意地でも抗い、逆転の可能性を右手のシルバーナイフに全てを託していた。
剣は桜の猛攻にひたすら避け、応戦しながらその諦めの悪さに苦言を呈した。
「……お前んとこの城で何があったか知らねぇがな、『諦めない』のと『負けを認めない』ってのは同じじゃねぇんだぞ!!?」
「どうでも良いわそんな事!! 私のナイフで死にたくなければ戦いなさい!!!」
「言っても無駄かよ……どうなっても知らねぇからなッッ!!!!」
そしてまた30秒経過、両者デッキからカードをドロー出来る……だが。
「『フォーチュン・サンクチュアリ』の効果!! HPを100払って、ドローしたカードを無効にして墓地に送る!!」
〔桜 HP550→450〕
そのフィールド効果は桜も使用できる。1枚しかない剣の手札を弾き、そのまま墓地に送らせた。桜のHPはこれで450。
「ならば当然、俺もその効果を使うぜ!!」
〔剣 HP800→700〕
両者共に《フォーチュン・サンクチュアリ》の効果によってドローカードは二人共同時に玉砕。
「そのままヴァルキリーで攻撃だ!」
剣の攻撃指令にドラゴンの火炎弾が飛び散る!
「≪ディフェンダーオブジェ≫でブロック!!」
〔剣 HP700→1200〕
「どうしたッ!? デケェ口叩いてHPの差は広がるばかりだぜ!!」
「くどい!!! ――カードスキャン!!」
『アクションカード、【スケープドール】!!』
桜はフィールドから5体の人形を呼び出した。しかし見た目は不格好、どれもこれもごみ屑を寄せ集めたようなものばかりだ。
◎――――――――――――――――――◎
◎アクションカード◎
【スケープドール】
属性:黄 EG:④
・効果:自分フィールドからランダムに
≪スケープドール≫トークン(AP0/DP100)を5体出す。
そのトークンはユニットとして扱い、攻撃することは出来ない。
◎――――――――――――――――――◎
『トークン』とは場にあるカードの代用として出される物体の事。
桜は≪スケープドール≫を出すことでブロックする為の要員を補充した。
「これらの身代わり人形はブロックは出来ますが、攻撃は出来ない。――しかし立海から受け取った生きる事の奇跡、この程度に劣る筈がありませんわ!!!」
『アクションカード、【結束の心】!!』
桜、追撃のカードスキャンだ!
◎――――――――――――――――――◎
◎アクションカード◎
【結束の心】属性:黄 EG:④
・効果:自分フィールドのユニット1体につき、
HP200回復する。
◎――――――――――――――――――◎
「私のフィールドにはスケープドールトークン5体、よってHP1000回復する!!」
〔桜 HP450→1450〕
「私はまだ終わっていないわ!! ――かかってきなさい、異邦の切り札騎士!!!」
剣は桜の不屈とも言うべきしぶとさに感化され、魂に秘めた闘志の炎を再度燃え上がらせた。
「……お前だけだぜ、嫌気が指すほど諦めの悪い奴ぁ――! 上等や、最後まで付き合ってやらぁッッ!!!!」
ブレードを掲げ迎え撃つ剣に、ナイフ片手に構える桜。
彼女の脳裏に残る想い出は篝火の如く………
■■■■■■■
『この――悪魔がッ!!!!』
『何でこんな不吉な事ばかり……』『白銀の髪!?』『空間が歪んでる……』『な、何だよお前!!!?』
『――なぁ、隣の……見てないか?』『気持ち悪い』『おい……お前が殺したのか?オイッ!!!!』
『もうお前なんか俺の子じゃない』
『頼むから出てって頂戴、死んでくれても構わない……』
『悪魔』『人殺し』『気狂い』『悪魔』『鬼』『人間もどき』『怖い』『魔女』『死ね』『悪魔』『悪霊』『怪物』『死神だ』『悪霊』『悪魔』『雑菌』『ウイルスがうつる』『滅びろ』『悪魔』『話しかけるな』『狂ってやがる』『死ねよ』『悪魔』『寄るなこの化け物!!!!!』
『お前なんか、生まれて来なければ良かった』
「―――――――可哀想にな」
―――?
「涙すらこれ以上出ないほど渇いた面してやがる。これが平民どもの悪意の成れの果てか」
ッ……………
「そう睨むな。――服はズタボロだがお前の髪、星の輝きのような白銀だな。中々綺麗じゃないか。それに、この立海の王を見ても怖がらない奴を見たのは初めてだ。気に入ったぜ」
――――貴方は、だぁれ?
『俺か? 俺は立海丈! 立海遊戯戦団の主だ!!』
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「ファイティングブレード必殺発動!≪ソニックブレード≫!!」
「≪ディフェンダーオブジェ≫でブロック!!」
剣の武器による必殺技を繰り出しても、ルークのオブジェがその道を固く閉ざす。
(あの身代わり人形5体を退けたいが、やっぱ巨大ルークのオブジェを壊さねぇと――!)
「――隙あり!!!」
桜のナイフがフィールドを横入り、容赦なく剣を突き刺す!!
「あぶッ!!? ――んヤロォ!!!!」
■■■■■■■
「――落ち着いて食べろよ、行儀悪い。この娘ろくに教育もして来なかったんだな……」
「いや私はお前の教育のされ方が気になる。丈、気まぐれにしては度が過ぎるんじゃないか? 何処の馬の骨か知らん娘を雇うなんて」
「史也、ここの城主は俺だ。気まぐれだろうと俺が決めたことは最後まで責任は取るつもりだ。それよりもこの子は……人間を怖がってる。
悪意に満ちた人間は悪魔にも劣ると言うが、まさにこの子はそいつらの犠牲者だ」
「……随分優しいな。プレイヤー界随一の冷徹な城主と名高い立海の王が」
「雑魚なプレイヤーなど、悪意まみれの人間と同等だろう。俺はそいつらにこの子を送り返す気は無いだけだ。俺はこの子を気に入ったんだ。この紅蓮城で面倒見るのも面白そうだろ?」
「……だったら、好きにしろ」
あ、あの……
「――何だ?」
私の能力なら、皆さんのお力になれますか――?
「………時間を止めたり、空間を自由に操れる!? そんなPASがあるのか!!」
――ぱす? 良く分かりませんけど、これでお役に………立てませんよね……こんな呪われた力じゃ、また――
「何言ってんだ!! 凄く面白そうじゃないか!!!」
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――30秒経過! ドロータイム!!
「「≪フォーチュン・サンクチュアリ≫の効果! 手札無効!!」」
両者ともコストを支払い、ドローしたカードを削ぎ落とす。
「シルバーナイフ・必殺技発動!! ≪アサシンスティング≫!!!」
ヴァルキリーに暗殺の一撃が襲い掛かる!
〔剣 HP1200→1000〕
――200ダメージ! 即死は免れた!!
「くっ……」
「ふぃー危ねぇ! 御返ししてやれヴァルキリー!!」
すかさず剣の攻撃指令、火炎弾発射!!
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「―――あ、あのね桜ちゃん、長いこと立海に雇われて恩返ししたい気持ちは分かるけど……立海のゲーム戦士になるのは、まだ早いんじゃないかな――?」
「奈々子の言うとおりよ、立海のプレイヤーになるって事は相当な覚悟が要りますよ? 最悪の場合死ぬことだってあり得る。それでも目指す?」
――――――ッ!
「………分かった。丈様に聞いてみるね」
「ちょッッ!?? 本気ですか瑠璃さん」
「だって無理矢理断っても聞かないでしょ!? ――それに、丈様のお役に立ちたいっていう彼女の純真な心が、しっかりPASの形になって表れてるんだもの」
「……確かに、最初に来たよりもPASの波動の強さが違いますね」
「――よし! じゃ今日からプレイヤー入団テストまで私とトレーニングしましょ!! 瑠璃お姉ちゃんに任せて!!!」
――――カチッ、カチッ、カチッ!!
(………1/6の確率に3回、実弾ロシアンルーレットいずれも不発で成功。―――合格だ桜、これで晴れて立海遊戯戦団のゲーム戦士だ」
「良かったね桜ちゃん!!」
「私とのトレーニングの甲斐がありました!!」
「って事は一緒にゲームが出来るのか!? なぁ桜、最初は俺と勝負し………)
「止めろバカ銃司」
――バシッ!!!
「痛ッ!!? 何すんだよ兄貴!!」
「お前はゲームは一日一時間までって決めただろ。さっきこそこそ隠れてゲームプレイしてたの俺知ってるんだからな」
「……皆の前でチクるなよこのクソ兄貴……ブツブツ」
「今の発言は半殺し確定の所だが、俺は機嫌が良いから聞かなかったことにしとく。――桜、お前に渡したいものがある」
………これは、プレイギア。それにダイヤモンド……!?
「ダイヤモンドはお前の魂の証だ。汚れなき輝きを持つ宝石がお前の護ってくれるだろう。――心からおめでとうだ。我ら戦団の誇り高き同胞よ!!」
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――あれからどれだけ時間が経っただろうか。
手札を加える度に削ぐわれ、徐々にHPは減っていき、ユニットで攻撃しては防がれ、そしてブレードとナイフが交わる。それの繰り返し。
もはやこの場で戦況を解説する言葉は不要。
あとは互いの闘志の燃え尽きるまで、ただ闘うのみ――!!
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「――――良い眺めだろう桜! 我が立海が誇る大型オスプレイ、別名『白銀の翼』!! ちょっと羽がうるさいけど乗り心地は抜群だ」
――これがゲームワールドの全貌……! 上空から見るのは初めてだけど、そこに群がるプレイヤー達もまるで蟻みたい!!
「……全く下の連中は相変わらず単細胞な奴らばかりだな。見上げれば指差して立海だ立海だと噂してくる。実に愉快な気分だな!」
………。
「――何だ? 俺が楽しんでるのに随分寂しそうだな桜)
い、いや、そんな事は……
「……分かった。下の連中、貴族である俺に一般市民の桜が仕えるのが気に食わないんだな? ――だがあの程度で嫉妬してる平民など所詮は小物、俺達頂点に立つプレイヤーとは心の格が違う」
――丈様……?
「覚えておけ桜。人種とかセンスとかデータで割り振れる強さの格は分かっても、心の格は自分自身でしか計れない。
俺は立海の城主としてプレイヤーに平伏す事を誇りにすると同時に、桜に命を預け、共に時間を刻めることをも誇りに持っている」
誇り………!!
「そうだ、誇りだ、プライドだ! 廻る因果の運命を己の魂で覆す程に、誇り高き魂を持て!!
―――俺達の格を貶める者にも負けない、美しき魂を持つ最強のゲーム戦士になるんだッッ!!!!!」
………もしもの話なんだが――もし、俺が死んだらどうする?
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「私は………絶対に――ッッ!!!!」
時の過ぎ行くままに………
未来が変わる瞬間まで、あと僅か。
次回、剣VS桜、決着。
ゲームの行く末に、刻は動き出す―――!
3月15日(日)更新予定!!
お楽しみに!!
お陰さまでブックマーク100件達成ありがとうございます!!
今後もこの作品に対するブックマーク、評価、感想等もお待ちしております!!




